最高裁判決平成16年1月15日、 一般廃棄物処理業不許可処分取消請求事件 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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最高裁判決平成16年1月15日、 一般廃棄物処理業不許可処分取消請求事件

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相続

最高裁判決平成16年1月15日、 一般廃棄物処理業不許可処分取消請求事件

【判示事項】 1 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成15年法律第93号による改正前のもの)7条3項1号にいう「当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬」の意義

       2 既存の一般廃棄物収集運搬業者等によって一般廃棄物の適正な収集及び運搬が行われてきていることを踏まえて市町村の一般廃棄物処理計画が作成されている場合にこれとは別にされた一般廃棄物収集運搬業の許可申請の内容の同計画適合性

【判決要旨】 1 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成15年法律第93号による改正前のもの)7条3項1号にいう「当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬」とは,当該市町村が自ら又は委託の方法により行う一般廃棄物の収集又は運搬をいい,一般廃棄物収集運搬業の許可を受けた業者が行う一般廃棄物の収集又は運搬はこれに当たらない。

       2 既存の一般廃棄物収集運搬業者等によって一般廃棄物の適正な収集及び運搬が行われてきていることを踏まえて市町村の一般廃棄物処理計画が作成されている場合には,市町村長は,これとは別にされた廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成11年法律第160号による改正前のもの)7条1項に基づく一般廃棄物収集運搬業の許可申請について廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成15年法律第93号による改正前のもの)7条3項2号適合性を審査するに当たり,一般廃棄物の適正な収集及び運搬を継続的かつ安定的に実施させるためには,既存の業者等のみに引き続きこれを行わせることが相当であるとして,当該申請の内容は一般廃棄物処理計画に適合するものであるとは認められないという判断をすることができる。

【参照条文】 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平15法93号改正前)7条3項

       廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平11法87号改正前)6条

       廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平11法160号改正前)7条1項

【掲載誌】  最高裁判所裁判集民事213号241頁

       判例タイムズ1144号158頁

 1 Xは,Y(市長)に対し,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成11年法律第87号による改正前のもの。以下「廃棄物処理法」という。)7条1項に基づき,甲市内で事業活動に伴って生じる一般廃棄物(し尿・浄化槽汚泥を除く。)の収集・運搬を業として行うことの許可申請をした。これに対し,Yは,「甲市において,既存の許可業者で一般廃棄物の収集,運搬業務が円滑に遂行されており,新規の許可申請は廃棄物処理法7条3項1号及び2号に適合しない」との理由で不許可処分をした。本件は,この処分の取消訴訟である。

 2 甲市においては,一般家庭から排出される一般廃棄物(家庭系廃棄物)については,A社に収集・運搬を委託しているが,事業活動に伴って排出される一般廃棄物(事業系廃棄物)については,甲市が自ら又は委託の方法により処理することはなく,一般廃棄物処理業の許可を受けた唯一の業者であるA社がこれを処理している。Xは,このようにA社が一般廃棄物処理業の許可を受けて行っている甲市の事業系廃棄物の処理について,Yの許可を受けて参入しようとしたものである。

 甲市の一般廃棄物処理計画のうち平成10年度及び平成11年度の各実施計画においては,事業活動に伴って排出されるごみは,排出者自らの責任において適正に処理し,多量に発生したごみは排出者が自己処理し,又は許可業者に委託して適正に処理することが,廃棄物を排出する際の原則として求められていた。

 3 第1,2審とも,Xの請求を認容して本件不許可処分を取り消すべきものとした。

 原判決の理由の要旨は,次のとおりである。

 (1)甲市が自ら又は委託の方法により事業者の排出する一般廃棄物の収集・運搬を行うことは困難であるものと認められるから,本件許可申請は廃棄物処理法7条3項1号に適合するものである。

 (2)甲市の一般廃棄物処理計画は,A社のみに事業系廃棄物の収集・運搬業の許可を与えることを内容としているものではなく,また,それを前提としているものでもない。それにもかかわらず,かかる一般廃棄物処理計画が円滑に遂行されている以上,新規の許可申請に対して許可することは同計画に適合しないこととなるとしたYの判断は,廃棄物処理法7条3項2号の適用を誤ったものである。

 4 上告受理申立ての理由は,廃棄物処理法7条3項1号及び2号の解釈適用の誤りをいうものである(判例違反をいう論旨は排除された。)。

 5 本判決は,廃棄物処理法7条3項1号については,原審と同様に解したものの,同項2号については,「既存の許可業者等によって一般廃棄物の適正な収集及び運搬が行われてきており,これを踏まえて一般廃棄物処理計画が作成されているような場合には,市町村長は,これとは別にされた一般廃棄物収集運搬業の許可申請について審査するに当たり,一般廃棄物の適正な収集及び運搬を継続的かつ安定的に実施させるためには,既存の業者等のみに引き続きこれを行わせることが相当であるとして,当該申請の内容は一般廃棄物処理計画に適合するものであるとは認められないという判断をすることもできる」との判断を示した。その上で,本判決は,甲市ではA社により一般廃棄物の収集及び運搬が円滑に遂行されてきていることを踏まえて一般廃棄物処理計画が作成されていると解されるところ,本件不許可処分は,その点を考慮した上,一般廃棄物の適正な収集及び運搬を継続的かつ安定的に実施させるためには,新たにXに対して許可を与えるよりも,引き続きA社のみに一般廃棄物の収集及び運搬を行わせる方が相当であるとして,本件許可申請は一般廃棄物処理計画に適合するものであるとは認められないと判断したものと解することができ,そのようなYの判断は許されないものとはいえないから,本件不許可処分は適法であると判断した。

 6 廃棄物処理法は,一般廃棄物の処理に関する事務を市町村の固有事務としており,市町村は,当該市町村の区域内の一般廃棄物処理計画を定めなければならないとされている(同法6条1項)。そして,市町村は,一般廃棄物の処理について統括的な責任を有するものとされている(同法6条の2第1項)。そこで,市町村は,自ら又は第三者に委託して一般廃棄物の処理を行うことになるところ,そのようにして処理することが困難な場合に限って,一般廃棄物処理業を行おうとする業者に廃棄物処理法7条1項所定の一般廃棄物処理業の許可がされることになっている。これは,市町村が一般廃棄物処理計画を作成し,これに従って業務を実施するに当たって,当該計画との整合性を欠く業者が存在したのでは,計画どおりに業務を遂行することができなくなるという理由から,計画との整合性が確保される場合に許可をしようという制度である(厚生省水道環境部編『〔新〕廃棄物処理法の解説A』96頁)。

 7 廃棄物処理法は,昭和45年に清掃法の全面改正として制定されたものであり,一般廃棄物処理業の許可制度について定める廃棄物処理法7条の規定は,清掃法15条の汚物取扱業の許可制度を引き継いだものである。

清掃法は,当初は具体的な許可要件を定めてはいなかったが,昭和40年の改正により,その15条の2において若干の許可要件が追加され,これがその後、廃棄物処理法に引き継がれ,その後更に要件が整備された。

 ところで,この清掃法15条の許可の性質について,最一小判昭47.10.12民集26巻8号1410頁は,市町村長がこの許可を与えるかどうかは,清掃法の目的と当該市町村の清掃計画とに照らし,市町村がその責務である汚物処理の事務を円滑完全に遂行するのに必要適切であるかどうかという観点から,これを決すべきものであり,その意味において,市町村長の自由裁量にゆだねられていると判示している。

 廃棄物処理法7条の一般廃棄物処理業の許可についても,最三小判平5.9.21裁判集民事169号807頁,判例タイムズ829号141頁は,一般廃棄物処理業の不許可処分について行政庁に裁量権の逸脱濫用はないとした原審の判断を是認している。

また,一般廃棄物処理業の不許可処分の取消請求を棄却した静岡地判平成8.11.22判例タイムズ958号118頁について,その控訴審の東京高判平9.12.3(平8(行コ)第164号)及び上告審の最三小判平11.4.13(平10(行ツ)第83号)も,請求棄却の結論を維持している。

 8 本判決は,このような判例等を視野に入れ,廃棄物処理事業が本来的には市町村が自己の責任において実施すべき事業と定められていることや,廃棄物処理法7条3項の規定の文言上,市町村長には相当広範な裁量が与えられているものと考えられることから,前記のような判断を示したものである。

 結果的には新規業者の参入を認めないことになっているが,本判決の趣旨は,既存業者を保護することにあるのではなく,廃棄物処理事業が本来市町村が自己の責任において遂行すべきものであって,一般廃棄物処理業の許可が通常の営業許可とは異なる性質を持っていること,廃棄物処理法7条3項が市町村長の裁量を認める余地のある規定となっていること等を考慮して,計画適合性に関する市町村長の裁量を認めるべきであるとしたものである。

 一般廃棄物処理業の許可については,その効力等が訴訟で争われることが少なくないところ,本判決は廃棄物処理法7条の解釈について最高裁判所が初めて明確に判断を示したものであり,実務に与える影響は小さくないものと考えられる。