
- 石川 智
- オフィス石川 代表
- 高知県
- ファイナンシャル・プランナー
対象:家計・ライフプラン
- 吉野 充巨
- (ファイナンシャルプランナー)
- 吉野 充巨
- (ファイナンシャルプランナー)
生活困窮者自立支援事業の関係で、今年度は社会福祉協議会の皆さんと一緒に仕事をしています。
私も今まで「家計の専門家」として、様々な環境の、生活に困窮した人たちとお会いしたり、ケースを勉強したりしてきました。
今回の生活困窮者自立支援事業は、国の方針として、困窮者が自立するために、以下の事業などを準備しています。
1 経済的な困窮から脱するために、就労を支援する
2 困窮の連鎖を防ぐために、お子さんの学習を支援する
3 安定的な住環境を提供する
4 家計のアドバイスなどを通して、生活再生を支援する
国のHPでご確認ください
例えば、私たちファイナンシャルプランナーは、これらの事業のうちの4番を担当します。
ところで、実際の生活困窮者といわれる人たちのお話を聞いたり、実際の生活の状態を拝見してみると、あることに気付きます。
それを、こんな架空の例で考えてみましょう。
現在55歳の男性、家族は30歳の男性一人。
かつては、町工場を経営してたが、10年前から、業績が悪化して、売り上げが下がった。
様々な金融機関から借り入れしたが、経営状態は改善せず、売り上げは激減となり廃業。現在は月に15万円ほどの収入になっている。
生活が苦しいと、ご相談に来られた。
(あくまでもフィクションです)
よくよくお話を伺うと、以下のことがわかった。
* 奥さんが亡くなった5年前から、持ち家の自宅はゴミ屋敷化している
* お子さんには発達障害があるようで、10年以上引きこもっている
* 5年ほど前から、ご本人には持病があり、通院していて、なかなか以前のように働けない状態になっている
などなど。
この状態から、今回の生活困窮者自立支援事業の「家計相談」を考えると、どうなるでしょうか?
単純なアドバイスならば
「体調を管理しながら、収入が増えそうな仕事を探しましょう」
「家計簿を付けてみて、無駄な支出がないか考えましょう」
となると思います。
しかし、そのアドバイスは「一般的な状態の人へ、家計のアドバイスをする」という類のものに過ぎません。
そのアドバイスや、「さあ、目標をもって生活しましょう」みたいな提案で、この人が生活困窮状態から抜け出せるでしょうか?
今回の架空のケースから推測されることは
* 発達障害のあるお子さんへの支援をしないと、お父さんが仕事だけを考えるのは難しそう
* ファイナンシャルプランナーとしての中・長期的な視点からの家計アドバイスも必要だが、毎月不安なく暮らせるようにするための対策も重要
* 就業もご本人の体調管理次第であり、それを考慮した就業支援が必要かも
そしてとても重要なことは
なぜこういう状態になるかを、根本的な視点から考える
ということになります。
私が、生活困窮者への家計相談で思うことは、家計のバランスが悪いのではなく、「生活力(能力)がなくなっていることを原因とした、生活困窮」が多いのではないか、ということなんです。
その「生活力(能力)がなくなった」原因が、例えば「ご本人の発達障害」であったり「奥さんなどとの死別や離別」であったりすると、単純に「さあ、家計を見直せば生活困窮から抜け出せますよ」とは言い切れないと感じます。
つまり、生活に困窮しているケースというのは、様々な要因が複雑に絡み合ってしまっていることが多く、解決への第一歩は果てしなく遠い、と思います。
私たちファイナンシャルプランナーが「家計相談」を担当することもあるかと思いますが、その専門的知識だけでなく、当事者が抱えている全ての問題への理解がないと、この「家計の専門知識」は決して活かされることはないと思います。
これは、私にとっても耳が痛いことであり、常に心に問いかけていることでもあります。
以上、生活困窮者自立支援事業から考えたことでした。
ではまた、お会いしましょう。
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