- 河野 英仁
- 河野特許事務所 弁理士
- 弁理士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
- 河野 英仁
- (弁理士)
Vehicle IP, LLC,
Plaintiff-Appellant,
v.
General Motors Corp. et al.,
Defendants-Appellees.
〜モバイルカーナビの特許権侵害事件〜(第6回)
河野特許事務所 2009年4月16日
執筆者:弁理士 河野 英仁
●CAFCの判断
クレームの文言が持つ通常の意味及び審査経過を考慮して解釈する。
CAFCは、coordinateが持つ通常の意味は、絶対的な位置である座標(緯度、経度)を意味し、スカラー量は含まないと判示した。これに対し、原告は、方向転換位置とスカラー量とを統合すれば、通知位置を特定することができ、座標に変換することができると主張した。
図5 CAFCの解釈を示す説明図
図5はCAFCの解釈を示す説明図である。CAFCは方向転換位置とスカラー量とを統合したとしても、方向転換位置を中心とし、半径をスカラー量とする円(図5の点線)が定義できるに過ぎず、通知座標を特定することができないと述べた。そして、通知座標を特定するには、別途他の情報が必要になると述べた。
さらに、CAFCは審査段階で出願人が述べた意見に注目した。審査段階において出願人はU.S. Patent No.5,126,941(以下、Gurmu特許)を根拠とする米国特許法第102条の拒絶を回避すべく、以下の主張を行った。
「本発明はGurmu特許とは基本的に相違する。本発明は車両位置と通知座標とを比較することをクレームするものである。車両の位置と通知座標とを比較するために、車両の位置は、通知座標とは無関係に決定されるということは明らかである。この基本的相違はGurmu特許には教示、開示及び提案されていない。」
つまり出願人は、GPSにより特定される自車位置と、緯度及び経度で特定される座標とが比較される点を審査段階にて主張したのである。
以上のことから、CAFCは、coordinateは座標を意味し、スカラー量を含まず、被告のイ号システム及びロ号システムは、743特許を侵害しないと判断した。
(第7回に続く)