京都:慈照寺 銀閣  2 - 生涯学習 - 専門家プロファイル

中舎 重之
建築家

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対象:老後・セカンドライフ

稲垣 史朗
稲垣 史朗
(店舗インテリアデザイナー)
吉野 充巨
(ファイナンシャルプランナー)

閲覧数順 2024年04月25日更新

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京都:慈照寺 銀閣  2

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       青々と生きている樹木、黄色く枯れた竹、やや黒づんだ苔   

  むした石。   

  此の硬さと重さ、柔らかさと軽さ、生き活きと成長する姿。    

   此の配列と用材の変化の妙。詩の趣きと美の回廊、そして   

  加うるに禅宗の主旨さえ感じます。


        この道を行き、すぐに左に折れると目的の庭園と銀閣が   

  座す所になります。 庭園をゆっくりと廻ります。   

  私は手の込んだ、造りすぎる庭園は好きになれない。   

  日本の国土は自然に恵まれており、その中で生活をしている   

  私には、庭園にもうひとつの人工的な箱庭を作る趣味が理解   

  できないのです。       

    此処にも、それがあります。池の中における岩や島がそれ     

  に当たります。そして、いちいちもっともらしい理由を付け、   

  名前を与えるのは、何故でしょう。 これらの佳石や霊岩が、   

  時の管領家である細川氏や赤松氏の献納であることを、理解   

  してあげる事で十分でしょう。


        眼を転ずれば、名にしおう銀沙灘が映じます。 これぞ、   

  義政が苦心の作です。銀閣のある場所は東山のすぐ麓にあり     

  ますので、銀閣の楼上より月を眺めようとするには、   

  月がそうとうに高くまで昇らないと観ることが出来ません。   

  ここでは、月が山の端を離れる時の美しさを、味わうことが   

  出来ないのです。     

  そこで義政は現代でも通用する、すばらしい工夫をしました。        

    銀閣の北の脇やや前方に白河砂を盛り上げて台地を構え   

  ました。一種の砂丘です。これを銀沙灘と言います。   

  そして、その頂上をたいらに均します。白河の砂は、花崗岩   

  の崩れた砂で純白です。此の白さは、洛北白河の砂の独特の   

  もので、京の財産と言えます。    

    そして、この銀沙灘に月光が落ちた時の白さは驚くべき   

  もので、透き通るような白さに成るとのことです。



        この銀沙灘の面上を水平ではなく、銀閣に向けて斜めに   

  傾ける事により、この面に落ちた月光は反射されて、銀閣の      

  楼上に達し、屋根裏を照らします。     

    楼上の花頭窓を開けば、その光は天井まで届きます。    

  その天井に銀箔を貼ることで、光は銀箔と云う反射鏡で屈折   

  して、閣内を広く照らします。       

   すなわち、東山から登った月の光は、月→白い砂→銀箔と   

  三回の反射と屈折により楼上の閣内に届き、天与の明かりに   

  なります。銀閣の存在は、義政の文化人としての存在を後世   

  に伝えていると思います。


        私達は、これらの工夫を身をもって体験できないのが残念   

  です。 白昼の訪問であり、ましてや、楼上に登ることさえ     

  許されない私達です。   

  これらの説明で十分に満足する事にします。
 


      つぎに、銀閣という建物に眼を向けましょう。     

  銀閣は二層です。上層を潮音閣と呼び、階下を心空殿と称して   

  います。心空殿は住宅建築であり、潮音閣は唐様の仏寺建築   

  の様子を帯びています。金閣に比べて、やや簡素であること   

  も事実です。       

    しかし、これらは東山時代の風潮を最も良く表しています。    

  この慈照寺の閑寂なたたずまいには、東山時代の枯れきった   

  文化の香りが濃くただよっております。


    やはり、名建築ではあると思います。     

  此処には、義政の心があり、義政が目指した先にある物の、   

  全てがあると思います。       

    不運であった将軍 義政をもっと理解することが出来たら   

  との思いを強くして、ここを辞すことにします。