- 吉原 賢
- KICHIGEN 代表
- 東京都
- クリエイティブディレクター
対象:ブランド戦略・ネーミング
この章では、韓国が行ったデザイン戦略、国内製造業の空洞化の要因、モノを作りためにデザインは絶対条件について三回に渡って述べさせていただく。
2-1韓国が行ったデザイン戦略
高度成長期以降、日本の国内市場は豊かになり、国外には輸出によって経済は順調に推移していた。しかし、近年では消費を牽引する世代の人口減少と、その対局にある高齢者の人口増大に伴う国内市場の変化によって、経済全体の仕組みを見直す必要に迫られている。
一方、隣国の韓国は、日本のように成熟した国内市場が望めないことから、必然的に国外へ進出しなければならなかった経緯がある。そのため、市場となる国の消費者の動向や商習慣や慣習を徹底的に調査する必要があった。
韓国は国外での競争に勝つため、国家戦略として「デザイン」で消費者の心を掴むことに注力した。対して日本は、同じ民族が暮らす市場をターゲットとしたため、消費者の動向や商習慣、慣習などを「すでに知っている」と仮定し、調査することもなく、デザインも国内のみに視点を注力していればいい環境に安住していたことで、さほど必要性を感じなかった。
製品全体の共通点として、エンジニアや設計者の意向が強く、性能や機能に重点が置かれ、デザインという抽象的で数値化できない行為に対して、ある種「拒否していた」気がする。
様々な時代が過ぎ、現在は多くの日本企業が国外に拠点を置き、国内市場から国外市場へ移行した。その目的は、価格競争に負けないためや、市場そのものの比重が大きくなったためでもある。結果、以前は消極的だった市場調査や現地の習慣や慣習についての基本的なデータを無視して、製品や商品の生産は不可能だと実感し、デザインやブランドを経営戦略に取り入れ、世界市場で海外企業との競争に対抗する重要なアイテムとなっている。
日本は韓国に「デザインやブランド」という戦略で遅れをとり、そのため世界市場を奪われた。現代の社会は、世界の情報を早く、大量に入手することができる。性能や機能以上に、「手にしたいデザイン」や「愛着のわくデザイン」に消費者は殺到する。
「いいモノ」をつくるのは当たり前である。それ以上に感動する経験を得られたり、所有したいという欲望にかられる商品をつくることが、企業に求められている。
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