しかしそれは大きな誤解。時間はかかるかもしれませんが、そんなにお金はかからない。また、お金さえかければよい家ができると考えるのも間違いだと思います。高い料理がおいしいとは限らないように、住宅もしっかり時間をかけて夢を熟成させ、デザインを突き詰めていけば低コストでもいいものができる。おいしいラーメンはおいしくないステーキより美味なのです。私たちの設計スタンスは、低コストの住宅でもゴージャスな住宅でも、ほとんど変わるものではありません。
私たちがめざしているのは、そこにずっといても「気持ちのいい家」です。休日にどこかに行かなくても、一日中寝転がっているだけでも「楽しいなあ」と思えるような家づくりをしたいと思っています。
そして、それを実現するためにつねに意識しているのは、つぎの3つの条件です。
●風通しが不可欠
通風と断熱さえしっかりしていれば、機械的な空調に頼らなくても夏はしのげます。家の中に風の通り道をつくり、自然の風を取り込む。それが快適で気持ちのいい空間をつくります。
●光や景色を切り取る適切な窓
プライバシーを確保しつつ大きく開かれた窓は、人の心を解放的にします。そしてそこから取り込んだ外の光景や自然環境は、室内にいながら外にいるような気持ちよさを感じさせてくれるはずです。
●シンプルで使いやすい大きな部屋
大きな部屋は、それだけで人の気持ちをなごませる力があります。また構造を工夫して柱を減らし、自由度の高い空間にしておけば、そこは家族構成や生活の変化に応じて、いつでもつくり変えることができます。
私たちは、こうした私たちの住宅建築に対する考えを理解し、共感していただけるクライアントと、よい家づくりをしていきたいと思っています。その気持ちは予算の大きさに関係なく、つねに同じです。
このコラムの執筆専門家
- 手塚 由比
- (建築家)
- 株式会社手塚建築研究所
誰もが共通認識として「良い」と思えるような価値を追究したい
本当においしいお蕎麦は8割以上の人が「おいしい」と感じるように、建物にもみんなが「良い」と思える絶対的価値があると思います。この価値(デザイン)によって新しいものが生まれ、そこに住む人の生活が変わる。そんな空間をつくっていきたいと思います。
「手塚由比の建築コラム」のコラム
家族みんなの大きな居場所がある家(2005/12/01 00:12)