- 林田 浩一
- 林田浩一事務所 (KHO Design and Business) 代表
- 神奈川県
- 経営コンサルタント
対象:ブランド戦略・ネーミング
◆デザイン、マーケティング、ブランド… みんなつながっている
デザイン、マーケティング、ブランド、これらの言葉は今や専門用語でもなんでもなく、ごく一般的に流通し、少なくともビジネスパースンであれば“普通”の言葉になっているのではないかと思います。
中でもブランドとマーケティングについては、経営者であれば関連付けて意識してる方は珍しくないと思います。ところがデザインに関しては、まるで「ひとごと」のように振る舞う、あるいは個人的な「好き・嫌い」に終始している、経営者(層)の方がまだ少なくないのは残念な(というよりも、勿体ない)ことです。
現在の我々は、生活の中で好むと好まざるにかかわらず、膨大な情報の流れの中に身を置いています。生身の人間が処理できる情報量は変わらないのに、廻りに流れる情報量は増大する傾向にあるのは、誰もが感じることでしょう。
ビジネスの視点で考えると、このような環境に居る顧客(または未来の顧客候補者)に、自社の方へ振り向いてもらうには、商品・サービスなり企業そのものへのブランド認知がある方が有利です。
見方を変えれば、業界や企業規模に関係なく、あらゆる企業がブランドと無関係ではない時代になってきていると言えるでしょう。『ブランド=顧客が意志決定する際の目印』という面では、むしろ小さな企業ほどブランドをつくることを意識すべきだと考えています。
ブランドは顧客のアタマの中にトータルのイメージとして形成されるもの。企業がぽんと作れるものではありません。
顧客が商品やサービスの利用などを通し経験した“気分”や“気持ち”、あるいは将来顧客となる人たちが抱く“期待感”などの積み重ねが、『自分にとってどのような存在か、価値があるのか』ということへの判断基準を形成していきます。その結果として、商品やサービスあるいはそれを提供している企業に対して、良くも悪くもブランドイメージとして認識されていく訳です。
ブランドを『(企業側の)人の行動の積み重ねに対する、顧客による評価のイメージ』と表現すると、顧客に抱いて欲しいブランドイメージ、あるは自社ブランドのファン顧客獲得といったことに対して、企業側にできるのは、自分たちの行動にきちんと意図を持たせることくらい。この『意図の組み立てる』という行為はマーケティングと言い換えることができます。
マーケティングは『行動の“積み重ね方”に対する方針』を決めること。その次に考えなければならないのは、その行動を可視化すること。もちろんここにも意図が必要です。
求めているブランドイメージや顧客となって欲しい人たちへの最適な表現方法を計画すること、その思考ツールがデザイン。
視覚表現であるデザインは『あるイメージを思い起こすためのスイッチ』として機能します。マーケティング、デザイン、ブランドといった要素は、それぞれが点で存在している訳ではなく密接につながっているのです。
このように関連させて考えていくこと、デザインも経営戦略の視点から意図をもって使うべきツールであると思えてきませんか。
◆デザインの『使いこなし力』差が競争力の差になる、かもしれない時代
デザインだろうが、マーケティング戦略だろうが、意図を持たせるには意志決定のための判断基準が必要です。先にも述べましたが、残念なことに、殊デザインというものになった途端、方向性を決める際に「好き・嫌い」が選択基準となってしまっているケースも見受けられます。これでは経営上の意志決定ではなく博打をしているのと大差がありません。
デザイン課題はデザイナーだけのものではないし、ましてや経営者にとって「ひとごと」な問題ではありません。設備投資を行なう際には判断基準を持つのですから、デザインも同じことなのです。
必要なのは感情ではなく判断。意志決定をする人(経営者を始めとするマネジメント層の方々)は、自社の事業の中で『なぜそのデザイン案を選択したのか』ということを、社内外へきちんと語れた方が良いです。その積み重ねなしに、ブランドの獲得はあり得ません。
デザインは、生活者や顧客側から見ると、目印であったり感情を呼び起こすスイッチだったりしますが、商品やサービスの提供側(企業側)から見ると、自分達の意思表示や考え方、行動などを可視化・表現するツールとして活用できるものです。もっと極言すると、企業理念やビジョンを可視化するものとも言えます。
商品やサービスのアイテムを多彩に持つ大企業は別として、中小企業やベンチャー企業のビジネスでは、差別化集中が基本となります。そういった事業環境でデザインに関連したお金を使うのであれば、その投下資金がより効果的になる上手い使い方をデザインについても考えたいものです。例えば、何らかの一貫したイメージや関連を感じさせるイメージを持たせることは、「らしさ」を顧客と社内で共有できることへ繋がります。
企業ごとに事業環境や顧客など、メリハリを付けるべき特性に違いがあるので、やり方はひとつではないのは確かなこと。でも、企業規模や事業内容に関わらず、デザインの『使いこなし力』の差は、競争力の差につながる時代に、じわじわとなっていくのは、そんなに間違っていないような気がしています。
林田 浩一
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