一級塗装技能士が工事する外壁塗装の品質ってどうですか? - 外壁塗装・外壁リフォーム - 専門家プロファイル

曽根 省吾
株式会社塗装職人 代表
神奈川県
一級塗装技能士

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対象:リフォーム・増改築

森 幸夫
森 幸夫
(代表)
木下 泰徳
(アップライフデザイナー)

閲覧数順 2024年04月19日更新

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一級塗装技能士が工事する外壁塗装の品質ってどうですか?

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一級塗装技能士の仕事のレベルは果たしてどの程度なのでしょうか?


外壁塗装を検討するにあたって業者選びにはさんざん悩みます。


費用のこともさることながら、安くても簡単に済ませられた仕事では元もこうもありません。


技術面だけを見た場合、経験豊かなベテランの塗装職人さんであれば、たとえ無資格であっても一級塗装技能士との違いはほぼありません。


ただそれは技術であって、工事の完成度というとまたそれは別物です。


ちなみに一級塗装技能士は塗装技術と知識において、国家検定に合格した職人なので、それは国が認めているところです。


~中央職業能力開発協会より抜粋~
【「建築塗装作業」は、建築物の内装や外装を塗装するのに必要な技能・知識を対象としています。
内容は、素地調整、養生、下地材の調合・下地付け、目地処理、目止め材の調合・目止め、塗料の調合・色合わせ、下塗り、中塗り、研ぎ、仕上げ塗り、塗装機操作、塗り色判定等に関する技能・知識と、併せて、塗装一般、被塗装材、色彩、関係法規、安全衛生などに関する知識も含まれています。
1級は、高度な形状の被塗装物の養生、高度な色合わせ・塗りを含んだ高度技能者のレベルとなっております。】


・・とあります。

ただこれは省庁や関係機関の理屈であって、消費者側の立場から見れば、自宅がきれいになって長持ちしてくれればそれでいいわけです。


ご存じかも知れませんが外壁塗装を行う業者さんというのは、世の中にこれでもかというほどたくさんいます。


塗装業者選び泣かせのひとつの理由でもありますね。




一級塗装技能士の試験とプライド


そして資格ありなしに関係なく、その技術や能力を現場で引き出すか出さないのかは、職人当人の仕事に対する考え方とプライドに大きく関わってきます。


ここが工事の質に影響する一番重要な部分です。


一級塗装技能士の試験に合格するためには、普段現場で使う技術以上に、試験対策用の技術を相当量練習する必要があります。


今は行き当たりばったりの試験では、まず合格しません。


実技だけではなく学科の勉強も相当に必要です。




試験対策用の講習を受けた方がはるかに合格率も上がりますが、それはそれで受講するだけの時間と費用もまた必要になります。


もちろん勤め先の会社で資格を取らされるということもあります。


でも普通はそこまでの労力を割いて、一級塗装技能士を取得しようとする背景には、塗装職人としてのプライドや仕事に対する強い思いがなければ、そもそも資格を取ろうという考えには至りません。


合格率も高くない上に、国家検定というだけあって、お堅い申し込み手続きなどの書類申請から、試験道具を一式そろえ、講習会に何度か足を運び、幾度となく練習、そして緊張の中本番の学科と実技に挑む。

 

合格するまで試験に挑戦すること自体が、職人としてのプライドを表しています。


無資格のベテラン職人さんと一級塗装技能士では、そのプライドや思いが工事への大きな質の差となって表れてきます。


技術が引き出されるのか、宝の持ち腐れになるのかは、まさにその部分の違いです。




「お客さまに喜んでもらうためにいい仕事をする」は簡単。

当然すべての職人さんにこの理屈が当てはまる訳でもありません。


無資格のベテラン職人さんでも、プライドや仕事への使命感を持って活躍している職人さんも実際に知っています。


当人たちによると「資格は欲しいけど試験を受ける機会がなかった」、「試験は苦手」などの様々な理由があります。


逆に年配寄りの職人さんに多いという感じもあるのですが、資格取得が昔すぎて、仕事に慣れ過ぎてしまった結果、早く済ませるだけの仕事になりすがってしまった職人さんも中にはいます。


ですが、それはごく一部であり、資格の有無は素人が判断する業者選びの分かりやすい基準になるうえに、様々な職人さんがいるこの業界全体においては、あながち的外れな理屈ではありません。


現場では危険な足場の上り降りを、工事期間中多いときには百回前後繰り返します。




重い塗料を持って手足の筋肉痛や首や腰を痛めてしまう無理な体勢での作業も少なくありません。


真夏は暑さが極限までに達し体力の消耗が激しく、冬の寒さは身に染み高圧洗浄ではカッパを着ていてもずぶ濡れになることもあります。


特にそうした状況下での確実性の高い作業は、技術以上に間違いなく気持ちの問題になって表れてくると断言できます。


「お客さまに喜んでもらうためにいい仕事をする」という言葉を発するのはよくありがちですが、幾度となく家それぞれ千差万別に変わる現場を経験し、一筋縄にいかない作業に何度も立ち会ってくると、それは簡単に発せられる言葉ではなくなります。


家主への想いは通り越して、実際には困難な作業になればなるほど、「プライドを掛けた自分との戦い」になってきます。


いい仕事をするための原動力は、技術ではなく自分自身を律することを含めた仕事に対する考え方です。


それがあってはじめて結果的にお客さんが喜んでくれることにつながるのです。


さらに、ただ一級塗装技能士の肩書きと言うだけでなく、職人自らお客さんに対して一級塗装技能士ということをアピールするだけで、襟を正される思いになって仕事に取り組む姿勢に影響してくるものです。






一級塗装技能士の良い・悪い

きっとこれから塗装を計画する人は、現場経験の少ない職人さんより豊富な職人さんを望まれるはずです。


ベテラン職人といっても、自己申告や事実の経験年数を述べたとしても、それを証明してもらうこも簡単ではないと思います。


一級塗装技能士は、基本実務経験が7年以上無ければ取得できない資格なので、おのずと経験の豊富な職人さんになるでしょう。


そのほかに実務経験を証明できるのは、職業訓練指導員(塗装指導員)の免許というものもあります。


世の中にはピンからキリまでとても数多くの資格があって混乱しますが、外壁塗装に関わるもので、国や行政からお墨付きをもらっているのは、2級塗装技能士を含めればこの3つのみです。


塗装店というのは資格がなくても誰でも始められる業種なので、まさにここにも業者えらびの基準があると言えます。


ただしこの場合、業者が一級塗装技能士の職人を雇い入れているという形だけでは経験のある業者とも言えません。


代表者が一級塗装技能士ということの確認で、イコールその業者自身の実務経験を表しているということにもなります。


その逆に代表者が塗装技能士ではなくとも施工実績何千件というアプローチをする業者さんもいます。


その実績数に達するまでの業者さんなら、なぜ代表者がそれまで塗装技能士の資格取得の機会がなかったのかという不自然さも残ります。


その場合は下請けなどに工事を丸投げすることで実績数を伸ばしてきた業者さん、もしくは実際の数字とはかけ離れている可能性も考えられなくありません。




原価割れする工事費用の歯止めも一級塗装技能士

業種によっては国家資格の取得で給料アップが見込まれる例もあるかもしれません。


でも塗装業界でそのような事はあまり耳にしません。


実際のところ、一級塗装技能士になってもメリットになるようなことが少なく、仕事確保につながるための活用にはまだ認知度が足りません。


職人にすれば今は苦労して取得するような資格ではなく、仕事さえ出来ていれば無資格のままでも当たり障りのないと言わざる得ない状況です。


まだまだ一般の人にこの資格を広く伝えるためには、管轄の厚生労働省や職業能力開発協会の啓蒙活動も必要です。


ちなみに検定に合格すると、厚生労働省から「技能士章」という金バッジをもらえます。


同封されている用紙には、次のようなことが書いてあります。


「技能士章は技能検定の合格者に常時着用していただき技能士としての誇りを持っていただくとともに、技能士は素晴らしい技能をもっていることを社会にアピールするため厚生労働大臣が交付するもので、昭和41年に制定されたものです
。技能士章のデザインは、技能の枝の字を中心とした光とその間を結ぶ菊花によって構成されています。
光は技能の輝きを表し、菊花は技能士のもつ名誉と誇りを表しています。あなたのご活躍を心より期待しています。厚生労働省」


とあります。



厚生労働省でも、技能検定合格者の資格の活用についても伝えていはいますが、少なくとも塗装業界では、技能士の価値は今のところ薄く、この資格は機能しきれていません。


逆に資格取得に挑戦しないまま仕事をやれてきた業者さんは、資格取得のプロセス自体が工事の質にも深くつながっているという事が理解できないため、資格に否定的でさえあります。


職人自身がこの資格をもっと活用できるようにするためには、技能士章に書いてあるようなアピールだけでは事足りません。


さらに言えば悪質業者が減らないこの状況下においても、塗装技能士という知名度は広くリフォーム業界に広がることさえあっても、一般消費者がこの資格の価値について知る機会は非常に少ないのが現状です。


今後は資格の有無で線引きするような現場環境の整備を行政などが推し進めてくれれば、一級塗装技能士の価値もおのずと高まって行くのではないかと思います。


今のように何の規制も無いままでは、業者同士の競争が過熱しすぎて、原価割れするほどの価格訴求が更に進んで、俗に言う「痛い仕事」をせざる得ない職人がこの先も増えて行きます。


実際の効力としてかなり疑わしい誇大広告的な15年保証や、いくら良い塗料を使っても耐用年数に乏しい工事など、今は何でもありの無法状態です。


規制や線引きがなされれば、資格取得によって職人の賃金アップも見込まれてくるでしょうし、仕事にも意欲が湧いて工事の質も上がり、行く末は外壁塗装であれば家主の利益にもつながるようになるはずです。




資格や表彰で塗装業者を選ぶ慎重さも必要

外壁塗装に関連する民間独自の資格は数多くありますが、国家資格に限ってほかに思いつくのは、一級建築士や建築施工管理技士などがあります。


色々あって混乱してしまいますが、実は外壁塗装と塗装技能士との関連度を比べれば、それらの資格は外壁塗装とは奥深い関連性はありません。


色や塗料、塗装の種類を提案するまでの知識と家主への施工の方法もある程度は説明できます。


塗装技能士と違うのは現場経験での実戦技術とそれに伴う効果的で有用な知識です。


家の傷み方はそれぞれ違うため、家主にとって重要なのは机上のマニュアル知識よりも、その家の状況に合わせた実践的な幅広くも奥深い塗装方法です。


見積もりの調査診断でよくあるのが、劣化している部分の撮影写真です。


家主が把握できない高所などの劣化場所を明らかにしてくれるのはありがたいことですが、それは職人でなくとも少しの知識があればでできるため、それこそ重要なのがその実践的な塗装対処の仕方です。


建築士などは、仕事上関連のある塗装業者からのアドバイスを受けて家主に説明しています。


ほかに塗装業者を紹介するリフォーム企業紹介サイトで表彰のような資格に似たようなものもあります。


表彰は実践レベルでの評価基準ではなく、そのサイトへの加盟や簡易な書類的の提出で優秀企業となってしまい良質工事への根拠は不明です。


本当の塗装専門の塗装店以外にも一般のリフォーム業者まで、建築に関わっている業者すべてが混在して加盟しているのも特徴です。


紹介でありながらも、いざとなった時のトラブル時の責任の所在は不明確といったところでしょう。


いずれにしても誇大表示がまかり通っている塗装業界です。


一級塗装技能士の業者選びにも間違いはないとは言えません。


また確実に安心できるとまでも言うことはできません。


ただし手当たり次第に業者を選ぶよりかは、格段に間違いのない工事をすることが可能になるのです。



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