
- 河野 英仁
- 河野特許事務所 弁理士
- 弁理士
対象:企業法務
- 村田 英幸
- (弁護士)
- 尾上 雅典
- (行政書士)
執筆者:弁理士 河野登夫、弁理士 河野英仁
3.拒絶理由通知は必ず受けよう
出願後特許庁で審査が行われるが、できれば拒絶理由通知を受けることなく、ストレートで特許を取得したい。こう思うのが普通である。
しかし、これでは強力な権利を取得できていない可能性が高い。拒絶理由通知は必ず受けよう。
上述のように権利範囲は、構成要件の数が少なく、また文言が少ないほど広くなる。その一方で、構成要件の数が多く、また文言が多い場合、他の先行技術との相違点を見出すことができることから、進歩性ありとして特許取得の可能性が高まる。つまり、権利範囲と進歩性とは相反する関係にあると考えてよい。
従って、出願時には意図的に拒絶理由通知を受けるよう、広い権利範囲のクレームを作成しておく。そして、拒絶理由通知を受けた場合に、権利範囲を徐々に減縮する補正を行い、最大限の権利範囲を取得する。
当然、補正の際は新規事項を追加することはできないから、出願時の明細書中に様々な構成を十分に記載しておくことが肝要だ。
拒絶理由が通知された場合、原則として、2回反論することができる。反論の際にはクレームの補正書及び意見書の提出が可能だ。これら審査官とのやりとりを経ることによって強力な権利を取得することが可能だ。
ただし、補正書及び意見書で頑張りすぎるのも禁物だ。後にこれら補正書及び意見書で主張した事項に反する事項を主張することができなくなってしまうからだ。このルールは禁反言の法理と呼ばれている。
具体例を挙げてみよう。
例えば、出願時のクレームが構成要件A,B,Cであり、補正書により構成要件Cをc1まで減縮し、特許(A,B,c1)を取得したとする。
この場合、c1からCまでの権利範囲は禁反言の法理により、再主張することはできない。逆にA,Bについては、なんら禁反言が生じていないから均等論の主張は可能だ。
従って、補正書及び意見書を提出する際は、常にこのルールが適用されることを念頭において慎重に対応すべきだ。
(第27回へ続く)