- 志田 茂
- 志田茂建築設計事務所 代表
- 東京都
- 建築家
対象:住宅設計・構造
感謝 ・・・
作る側としてこれを書くのはなんだかいやらしい気がしてしまうのですが、、、書きます。
設計者として、施主に感謝して欲しいなんて思った事はありません。工事が終わり、完成した家を見て、「うれしい!」 って思ってもらえればそれで十分で、かつ 私にとっても うれしい事 なのです。
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これまでに、施主のみなさんには、素敵な言葉をたくさんいただきました。そのうちの、今回の 「感謝」 にあたる言葉をいくつか書いてみます。
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2世帯住宅 No.4 (ナンバーフォー) の施主Fさん
「志田さんのおかげ!」
設計の時からずっと、、そして、家の中でいろんな楽しみ方を見つけるたびに、そう言われます。
Fさんのお父さん
「あなたのおかげだ!」
現場に行って会った時、完成した後も、そんなふうに言ってくださいました。
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2世帯住宅 プロペラの家 のお父さん
「ありがとう」
現場から帰る時、いつもそう言われました。
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夫婦ふたりの小さな家 鳥牛之家 の施主 鳥さんと牛さんが 土地の契約をした時
「あそこの土地に、正式に私たちが住まわせてもらうことになりました。」
土地というものは、本当は誰のものでもないと思っています。若いふたりが、同じように思い、(ある期間だけ所有し)「住まわせてもらう」 と言った事には驚きました。
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Fさんとお父さんの話は、「おかげ」の前に、私の事がついていますが、それは、私にだけではなくて、監督にも、職人さん達に使われたのです。プロペラの家のお父さんも同様に、家の工事に関わる人みんなにたいする 「ありがとう」 なのです。
鳥さんと牛さんは、他の人と同じように土地探しに苦労されました。そして、やっと決まった事に対する安堵感もあったと思います。土地の神様はきまぐれですから、その土地との縁も、もしかすると他の人に行ったかもしれません。逆に言えば、自分達に決まったという事は、他の人が がっかりしているという事でもあるわけです。そんな事含めて 「使わせてもらう」 という気持ちがあったのでしょう。
土地との出会い、人との出会いは 縁 です。もちろん 自分が求めて 探さないとなかなか結ばれないかもしれません。
家を持てる事は、本当に幸せな事です。 しかし、その幸せは自分の力だけでは絶対に作る事はできません。
自分が頑張ってつかんだ 縁 であっても、おごる事なく それに対して 謙虚に 「ありがとう」 と 感謝の気持ち を持つ事は、幸せな家を作るための 土台 かもしれません。
「ありがとう」の気持ちは人に伝わり、そして自分のところに戻ってきます。
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Fさんのお父さんの言葉で 私の人生訓 となったものがあります。
「 いじわるしちゃぁ、ダメだねっ! 」
それは、お父さんが見てきた いろいろな人達の浮き沈みの話 の中に出てきました。
その時は、
「 欲をかいて他人をおとしめたり傷付けたりしてはいけない 」
「 いじわるしたら、それは自分に戻ってくる 」
ととらえていました。でも、今、、
「いじわる」 というのは、意識的にする事ばかりではなく、そんなつもりはなくても無意識にしている事もあるかもしれず、だから、いつも謙虚に、他の人に対して、、自分がうれしいと思える出来ごとに対して、、「ありがとう」 の気持ちを持たなければいけない
という事なんだな、と思えます。
とは言っても、それがなかなか難しいですけどね。。
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幸せな家を作るために必要な事 施主の力 ・・・・ 終わり。
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これまでに書いた 「施主の力」 は、あくまで 家作りの時の 心の持ち方 です。これから家作りをされる方に、こんな事で違ってくるんだな、と思ってもらえれば幸いです。
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写真は No.4 の階段室の上に作った大きなトップライト。このトップライトが、北向きのこの家を明るくしてくれる要素の一つです。
感謝!
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