- ヨシダケイスケ
- はたらくちからラボ 代表
- 東京都
- キャリアコンサルタント
対象:キャリアプラン
- 宇江野 加子
- (キャリアカウンセラー)
- 冨永 のむ子
- (パーソナルコーチ)
「わかる」というのは、どういうことなのでしょう?
たとえば問題の解き方を理解して、自分で解けるようになるというのが、一般的な「わかる」のイメージではないかと思います。これを習得するために、たくさんの宿題と格闘する日々を過ごしてきた人は少なくないでしょう。
その時分、これって何かおかしいんじゃないかなぁ?と感じたことは一度や二度では済まないのではないでしょうか。しかし、それを「何かおかしい」と考えることは「逃げ」でしかないと言われてしまい、それ以上考えることをしないまま、いつの間にか慣れて大人になってきたという人もいるように思います。
さて、この「何かおかしい」という視点は、とても大事なものです。実はこのイメージは一つの側面でしかなく、「わかる」にはもう一つの大切な側面があるのです。
それは、「本当に知るべきことは何なのか」とか「いま自分には何が必要なのか」というような問いについて考えることです。
ここで、最初に挙げた「問題の解き方を理解して、自分で解けるようになる」という側面を「ヨコ」の側面とし、「本当に知るべきことは何なのか」とか「いま自分には何が必要なのか」を考えることを「タテ」の側面としましょう。
「ヨコ」の側面ばかりが重視されてしまうと、与えられた問題を解く力は鍛えられますが、問題文中に問われていること以外は答えてはいけないというような思い込みに繋がる危険を伴います。その結果、自分で考えるよりも「正しい求め方」を思い出すことに専念してしまうのです。
別の例として、育児であれば、「子どもにわからせるべきこと」が外から与えられてしまって、子どもが自分で選べない、ということになってしまうイメージです。「進学塾→有名校→エリートコース→幸福」という流れを押しつけられてしまって、自分が何をしたいのかを考える余地が与えられないまま成長していく、というのが分かりやすい例かもしれません。
ここに挙げたのは極端な例ですが、皆さんはいかがでしょう?幼い頃のことを振り返ってみると、「ヨコ」ばかりが重視されていたと感じる方も少なくないのではないでしょうか?
では、「タテ」の側面を重視するには、どうしたら良いのでしょう?
「タテ」の側面では、ものごとが「できた」とか「できない」というのは、本人にしか分からない実感であるので、同年齢の子どもと比べたりすることはできません。子どもは、自分が力を出し切ったことや、自分でいろいろ工夫して満足のいく結果が得られたことを大切にするかもしれません。すなわち親や教師の目から見てできたかどうかということではないのです。そのような「タテ」の側面が重視されることで、自発的に、生き生きと、社会に参加する能力が身につくのです。
この「タテ」の側面は、しかしながらどうしても学校教育の中で充実させるのは難しいと言わざるを得ません。なぜなら、学校では同じ年齢の子どもたちが集められているからです。ですから、どうしても周りとの比較になってしまいます。教師がそうしようとしなくても、子どもたち自身が周囲と自分を比べてしまうのです。「いま自分には何が必要なのか」というような問いに対しても、自分自身と向き合うより、多くの人の賛同が得られる優等生の回答を見つけることを意識することになってしまいます。
もちろん「ヨコ」の考えを深めていくには、学校や塾は最適なところだと思います。読解力や文法、数学的発想や論理的思考力は、国語や算数などによって磨かれていきます。
これを踏まえると、「ヨコ」の側面は学校や塾に任せ、「タテ」の側面は別のところで養っていくのが良いのではないでしょうか。
ではどこで養うのが良いかということを考えるとき、重要な条件は2つあります。一つは制限時間が求められない環境で、じっくり時間をかけて考えることができること。もう一つは、集団でなく、一人の子どもとしっかりと向き合うことです。
それを踏まえると、「タテ」の側面を子どもの教育に取り入れるならば、私は、それは家庭で行うのが適しているように思います。
唯一の正解を求めるものでなく、「本当に知るべきことは何なのか」とか「いま自分には何が必要なのか」というような答えのない問いや、どれもが正解であるような問いについて、子どもと一緒に考え、子ども自身が自分で納得できる自分だけの解を見出す。そのような「タテ」の教育を家庭に取り入れていくと、子どもは「タテ」と「ヨコ」のバランスをとりながら、「わかる」力を高めていけるのではないでしょうか。
参考:「わかる」ということの意味 佐伯胖 岩波書店 p.4〜p.105
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