- 東郷 弘純
- 東郷法律事務所 代表
- 東京都
- 弁護士
対象:民事家事・生活トラブル
- 榎本 純子
- (行政書士)
貸金業者等が古い取引履歴を破棄している場合、取引の途中からの履歴しか提出してきません。このような場合、提出された取引履歴のみで引き直し計算を行うと、通常、過払金の額が少なく算出されます。貸金業者等が取引履歴を破棄したことによって、過払金の額が低く算出されることは不合理といえます。そこで、過払金の額をできる限り、履歴が全部提出された場合に近づけるために、開示されている取引履歴の冒頭部分に記載された借入残高を0円に変更して引き直し計算を行うことがあります。このような計算方法を「残高ゼロ計算」といいます。「残高無視計算」、「ゼロ推」、「冒頭ゼロ計算」ということもあります。
そもそも貸金業者等が提出してきた取引履歴の冒頭部分に残債務があること自体がそれ以前にも取引があったことを示す証拠といえます。なぜなら、初めて借入をするときは、借金残高はゼロだからです。そこで、冒頭部分に残高が残っている取引履歴を貸金業者等が提出してきた場合は、取引履歴の一部を開示してきたことがすぐにわかります。
「残高ゼロ計算」をすると、冒頭部分に残っている残債務をゼロにして引き直し計算をするわけですから、過払金の金額は多く算出されます。すなわち、冒頭部分の残債務は本来返済すべき債務であるのにそれをゼロにしてしまうのですから、残債務を残したまま引き直し計算を行う場合と比較して必ず過払金の額は多く算出されます。
しかし、このように冒頭をゼロにしてしまう根拠を法律上は見出しにくく、過払金返還請求訴訟においては、このように冒頭ゼロにして引き直し計算された場合、それによって増加した過払金の返還は認められにくい傾向にあります。
ただし、この場合、取引履歴に記載の取引日以前に取引があったことを証明する証拠が重要になります。例えば、貸金業者に銀行引き落としで返済をしていたのであれば返済の記録が記帳された貯金通帳や貸金業者等の窓口等で借入・返済したときに発行される明細書(取引履歴がない期間のもの)、初めて契約を交わした時の契約書等の資料です。このような資料があれば冒頭ゼロにして引き直し計算を行って訴訟を提起した場合でも、勝訴する可能性が増すことになります。これらの資料をお持ちのお客様を、弁護士に御申告ください。
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