美術の著作物 - 民事事件 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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美術の著作物

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美術の著作物

著作権法

第1、定義
美術の著作物とは、美術の範囲に属する思想又は感情を創作的に表現したもの(著作権法2条1項1号)である。
美術の著作物(著作権法10条1項4号)として、絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物が例示されている。
「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする(著作権法2条2項)。

第2、著作者の推定
(著作者の推定)
第14条  著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供・提示の際に、その氏名・名称(以下「実名」という。)又はその雅号、筆名、略称その他実名に代えて用いられるもの(以下「変名」という。)として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定する。

第3、美術の著作物の原作品(有体物)の所有権と著作権の関係
 有体物としての美術の著作物の所有権と、美術の著作物の著作権・著作者人格権は、合致しない場合がある。
美術の著作物の著作権に含まれる特有の支分権として、展示権(著作権法25条)がある。
例えば、画家(著作者)が美術の著作物を描いた場合、美術の著作物の原作品の著作権は画家が有するが、原作品の譲渡により、展示権(著作権法25条)を画家が原作品の所有者に行使はできないが(著作権法45条、18条2項2号)、例えば、著作物に改変などを受けた場合に著作者人格権を行使できる場合がある(著作権法20条(同一性保持権)など)。
また、著作権が消滅した後、原作品の所有権者が、著作物の著作権を主張することはできないし、第三者が原作品の所有権の排他的支配を侵害することなく著作物を利用しても、原作品の所有権を侵害するものではない(最判昭和59・1・20、顔真卿事件)。

第4、公表
 美術の著作物は、美術の著作物の原作品の所有者又はその同意を得た者によって、美術の著作物をその原作品により公に展示(著作権法第45条第1項に規定する者によって同項の展示)が行われた場合には、公表されたものとみなす(著作権法4条4項)。
 
著作権法にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする(2条5項)。

(著作物の発行)
第3条  著作物は、その性質に応じ公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物が、複製権(第21条)を有する者又はその許諾(第63条第1項の規定による利用の許諾をいう。第4条の2及び第63条を除き、以下この章及び次章において同じ。)を得た者若しくは第79条の出版権の設定を受けた者によって作成され、頒布された場合(第26条、第26条の2第1項又は第26条の3に規定する権利を有する者の権利を害しない場合に限る。)において、発行されたものとする。
2  二次的著作物である翻訳物の前項に規定する部数の複製物が第28条の規定により第21条に規定する権利と同一の権利を有する者又はその許諾を得た者によって作成され、頒布された場合(第28条の規定により第26条、第26条の2第1項又は第26条の3に規定する権利と同一の権利を有する者の権利を害しない場合に限る。)には、その原著作物は、発行されたものとみなす。
3  著作物が著作権法による保護を受けるとしたならば前二項の権利を有すべき者又はその者からその著作物の利用の承諾を得た者は、それぞれ前二項の権利を有する者又はその許諾を得た者とみなして、前二項の規定を適用する。

(著作物の公表)
第4条  著作物は、発行され、又は第22条(上演権)から第25条(展示権)までに規定する権利を有する者若しくはその許諾を得た者によって上演、演奏、上映、公衆送信、口述若しくは展示の方法で公衆に提示された場合(建築の著作物にあっては、第21条に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者によって建設された場合を含む。)において、公表されたものとする。
2  著作物は、第23条第1項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者によって送信可能化された場合には、公表されたものとみなす。
3  二次的著作物である翻訳物が、第28条の規定により第22条から第24条までに規定する権利と同一の権利を有する者若しくはその許諾を得た者によって上演、演奏、上映、公衆送信若しくは口述の方法で公衆に提示され、又は第28条の規定により第23条第1項に規定する権利と同一の権利を有する者若しくはその許諾を得た者によって送信可能化された場合には、その原著作物は、公表されたものとみなす。
4  美術の著作物又は写真の著作物は、第45条第1項に規定する者によって同項の展示が行われた場合には、公表されたものとみなす。
5  著作物が著作権法による保護を受けるとしたならば第1項から第3項までの権利を有すべき者又はその者からその著作物の利用の承諾を得た者は、それぞれ第1項から第3項までの権利を有する者又はその許諾を得た者とみなして、これらの規定を適用する。

第5、美術の著作物の著作者人格権
1、公表権(18条1項)とその制限(18条2項2号)、
(公表権)
第18条  著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。
2  著作者は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に掲げる行為について同意したものと推定する。
一  その著作物でまだ公表されていないものの著作権を譲渡した場合 当該著作物をその著作権の行使により公衆に提供し、又は提示すること。
二  その美術の著作物又は写真の著作物でまだ公表されていないものの原作品を譲渡した場合 これらの著作物をその原作品による展示の方法で公衆に提示すること。
三  第29条の規定によりその映画の著作物の著作権が映画製作者に帰属した場合 当該著作物をその著作権の行使により公衆に提供し、又は提示すること。
3  行政機関情報公開法、情報公開条例などの場合には、公表権が制限される(著作権法18条3項4項)。

2、氏名表示権
(氏名表示権)
第19条1項  著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供・提示に際し、その実名または変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。
2  著作物を利用する者は、その著作者の別段の意思表示がない限り、その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従って著作者名を表示することができる。
3  著作者名の表示は、著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる。
4 行政機関情報公開法などの場合には、氏名表示権が制限される(著作権法19条4項)。

3、同一性保持権(20条1項)とその制限(20条2項)、
(同一性保持権)
第20条  著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
2  前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、適用しない。
一  第33条第1項(同条第4項において準用する場合を含む。)、第33条の2第1項又は第34条第1項の規定により著作物を利用する場合における用字又は用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむを得ないと認められるもの
二  建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変
四  前三号に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変

第6、美術の著作物の著作権に特有の問題
1、複製権
 複製(著作権法2条1項15号)とは、印刷、写真、複写、録画その他の方法により有形的に再製することをいう。
 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する(著作権法21条)。

2、譲渡権(著作権法26条の2第1項)とその制限(26条の2第2項)、
(譲渡権)
第26条の2  著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあっては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。
2  前項の規定は、著作物の原作品又は複製物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。
一  前項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された著作物の原作品又は複製物
二  第67条第1項若しくは第69条の規定による裁定又は万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律第5条第1項 の規定による許可を受けて公衆に譲渡された著作物の複製物
三  第67条の2第1項の規定の適用を受けて公衆に譲渡された著作物の複製物
四  前項に規定する権利を有する者又はその承諾を得た者により特定かつ少数の者に譲渡された著作物の原作品又は複製物
五  国外において、前項に規定する権利に相当する権利を害することなく、又は同項に規定する権利に相当する権利を有する者若しくはその承諾を得た者により譲渡された著作物の原作品又は複製物

3、展示権
(展示権)
著作権法第25条  著作者は、その美術の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利を専有する。

3-2、展示権の制限
(美術の著作物等の原作品の所有者による展示)
第45条  美術の著作物若しくは写真の著作物の原作品の所有者又はその同意を得た者は、これらの著作物をその原作品により公に展示することができる。
2  前項の規定は、美術の著作物の原作品を「街路、公園その他一般公衆に開放されている屋外の場所又は建造物の外壁その他一般公衆の見やすい屋外の場所」に「恒常的に設置する場合」には、適用しない。すなわち、美術の著作物の原作品の所有者またはその同意を得ない場合であっても、この場合には、展示権による制限を受けない。
著作権法45条2項の「屋外の場所」とは、「街路、公園その他一般公衆に開放されている屋外の場所又は建造物の外壁その他一般公衆の見やすい屋外の場所」である。

4、貸与権
 著作権法にいう「貸与」には、いずれの名義又は方法をもってするかを問わず、これと同様の使用の権原を取得させる行為を含むものとする(2条8項)。
(貸与権)
第26条の3  著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあっては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。

5、(公開の美術の著作物等の利用)
 美術の著作物でその原作品が「屋外の場所」(街路、公園その他一般公衆に開放されている屋外の場所又は建造物の外壁その他一般公衆の見やすい屋外の場所)に恒常的に設置されているものは、いずれの方法によるかを問わず、自由に利用することができる(著作権法46条柱書)。
 ただし、以下の場合は、美術の著作物を利用することができない。
一  彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合(著作権法46条1項)。すなわち、彫刻を増製することは有形的に再製する「複製」に該当するから、複製権・譲渡権などの侵害となる。
三  屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合(著作権法46条3号)、すなわち、もともと「屋内の場所に設置されている場合」または「屋外の場所に恒常的に設置されていない場合」には、美術の著作物の原作品の所有者の承諾なくして、上記の複製はできない。
四  専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合(著作権法46条4号)  すなわち、美術の著作物について、承諾なくして、販売目的での複製、複製物の販売は禁止されている。複製権・譲渡権・頒布権などの侵害となる。

附則
(施行期日)
第1条  著作権法は、昭和46年1月1日から施行する。
(公開の美術の著作物についての経過措置)
第6条  著作権法の施行の際現にその原作品が新法第45条第2項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されている美術の著作物の著作権者は、その設置による当該著作物の展示を許諾したものとみなす。

6、(美術の著作物等の展示に伴う複製)
著作権法第47条  美術の著作物の原作品により、展示権を害することなく、これらの著作物を公に展示する者は、観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子にこれらの著作物を掲載することができる。
 すなわち、美術の著作物について、展示会などのパンフレットなどに解説・紹介するために掲載することができる。

7、(美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等)
著作権法第47条の2  美術の著作物の原作品又は複製物の所有者その他のこれらの譲渡又は貸与の権原を有する者が、譲渡権(第26条の2第1項)又は貸与権(第26条の3)に規定する権利を害することなく、その原作品又は複製物を譲渡し、又は貸与しようとする場合には、当該権原を有する者又はその委託を受けた者は、その申出の用に供するため、これらの著作物について、複製又は公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)(当該複製により作成される複製物を用いて行うこれらの著作物の複製又は当該公衆送信を受信して行うこれらの著作物の複製を防止し、又は抑止するための措置その他の著作権者の利益を不当に害しないための措置として政令で定める措置を講じて行うものに限る。)を行うことができる。
すなわち、美術の著作物の原作品・複製物の譲渡・貸与の申出に伴って、複製・公衆送信・送信可能化をすることができる。

第7、著作権の一般的な制限
1、写り込み(著作権法30条の2)
 著作権法改正により新設された。
(付随対象著作物の利用)
第30条の2  写真の撮影、録音又は録画(以下この項において「写真の撮影等」という。)の方法によって著作物を創作するに当たって、当該著作物(以下この条において「写真等著作物」という。)に係る写真の撮影等の対象とする事物又は音から分離することが困難であるため付随して対象となる事物又は音に係る他の著作物(当該写真等著作物における軽微な構成部分となるものに限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該創作に伴って複製又は翻案することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該複製又は翻案の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
2  前項の規定により複製又は翻案された付随対象著作物は、同項に規定する写真等著作物の利用に伴って利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。


2、引用
(引用)
第32条1項  公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

最高裁昭和55・3・28民集第34巻3号244頁  (パロディ事件)
一 旧著作権法(明治32年法律第39号)30条1項2号にいう「引用」とは、「紹介、参照、論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録すること」をいい、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ(明瞭区別性)、かつ、右両著作物間に前者が主、後者が従の関係があること(附従性)を要する。
二 他人が著作した写真を改変して利用することによりモンタージュ写真を作成して発行した場合において、右モンタージュ写真から他人の写真における本質的な特徴自体を直接感得することができるときは、右モンタージュ写真を一個の著作物とみることができるとしても、その作成発行は、右他人の同意がない限り、その著作者人格権を侵害するものである。
三 雪の斜面をスノータイヤの痕跡のようなシュプールを描いて滑降して来た六名のスキーヤーを撮影して著作した判示のようなカラーの山岳風景写真の一部を省き、右シュプールをタイヤの痕跡に見立ててその起点にあたる雪の斜面上縁に巨大なスノータイヤの写真を合成して作成した判示のような白黒のモンタージユ写真を発行することは、右山岳風景写真の著作者の同意がない限り、その著作者人格権を侵害するものである。

3、教育機関
(学校その他の教育機関における複製等)
第35条  学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
2  公表された著作物については、前項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示し.て利用する場合又は当該著作物を第38条第1項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合には、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
4、複製権の制限(47条の10)と複製物の目的外譲渡(49条)
(複製権の制限により作成された複製物の譲渡)
第47条の10  第31条第1項(第1号に係る部分に限る。以下この条において同じ。)若しくは第3項後段、第32条、第33条第1項(同条第4項において準用する場合を含む。)、第33条の2第1項若しくは第4項、第34条第1項、第35条第1項、第36条第1項、第37条、第37条の2(第2号を除く。以下この条において同じ。)、第39条第1項、第40条第1項若しくは第2項、第41条から第42条の2まで、第42条の3第2項又は第46条から第47条の2までの規定により複製することができる著作物は、これらの規定の適用を受けて作成された複製物(第31条第1項若しくは第3項後段、第35条第1項、第36条第1項又は第42条の規定に係る場合にあっては、映画の著作物の複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあっては、当該映画の著作物の複製物を含む。以下この条において同じ。)を除く。)の譲渡により公衆に提供することができる。ただし、第31条第1項若しくは第3項後段、第33条の2第1項若しくは第4項、第35条第1項、第37条第3項、第37条の2、第41条から第42条の2まで、第42条の3第2項又は第47条の2の規定の適用を受けて作成された著作物の複製物(第31条第1項若しくは第3項後段、第35条第1項又は第42条の規定に係る場合にあっては、映画の著作物の複製物を除く。)を、第31条第1項若しくは第3項後段、第33条の2第1項若しくは第4項、第35条第1項、第37条第3項、第37条の2、第41条から第42条の2まで、第42条の3第2項又は第47条の2に定める目的以外の目的のために公衆に譲渡する場合は、この限りでない。
 
(複製物の目的外使用等)
第49条  次に掲げる者は、第21条の複製を行ったものとみなす。
一  第30条第1項、第30条の3、第31条第1項第1号若しくは第3項後段、第33条の2第1項若しくは第4項、第35条第1項、第37条第3項、第37条の2本文(同条第2号に係る場合にあっては、同号。次項第1号において同じ。)、第41条から第42条の3まで、第42条の4第2項、第44条第1項若しくは第2項、第47条の2又は第47条の6に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された著作物の複製物(次項第4号の複製物に該当するものを除く。)を頒布し、又は当該複製物によって当該著作物を公衆に提示した者
二  第44条第3項の規定に違反して同項の録音物又は録画物を保存した放送事業者又は有線放送事業者
三  第47条の3第1項の規定の適用を受けて作成された著作物の複製物(次項第2号の複製物に該当するものを除く。)若しくは第47条の4第1項若しくは第2項の規定の適用を受けて同条第1項若しくは第2項に規定する内蔵記録媒体以外の記録媒体に一時的に記録された著作物の複製物を頒布し、又はこれらの複製物によってこれらの著作物を公衆に提示した者
四  第47条の3第2項、第47条の4第3項又は第47条の5第3項の規定に違反してこれらの規定の複製物(次項第2号の複製物に該当するものを除く。)を保存した者
五  第30条の4、第47条の5第1項若しくは第2項、第47条の7又は第47条の9に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された著作物の複製物(次項第6号の複製物に該当するものを除く。)を用いて当該著作物を利用した者
六  第47条の6ただし書の規定に違反して、同条本文の規定の適用を受けて作成された著作物の複製物(次項第5号の複製物に該当するものを除く。)を用いて当該著作物の自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行った者
七  第47条の8の規定の適用を受けて作成された著作物の複製物を、当該著作物の同条に規定する複製物の使用に代えて使用し、又は当該著作物に係る同条に規定する送信の受信(当該送信が受信者からの求めに応じ自動的に行われるものである場合にあっては、当該送信の受信又はこれに準ずるものとして政令で定める行為)をしないで使用して、当該著作物を利用した者
2  次に掲げる者は、当該二次的著作物の原著作物につき第27条の翻訳、編曲、変形又は翻案を行ったものとみなす。
一  第30条第1項、第31条第1項第1号若しくは第3項後段、第33条の2第1項、第35条第1項、第37条第3項、第37条の2本文、第41条又は第42条に定める目的以外の目的のために、第43条の規定の適用を受けて同条各号に掲げるこれらの規定に従い作成された二次的著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によって当該二次的著作物を公衆に提示した者
二  第47条の3第1項の規定の適用を受けて作成された二次的著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によって当該二次的著作物を公衆に提示した者
三  第47条の3第2項の規定に違反して前号の複製物を保存した者
四  第30条の3又は第47条の6に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された二次的著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によって当該二次的著作物を公衆に提示した者
五  第47条の6ただし書の規定に違反して、同条本文の規定の適用を受けて作成された二次的著作物の複製物を用いて当該二次的著作物の自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行った者
六  第30条の4、第47条の7又は第47条の9に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された二次的著作物の複製物を用いて当該二次的著作物を利用した者
 
5、 出所の明示
(出所の明示)
第48条  次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。
一  第32条、第33条第1項(同条第4項において準用する場合を含む。)、第33条の2第1項、第37条第1項、第42条又は第47条の規定により著作物を複製する場合
二  第34条第1項、第37条第3項、第37条の2、第39条第1項、第40条第1項若しくは第2項又は第47条の2の規定により著作物を利用する場合
三  第32条の規定により著作物を複製以外の方法により利用する場合又は第35条、第36条第1項、第38条第1項、第41条若しくは第46条の規定により著作物を利用する場合において、その出所を明示する慣行があるとき。
2  前項の出所の明示に当たっては、これに伴い著作者名が明らかになる場合及び当該著作物が無名のものである場合を除き、当該著作物につき表示されている著作者名を示さなければならない。

第8、二次的著作物
 二次的著作物とは「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物」をいう(著作権法2条1項11号)。
 二次的著作物に対する著作権法による保護は、その原著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない(11条)。

(翻訳権、翻案権等)
第27条  著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
第28条  二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。

最高裁平成13年10月25日・裁判集民事第203号285頁(キャンディ・キャンディ事件)
1 甲が各回ごとの具体的なストーリーを創作し,これを小説形式の原稿にし,乙において,漫画化に当たって使用することができないと思われる部分を除き,その原稿に基づいて漫画を作成するという手順を繰り返すことにより制作された連載漫画は,同原稿を原著作物とする二次的著作物(著作権法2条1項11号,28条)である。
2 二次的著作物である連載漫画の原著作物である原稿の著作者は,同連載漫画の著作者に対し,同連載漫画の主人公を描いた絵画を合意によることなく作成し,複製し,又は配布することの差止めを求めることができる(著作権法65条2項,112条1項)。

最高裁平成9年7月17日・民集第51巻6号2714頁(ポパイ・ネクタイ事件)
一 漫画において一定の名称、容貌、役割等の特徴を有するものとして反復して描かれている登場人物のいわゆるキャラクターは、著作物(著作権法2条1項1号)に当たらない。
二 二次的著作物(著作権法2条1項11号)の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作物部分のみについて生じ、原著作物と共通し、その実質を同じくする部分には生じない。
三 連載漫画において、登場人物が最初に掲載された漫画の著作権の保護期間が満了した場合には、後続の漫画の著作権の保護期間がいまだ満了していないとしても、当該登場人物について著作権を主張することはできない(著作権法53条1項,著作権法56条1項)。
四 著作権法21条の複製権を時効取得(民法163条)する要件としての継続的な行使があるというためには、著作物の全部又は一部につき外形的に著作権者と同様に複製権を独占的、排他的に行使する状態が継続されていることを要し、そのことについては取得時効の成立を主張する者が立証責任を負う。
五 被上告人の平成5年改正前の旧不正競争防止法1条1項1号に基づく差止請求に対して、上告人が商標権の行使を理由として旧不正競争防止法6条の抗弁(現行法では削除)を主張している場合において、事実審の口頭弁論終結後に当該商標権につき商標登録を無効(商標法46条1項1号)とする審決が確定したときは、旧民事訴訟法420条1項8号に照らし、被上告人は上告審でこれを主張することができる。


第9、美術の著作物に該当するかが問題となるもの
ア、書
著作権法10条1項4号には、書画が例示されていないので、美術の著作物に該当するかが問題となる。
例えば、漢字について、独占権を認めることはできないが,観賞用の独特の書風(筆勢、運筆、墨の濃淡、文字と用紙の余白とのバランスなど)をもって書かれた書については、美術の著作物に該当する場合がある( 最判昭和59・1・20、顔真卿事件)。
ただし、書風や流儀そのものは、美術の著作物ではないと解されている。
イ、印刷用書体
漢字などの文字については、万人共通のものであるから、独占権を認めることはできないから、原則として、印刷用書体について、著作物性を認めることはできない(最判平成12・9・7、タイプフェイス事件)。
なお、実際に印刷用書体について、著作物性を認めた裁判例はない。

ウ、応用美術
中山信弘『著作権法』138頁
渋谷達紀『著作権法』36頁、126頁
上野達弘「法学教室」323号156頁以下(2007年)

著作権法2条2項には、「美術の著作物には、美術工芸品を含むものとする。」と規定されているので、実用上または産業上利用される応用美術が、美術の著作物に該当するかが問題となる。
美的な実用品または産業上利用されるものは、意匠法による保護を受ける場合がある。
そこで、応用美術の著作物が著作権法の保護を受ける著作物に該当するかが問題となる。
実用的・産業上の利用目的のために表現上の制約があったり、必要不可欠な表現、ありふれた表現などは、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)に該当しないから、純粋美術と異なり、美術の著作物に該当しないと解される。

エ、キャラクター
キャラクターについては、通説は、抽象的なキャラクターのみについては保護を否定するが、キャラクターが絵画の著作物の場合には、保護を肯定している。
最高裁はポパイ(ネクタイ)事件やキャンディ・キャンディ事件において、キャラクターの絵柄を「美術(絵画)の著作物」として保護を肯定する。
なお、渋谷達紀『著作権法』では、キャラクターを「部分の著作物」として保護を肯定しているが、理由付けにおいて、少数説である。
キャラクターは、登録すれば、商標法や意匠法による保護を受ける。
また、キャラクターは、不正競争防止法2条1項1号~3号により、周知商品等表示・著名商品等表示・商品形態保護として、保護を受ける場合がある( 最判平成9・7・17、ポパイ事件)。
また、キャラクターはパブリシティ権による保護を受ける場合もあり得るとする見解もある。

第10、意匠法との関係
意匠法26条
(他人の登録意匠等との関係)
第26条  意匠権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その登録意匠がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の登録意匠若しくはこれに類似する意匠、特許発明若しくは登録実用新案を利用するものであるとき、又はその意匠権のうち登録意匠に係る部分がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の特許権、実用新案権若しくは商標権若しくはその意匠登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するときは、業としてその登録意匠の実施をすることができない。
2  意匠権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その登録意匠に類似する意匠がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の登録意匠若しくはこれに類似する意匠、特許発明若しくは登録実用新案を利用するものであるとき、又はその意匠権のうち登録意匠に類似する意匠に係る部分がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の意匠権、特許権、実用新案権若しくは商標権若しくはその意匠登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するときは、業としてその登録意匠に類似する意匠の実施をすることができない。

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