
- 西野 泰広
- REPsコンサルティング レップスコンサルティング 代表
- 埼玉県
- 経営コンサルタント
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
- 荒井 信雄
- (起業コンサルタント)
企業には脅威! 消費者には安心!「消費者裁判手続特例法」(3/3)
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訴訟回避に最も必要な対策は「品質管理」と「表示管理」。
前回は「少額で多数の消費者に被害を与える事案」がKey Wordであることをお伝え致しましたが、
今回は「消費者裁判手続特例法」及び 「集団的消費者被害回復の訴訟制度」に対し必要な対策につい
てお伝えします。
対策を考えるには、この“集団的消費者被害回復の訴訟制度” がどのような事案に対し適用されているか
「過去の事例や判例」を基に考えるのが一般的ですが、施行前であるため参考となるものがありません。
そこで前回お伝えしたKey Wordである「少額で多数の消費者に被害を与える事案」から推測して対策を
考えます。
まずは、“多数の被害者を出す事案” にポイントを絞り事案の予測をします。多数の被害者を出すものは、
同一商品の多数販売や同一サービスを多数の方に提供するビジネスが容易に予測できます。
■ 同一の商品を多数販売する耐久消費財(耐久消費財/半耐久消費財/非耐久消費財)
自動車、家電、電話、家具、衣料(衣服、装飾、靴など)、食品、飲料、化粧品、洗剤...など
■ 同一のサービス(効用や満足など形のない財)を多くの方に提供するもの
飲食、宿泊、交通、運輸/物流、情報/通信、郵便/宅配、金融、保険、教育、医療...など
このような分野の商品やサービスが挙げられます。
この中で多数の方が同時に被害に遭う事柄となれば「品質」と「表示」に関する問題以外には考えられ
ません。
理解を深めるために直近で起こった「品質問題」と「表示問題」を取り上げてみました。
<品質管理問題の事案>
・自動車 → リコール
・家電 → 告知製品回収、無償修理対応
・衣料 → 模倣品の販売
・食品、飲料 → 異物/雑菌/毒物の混入や異臭
・化粧品 → 効能有効成分の異常反応
・飲食 → ノロウイルス、カンピロバクター
・運輸/物流 → 冷凍品/冷蔵品の温度管理
・情報/通信 → 個人情報の流出/漏えい(セキュリティー品質)、通信障害
・保険 → 保険金未払い
・医療 → ノロウイルス、院内感染
<表示管理問題の事案>
・衣料 → 虚偽の含有率や品質表示
・食品、飲料 → 消費/賞味期限の誤りや未表示、アレルギー物質の未表示、
産地偽装、ラベル偽装
・飲食 → 食材の虚偽表示
企業名は伏せますが、いずれも多くの被害者を出したことでテレビや新聞で大きく報道されましたので
記憶に残っていると思います。 この中で “1人の被害額が少額であるため、被害者が訴訟手続きの
手間などから、訴訟をあきらめたと思われる事案 “ これが 「集団的消費者被害回復の訴訟制度」 の
対象に最もなりやすいと私は考えています。
上記の事案で訴訟を回避するためには、二つの管理(「商品の品質管理」と「表示の品質管理」)と
「顧客/消費者とのコミュニケーション」がとても重要となります。
【商品の品質管理】
多くの事業者の方が品質管理は重要と考えているにも関わらず、上記事案のように市場では多くの品質
問題が起こっています。 近年利益率が低下するにつれ品質管理も低下しています、その中でも材料の
「質の低下」は顕著のはずです。
品質管理のリスクマージンであった、過剰品質部分を圧縮したためマージンが無くなり市場での問題発生
リスクが上がったことが要因です。リスクが上がればそれに伴い管理能力を高めなければ防ぐことは出来
ません。今一度、品質管理のあり方を見つめ直して問題点を把握し解決策を見出すことが必要です。
【表示の品質管理】
表示の品質管理には三つ(下記[A][B][C])の重要なポイントがあります。
[A] 品質表示
・健康被害に至る表示や記述(消費期限、賞味期限、アレルギー物質の表示...など)
・商品の質に関する表示や記述(成分、含有量、性能/能力/スペック...など)
[B] 訴求ポイントの表現
商品やサービスの訴求文は、購買意欲を高めたいとの思いが強く働くため、訴求力を高める
「訴求ポイントの表現」がつい過激になりがちです。
[C] ネガチブ表示や表現(注意事項/留意事項や制限事項や重要事項)
購買意欲に負の影響を与えることから、表示や表現がつい過少/過小になりがちです。そのため
近年消費者トラブルが多発しています。
表示問題は消費者契約法で定められた”契約の取消し”に至るリスクを秘めています。契約取消しと判断
された場合は、契約をする前の状態に戻すことが必要になるため事業者にとっては大きなリスクとなり
ます。 これを防ぐには「知識」と「意識」を高めるしかありません。
「顧客/消費者とのコミュニケーション」については、別の機会にお伝えいたします。