
- 野平 史彦
- 株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
- 千葉県
- 建築家
対象:住宅設計・構造
充填断熱工法では断熱材の部屋内側に「気密シート」を貼る事で気密を取る。
この「気密」には3つの意味がある。
1)隙間を無くすことで換気損失を減らす事
2)室内で発生した水蒸気の外壁内侵入による結露を防ぐこと、
3)計画換気を可能にすること、
である。
さて、外張り断熱工法では外壁軸組の外側にこの「気密シート」を張ってその上に発砲プラスチック系の断熱材を貼ることになる。
しかし、最近では「気密シート」の代わりに構造用合板を用いることが多い。
構造用合板を用いるのは勿論、構造用面材として建物の剛性を高めると共に
以外と透湿抵抗が大きいため、これだけで十分気密性能を確保できるからである。
しかし、「大地に還る家」の方針は、できるだけ石油化学建材を使わないことであるから
発砲プラスチック系の断熱材もできるだけ使わないようにしなければならない。
さて、このようにこれまでの高断熱・高気密工法における「高気密」の考え方は、
「空気」と「水蒸気」のふたつを遮断することだった。
しかし、これでは壁が呼吸することはできない。
「呼吸する壁」のイメージは、「保湿性のある断熱材を用いて室内の空気を調湿し、
結露する事なく余分な水蒸気を外部に排出してくれる壁」である。
そのために、ここでは「空気」は逃がさず「水蒸気」のみを排出する面材、
則ち、「透湿気密面材」を外壁下地材として用いている。
準防火等の指定のある地域ならダイケンのダイライト、
そこで天然素材にこだわるなら三菱商事建材のモイスという優れものもある。
しかし、ここは防火には無関係な所なのでもっと安価なダイケンのアセダスDを使っている。
未利用材・リサイクル材から作られた木質繊維ボードである。
これが外壁内に侵入した余分な水蒸気を排出してくれる訳だ。