「派遣会社の新規営業にはどんな方法があるか?」 - 経営戦略・事業ビジョン - 専門家プロファイル

小岩 広宣
社会保険労務士法人ナデック 
社会保険労務士

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寺崎 芳紀
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(経営コンサルタント)
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閲覧数順 2024年04月25日更新

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「派遣会社の新規営業にはどんな方法があるか?」

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【派遣業起業の3つのパターン】

 派遣会社を設立してビジネスを始めるという人には、3つのパターンがあります。

 パターン1 派遣会社に勤務していた経験をいかして独立する
 パターン2 もともと人材ビジネスを行なっていた人が、派遣事業を始める
 パターン3 人材ビジネスとは関係のない仕事をしていた人が、独立して派遣会社を始める

 どのパターンなのかによって、自ずから営業方法や取り組み方にも違いが出てきます。


 パターン1は、派遣会社での勤務経験をいかしての独立ですから、十分な人脈やノウハウがあります。

 しばしば中堅大手の派遣会社の幹部が独立するという話も耳にしますが、このパターンの典型例です。このケースでは、あるエリアや職種の企業や派遣社員と太いパイプがあるため、勤務時代の取引先や派遣社員さんとそのままお付き合いしていくことも実際には多いようです。

 旧来の人脈や信頼関係を基盤として独立できるため、メリットが大きいですが、勤務していた派遣会社の機密保持の問題や、派遣社員の個人情報の管理の問題には、万全の配慮を払う必要があります。

 最近では、勤務していた会社との間で訴訟沙汰になるようなケースもあります。


 パターン2は、もともと業務請負業を営んでいた人が、親会社との契約関係を派遣契約に切り替え、派遣業務を行なうようなケースです。

 偽装請負が社会問題ともなり、違法な請負業務は社会的に排除されるため、派遣契約に契約変更する例が増えてきていることから、このパターンは最近増えています。

 あるいは、職業紹介や人材教育を行なう会社が、関連事業として派遣事業に進出する例も広い意味でこのパターンになります。

 このパターンのメリットは、もともと人材ビジネスにおいてクライアントがあるということです。

 特に、業務請負を派遣業務に切り替える場合は、業務としては旧来の流れを維持できる場合が多いことから、事業として継続的に安定していくパターンが多いようです。

 ただし、請負を派遣に変更する場合は、事業に取り組むにあたっての法的な整備が曖昧になるケースも多いため、コンプライアンス対策には万全の対応をはかる必要があります。


 パターン3。このパターンは1や2とは基本的に異なる類型になります。

 派遣会社での勤務経験も人材ビジネスの経験もないパターンになるため、独立にあたっては新規営業中心の戦略を立てる必要があります。

 このパターンは、細かくみるとさらに2つの類型に分かれます。

 1つは、SEや介護サービスや営業職などの経験やノウハウがあって、それをいかして独立する上での方法として、派遣会社という形をとる場合。

 もう1つは、純粋に脱サラして独立しようと考え、さまざまなビジネスプランを模索したところ、最終的に派遣業で独立することにした場合です。

 圧倒的に有利なのは前者のパターンです。後者の場合、派遣業を行なう上で特化する分野を構築するのが不可避になります。

 いずれにしても、派遣業を新規開業する場合、全業種的な派遣サービスの提供をうたった戦略を立てても、そう簡単には競合他社には太刀打ちできないからです。


【派遣業の新規営業の方法】

 新規営業の方法には、

 ・訪問
 ・広告
 ・ホームページ
 ・ダイレクトメール
 ・紹介営業
 ・セミナー
 ・業務提携

 などがあります。

 営業方法としては、派遣業以外の一般の企業の営業と何ら変わるところはないはずです。

 決定的に異なるのは、派遣業が取り扱うサービスは、目に見える(形のある)商品ではないことです。

 サービス業でも、例えば家事代行や害虫駆除やエステなどは具体的な効果や効能が容易にイメージできますが、派遣業の場合は、クライアントにとってのメリットは複合的なので、一般的にはイメージしにくいものです。

 そこでまず営業戦略上、取り組まなければいけないのは、クライアントにとってのメリットを一言で表現することができるよう、自社の強み、PRポイントとなるサービス内容を構築することです。


「派遣社員の教育がきちんとしている」「フットワークがよい」「派遣業許可を持っている」などの売りだけではとても差別化しうる付加価値とはいえず、派遣会社を運営する上での最低限の前提条件にすぎないと見なされます。
 
 これは、訪問営業でも、DMでも、ホームページでも同じことがいえます。

 基本的な問題は営業方法そのものなのではなく、「何を」訴えていくか? という商品(サービスのイメージ、メリット、効果)を意識することが重要です。

 その上で、その商品に合った営業方法を考えるという流れが、大切になります。

 
【まずは自分プロデュースから】

 冒頭で紹介したパターン3の場合でいいますと、商品づくりを考える上での商品とは、

「商品」=あなた(経営者)自身

 です。
 
 ・あなたは、なぜ派遣業を始めたのか?
 ・あなたは、どんな人間なのか? 経歴は? 特徴は?
 ・あなたは、派遣業を営む上でいかなる理想、思い入れを持っているのか?
 ・あなたは、派遣業を通じてクライアントにどのようなメリットを与えようとしているのか?
 
 といった点を十分に意識して、商品づくりを考える必要があります。
 

 派遣業のような商品イメージがつかみにくい事業を新規に起業する場合、当初はクライアントが商品やサービス内容そのものに魅力を感じて取引を始めることは少ないため、クライアントの信頼を獲得するためには、

 クライアントは、

 1 あなたに関心を持つ
 2 あなたの会社に関心を持つ
 3 あなたの会社が行なっているサービスに関心を持つ

 という順を追うことになります。


 ここであなたの自分プロデュースが大切になります。

 ・世間の幅広いニーズに応えるために、頑張ってさまざまなサービスやノウハウを作り上げていこう

 という気負いよりも、

 ・まず、私自身の強みと特徴をしっかりと意識しよう。そして、それを効果的にPRしていこう。その上で、私のサービスを求めているクライアントと出会い、ひとつひとつ信頼を獲得していくことに全力を尽くそう

 という心構えです。

 ・あなたとは、何者なのか?
 ・なぜ、派遣会社を始めたのか?
 ・あなた(の会社)には、どんな「売り」があるのか?
 ・その「売り」は、私(クライアント)にとって、どんなメリットがあるのか?

 まずは、これらの問いにしっかりと回答できる自分プロデュースを行なってください。


 これは、会社概要にも、ホームページにも、提案書にもそのまま反映してくる重要なポイントになります。
 
 開業当初は、まず、あなた自身の「顔」がはっきりと見えるアプローチを第一に心がけるのが先決ということです。

 それにあたっては、あなた自身の特徴をはっきりと打ち出し、十分に他の人と差別化できるイメージをPRすることが必要です。

 もちろん、業界知識や人材管理のノウハウなど、派遣業の運営にあたって必要な要素が基盤として大切なことはいうまでもありません。

 間違っても、「訪問営業は効果がない」とか、「数百万円単位の広告費をかけられる会社でないと無理」、「大きなコネがある会社だけが生き残っている」というような方法論に終始した迷信にとらわれることだけは、避けるべきだと思います。