先月末から打楽器のソロの演奏を続けて聴く機会がありました。
たまたま世代別に分かれた演奏会でしたので、いろいろと感じることができました。
まず、3月28日にキッセイ文化ホール(長野県松本市)でおこなわれた「中部日本個人・重奏コンテスト本大会 中学の部」です。
このコンテストは石川・富山・福井・愛知・静岡・岐阜・三重・長野・滋賀・名古屋市から選ばれた出場者60人が日頃吹奏楽で使われている管弦打楽器でソロを演奏しました。(今回の個人の部には富山の代表はありませんでした)
どの出場者も演奏のレベルが非常に高く聴き応えのあるコンテストでした。
打楽器は8名の方が出場され、全員がマリンバでの演奏でした。
私は4人しか聴くことができませんでしたが、いくつかの好演がありました。
翌日には同会場で「高校個人の部」を拝聴しました。
出場者はこちらも60人。内、ティンパニなどを用いた打楽器ソロが1人、マリンバでの演奏が4人でした。
中学の部・高校の部を通してまず感じたことは「正しいフォームや体の使い方が身についていたか」ということです。
マレットの持ち方、手首だけでなく腕全体の動かし方、立ち方や足の動かし方、立ち方と共通するのですが体重移動ができていたか等、ということです。
今回演奏された曲のように難度が高い曲になると、これらのことができていないと楽譜に書いてある音を出すことができない曲もあるのです。
フォームというのは見た目だけでなく打楽器の演奏では重要なことのひとつなのです。
今回の演奏者には身についている方もおり、このことは例えばフレージングにも繋がっていくので必然的に演奏の完成度が高くなっていました。
次に「楽器本来の音色が出せていたか」ということです。
叩けば音がする打楽器ですがさにあらず。楽器本来の音色を引き出すというのは打楽器奏者の永遠の課題です。
ポイントのひとつに「叩かない、打たない」があり、私自身このことを近年の課題にしています。
「源流:一柳慧 作曲」「リズム・ダンス:ウイッティバー作曲」で演奏した方の中には優れた演奏者がいました。
叩くという動きには振りかぶる動きが加わりますがこれをやってしまうと上記の2曲はまず演奏が不可能。
楽器の選択やマレットの選択も重要になってきます。
鍵盤を叩いてしまうと衝撃音が大きくなり、その結果、遠くまで音が飛ばないのです。
楽器の近くで聴くと物が当たった音により大きい音に聴こえるのですが、客席で聴く音色は思った以上に鳴ってくれません。
音色もきつかったり痛かったりします。
2本マレットで演奏された「ソナタ・ピットフィールド作曲」「プリズム ~ソロ・マリンバのために~:安倍圭子 作曲」にも叩かないという奏法という点では同じようなことが言えます。
今回は「打楽器協奏曲 第1楽章:ジョリベ作曲」を演奏した高校生がいましたが、ティンパニの音色作りもよくできており好演でした。
4月5日には「中部打楽器協会 第11回新人演奏会」を名古屋音大めいおんホールで拝聴しました。
中部打楽器協会会員で今春、音大を卒業した方の中から4名の方が出演されました。
今回は3人がマリンバ、1人がマルチパーカッションで演奏されました。
当然と言っては当然なのですが中学生や高校生とは楽器の鳴りがまったく違いました。
大学で習った技術的なこともありますが年齢による骨格や筋肉という身体的な違いも大きいと思います。
大学で初めてマリンバを演奏して2~3年でもしっかりと楽器を鳴らせる方も珍しくありません。
もちろんプロの奏者の中には小柄な方も多くいらっしゃるので「楽器を鳴らす」ということは骨格だけではないのも明らかでしょう。
今回出演された方の中では「パガニーニによる大練習曲集 第6番:F. リスト作曲」をマリンバで演奏された櫻井汐里さんが優れた演奏で印象強かったです。
各変奏曲のキャラクターをうまく捉えられていたため曲全体の変化を味わって聴くことができました。
高度の演奏技術が求められる曲ですがきちんと消化されていたのもよかったと思いました。
このような耳馴染みのあるメロディの曲をレパートリーに持っていると、日頃マリンバの演奏を聴くことがないという音楽ファンにも喜ばれることと思います。
このコラムの執筆専門家
- 成澤 利幸
- (長野県 / 音楽家、打楽器奏者)
- 成澤打楽器音楽教室
音楽はみんなのもの
楽器の演奏は専門家からのちょっとしたアドバイスによりスムーズに上達したり音楽の奥深さに触れることがあります。ドラムやマリンバ、いろいろな打楽器のレッスンを通して皆さんのお力になれればと思います。
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