「年のせいで痩せたのだと思った」とおっしゃる飼い主さんが結構います。
ぐったりとした犬や猫が診察室に運び込まれてきて、昨日から急に食欲がなくなったと飼い主さんは訴えます。
よくよく思い返してみると半年前から痩せてきていた気がします、とのこと。
そこでこのセリフが登場するわけです。
「年のせいで痩せたのだと思った」と
病気はきっと昨日急になったのではなく、半年前からすでにスタートしていたのでしょう。
飼い主さんは残念ながら、体重減少という大きな症状を見逃していた(あるいは重要視していなかった)のです。
年をとると痩せるのでしょうか、というと私の感覚ではあまりそのようなことはありません。
年をとると運動量が減るわけで、食べる量が変わらなければ、理論上太っても良いくらいです。
それが痩せるということは
1.痩せるほど食欲が落ちる病気を隠しもっている
2.食べても痩せる病気を隠しもっている
という2つの可能性が高いわけです。
ですから飼い主さんに覚えておいて欲しいのです。
高齢の犬、猫が何故か痩せてきたという時は、「年をとって、痩せる病気にかかったから、痩せてきた」と考えなければいけないということを。
年をとったせいで病気になったから、という意味であれば確かにそうかもしれませんが、要は痩せるためには年以外の理由があるということです。
元気や食欲があるので、年のせいだろうと自己判断して病院に行かずに放置していると、気づいた時にはもう手遅れ、治療困難なところまで進行していることが多いのです。
犬や猫は私達人間と違って、痛みに対してとても我慢強いのです。
うちの犬は避妊手術の日の夜には普通にフードを完食して、普通に散歩で走り回っていました。
人間ではちょっと考えられないですね。
犬、猫に関しては、元気食欲があるから大丈夫という保証は全くないのです。
ですから、どんなに元気そうに見えても、どんなに普通に食べていても、なんだか最近痩せてきた、と思った時は、けして様子を見ずに動物病院に連れて行ってあげなければいけないのです。
ただ飼い主さんの目で見て気づくくらい痩せてからでは、本当は少し遅いのです。
以前異物のコラムでも書きましたが、8kgの犬が半年間で6kgまで痩せていても、飼い主さんは気づかないことが多いのです。
そんなバカなと思われるかもしれませんが、本当に気づいてない飼い主さんが多いのです。
食欲や、元気がなくなっていたら気づいたかもしれません。
あるいは1月程度で急激に痩せてきたら、飼い主さんでも気づいたかもしれません。
何ヶ月もかけて、じわじわ痩せてきていると、毎日見ている飼い主さんは案外痩せてきていることに気づかないのです。
ですから本当は、定期的に体重を正確に測ったほうが良いのです。
3ヶ月に一回爪切りがてらでも良いので、主治医の先生の動物病院に行き、ちょっと胸の音を聞いてもらい、体重を測ってもらう。
些細な事ですが、これが早期発見のポイントなのです。
体重測って、熱測って、聴診器あてて、体を触って、口の中覗いて・・・一見大したことしてないように見えますが、健康診断って意外と大事なのです。
お父さんは休日でゴロゴロテレビを見ている。
天気もぱっとしないし遊びに行くのもちょっと。
そんな時はちょっとドライブがてらに、主治医の先生の病院に検診がてらに行ってみてはどうでしょう。
3ヶ月に1回くらい、ペットのためにちょっと時間を費やしても良いではないですか。
自分で痛みに気づいて自分で病院に行ける人間と違って、お家のワンちゃんやネコさんは、じっと何かを我慢しているかもしれませんよ。
このコラムの執筆専門家
- 沖田 将人
- (富山県 / 獣医)
- アレス動物医療センター センター長
地域に密着したワンランク上のホームドクターを
アレス(Alles)とはドイツ語で「あらゆること」を意味します。インフォームドコンセントの充実、年中無休、CTスキャナ導入など動物たちの幸せにつながることなら、飼い主様のあらゆる要望にお応えしたい。そんな願いを込めて診療に取り組んでいます。
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