周知商品等表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)の類似性・広義の混同 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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周知商品等表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)の類似性・広義の混同

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相続

周知商品等表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)の類似性・広義の混同

最高裁昭和58・10・7、『商標・意匠・不正競争判例百選』70事件、日本ウーマン・パワー事件

一 ある営業表示が旧不正競争防止法1条1項2号にいう「他人の営業表示」と類似のものにあたるか否かについては、取引の実情のもとにおいて、取引者又は需要者が両表示の外観、称呼又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断するのが相当である。
二 旧不正競争防止法1条1項2号にいう「混同ヲ生ゼシムル行為」は、他人の周知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が、自己と右他人とを同一営業主体と誤信させる行為のみならず、両者間にいわゆる親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係が存するものと誤信させる行為をも包含する。

 最高裁昭和59・5・29、『商標・意匠・不正競争判例百選』71事件、77事件、フットボール(NFL)事件

一 ある商品表示が旧不正競争防止法1条1項1号にいう他人の商品表示と類似のものにあたるか否かについては、取引の実情のもとにおいて、取引者又は需要者が両表示の外観・称呼・観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断するのが相当である。
二 特定の商品表示・営業表示の持つ出所識別機能・品質保証機能・顧客吸引力を保護発展させるという共通の目的のもとに同表示の商品化契約によって結束しているグループは、旧不正競争防止法1条1項1号又は2号にいう「他人」に含まれる。

三 旧不正競争防止法1条1項1号又は2号にいう混同を生ぜしめる行為は、同一の表示の商品化事業を営むグループの商品表示・営業表示と同一又は類似の表示を使用することによって、その使用者が右グループに属するものと誤信させる行為をも包含し、右使用者とグループの構成員との間に競争関係があることを要しない。

五 旧不正競争防止法1条1項柱書にいう営業上の利益を害されるおそれがある者には、周知表示の商品化事業に携わる同表示の使用許諾者又は使用権者であって、同項1号又は2号に該当する行為により、再使用権者に対する管理統制並びに同表示による商品の出所識別機能・品質保証機能・顧客吸引力を害されるおそれのある者も含まれる。

(参照条文)

旧不正競争防止法111号・2

広義の混同(ダイリューション)

 最判平成10・9・10、『商標・意匠・不正競争判例百選』73事件、スナックシャネル事件

一 旧不正競争防止法2条1項1号に規定する「混同を生じさせる行為」は、「他人の周知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者と当該他人との間にいわゆる親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存する」と誤信させるいわゆる「広義の混同」を生じさせる行為をも包含する。
二 「スナックシャネル」及び「スナックシャレル」の表示を使用する者の営業が飲食業であり「シャネル」の表示を使用する企業グループの営業と異なっても、「シャネル」の表示の周知性が極めて高いこと、右企業グループの属するファッション関連業界の企業においてその経営が多角化する傾向にあることなど判示の事実関係の下においては、「スナックシャネル」及び「スナックシャレル」の表示の使用は、右企業グループに属する企業についていわゆる「広義の混同」を生じさせる行為に当たる。

 同判決によれば、

旧不正競争防止法(平成五年改正前のもの。以下、これを「旧法」といい、右平成5年改正後のものを「新法」という。)1条1項2号に規定する「混同ヲ生ゼシムル行為」とは、「他人の周知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が自己と右他人とを同一営業主体として誤信させる行為」のみならず、「両者間にいわゆる親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為」(以下「広義の混同惹起行為」という。)をも包含し、混同を生じさせる行為というためには両者間に競争関係があることを要しないと解すべきことは、最高裁の判例とするところである(最高裁昭和58年10月7日判決・民集37巻8号1082頁、最高裁昭和59年5月29日判決・民集38巻7号920頁)。

 本件は、新法附則2条により新法2条1項1号、3条1項、5条が適用されるべきものであるが、新法2条1項1号に規定する「混同を生じさせる行為」は右判例が旧法条1項2号の「混同ヲ生ゼシムル行為」について判示するのと同様、「広義の混同惹起行為」をも包含するものと解するのが相当である。

けだし、(一)旧法1条1項2号の規定と新法2条1項1号の規定は、いずれも他人の周知の営業表示と同一又は類似の営業表示が無断で使用されることにより周知の営業表示を使用する他人の利益が不当に害されることを防止するという点において、その趣旨を同じくする規定であり、

(二)右判例は、企業経営の多角化、同一の表示の商品化事業により結束する企業グループの形成、有名ブランドの成立等、企業を取り巻く経済、社会環境の変化に応じて、周知の営業表示を使用する者の正当な利益を保護するためには、広義の混同惹起行為をも禁止することが必要であるというものであると解されるところ、このような周知の営業表示を保護する必要性は、新法の下においても変わりはなく、

(三)新たに設けられた新法2条1項2号の規定は、他人の著名な営業表示の保護を旧法よりも徹底しようとするもので、この規定が新設されたからといって、周知の営業表示が保護されるべき場合を限定的に解すべき理由とはならないからである。」