ファイナンシャルプランナーの相談のうち、見直しといえば、「保険の見直し」だ。今回は保険の見直しについて紹介しておきたい。なお、保険商品の選び方ではなく、代理店との向き合い方に近い。
保険の「見直し」と言っても、その意味合いは複数ある。
相談者にとって「見直し」は、
A (子供の誕生により万一のときの保険に入りたいので)見直したい
B (子供の誕生により万一のときの保険に入りたいが、加えて保険料を抑えるために医療保険を)見直したい
C (子供の誕生や結婚などライフイベントの変化を理由に、保険料を抑えるために全体的に)見直したい
という意図がある。
Aについて、医療保険は現状のままで、万一のときの保険に入ることを希望しているため、正確に言えば、見直しというより新規加入となる。
BはAと似ているが万一のときの保険に入りたいが、保険料総額が上がるため、加入している医療保険(がん保険)の見直しもしたいケース。
Cは保険に加入したときは問題なかったが、ライフイベントの変化で保険料を抑えられないか相談したいケース。加入してから随分経つため、現状に適したより良い保険を探すケースや契約更新により保険料が上がるので見直したいケースも含める。
もちろん、保険料が少し上がっても、保障内容を充実させたい場合もあるが今回は割愛する。
さて、実際に保険代理店に相談する場合、Aのケースであれば、「見直し」ではなく、「万一のときの保険に入りたいので提案してほしい」と言えば、相手に伝わる。問題はBやCのケースである。
ここで、代理店にとっての「見直し」はどういう意味かというと、
他の代理店からお客様になってもらえるチャンスである。
また、一般的にご家庭が加入する保険の種類(全種類加入しなければならない、という意味ではなく、需要が高いもの)としては、
・万一のときの保障(定期保険、終身保険など)
・医療保険
・がん保険
・介護保険
・個人年金保険
・学資保険
などがある。
ここからが本題だが、BやCのようなケースの場合、
相談者の希望は「保険料を抑えたい」ことである。
医療保険に加入しているが、もっと安い医療保険はないか、保障内容を加味しながら検討したいという相談である。
まず、「保険料を抑えるために」見直したいと伝えることが大切だ。この点を明確にしないと、代理店は、
「男性は2人に1人、女性は3人に1人ががんになると言われているので、がん保険に入った方が良いですよ」
「老後は1億円かかると言われているので、早めに個人年金で準備をしましょう」
と聞いたことのあるフレーズとともに、新たな保険を勧めてくる。
コンプライアンス上、解約すると不利になることを言わずに新規契約を勧めるのは問題があるため、代理店としては別の保険会社への見直しが難しいと、前述の「一般的に加入している保険」のうち加入していない商品を勧める。
無料相談だからなおさらだ。前述のBのケースよりもCの方が勧められる可能性は高い。
すると、「保険料を抑えること」が目的だったにも関わらず、結果的には保険料が増えてしまう。悩みを相談するために足を運んだのに、危機感が増し、新たな悩みを抱えることになる。ではどうすればよいか。
この場合、悩みを解決してもらっていない(保険料を抑えたわけではない)ため、情報だけは受け取り、他の代理店にも相談してみよう。
もし別のところでも同じ状況であれば、これ以上は既契約の同分野では保険料を抑えられないことになる。代理店としては既契約の保険に代わるほどの商品の提案ができないため、他の種類の保険を提案するのである。
このように、「見直し」という意味合いが立場によって変わるため、相談に行っても満足できないことがある。保険料を抑えることが目的で相談する場合、次のステップを踏みたい。
(1) 相談の目的が、保障内容はなるべく落とさず、既契約の保険よりも保険料を抑えることなら、複数の代理店で相談し、見直しできる商品がなければ、保険料を抑えることはできない可能性が高い。
(2) 加入していない商品について検討する。がん保険に加入してない人に保険を勧めることは悪いことではない。がんに限らず、リスクを保険でカバーするのは一つの手段なので、リスク発生時の家計への負担を考えると検討しておいて損はない。詳しい人だと、現在の医療技術など、有益な情報を提供してくれるので、うまく情報を引き出そう。
<まとめ>
(1)と(2)を混ぜて考えてしまうと、「悩みを解決してほしくて相談したのに悩みが増えた」状況が生まれる。(1)でいったん結論を明確にし、(2)のように他のリスクについても考える(段階的に考える)ことで、すっきりするのではないだろうか。
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