
大澤 眞知子
オオサワ マチコグループ
子供の居場所は豊かで自由で成長を止めることのない「庭」であるべき
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2016年8月20日に自分が書いたコラムを読み思わず息をするのを忘れました。
こんな日もあったんだと。
アメリカの雑誌TIMEを退社した後、本物の英語を故郷の子供に教えたいと今治に小さな英語教室を開きました。今思えば、相当前のめりに起業家気取りでしたね。
思いつくことすべて、子供が楽しいと思うだろうことすべて、英語思考を助けるための刺激は何かと逡巡を重ねました。
3人の息子を育てながらの大冒険。
自分で開拓したホームステイプログラム。引率は私。
大仕事でしたが、子供たちと一緒に世界に出会うのは私にとっても大きな学びでした。
世界の風を持って来ないと意味がない!と、英語圏そしてヨーロッパからの若者のホストファミリーにもなり、多くの異なる人達を教室に迎えた日々。
生徒たちが受けた刺激は計り知れなかったと思います。
そんな中のひとりとしてひょっこりやって来たのが、私の貴重なパートナーとなったカナダ人Robert McMillanです。
1994年にはカナダにも進出、会社を作るまで成長しました。
カナダの公立高校が「高校留学」に乗り出した時期です。
でも、数年経つと、公立学区のバケの皮が剥がれ、「なんだ、ただ授業料がほしいだけのプログラムか」と、インチキな学区(ラングレーです)を相手にオンブズマンまで巻き込む大立ち回りを演じ、「日本の子供を商品としてしか見ない人たちとは仕事は出来ない!」と、完全にカナダの学区とは手を切りました。
収入がガタンと減りましたが、気分良かったですよ。
これでもう誰にも遠慮なく、カナダの高校留学の膿を公開出来る!と。
その時点でLawyerの資格を取りたかったんですが、まだ3人息子の教育にお金がかかり、私も仕事を放りだして大学に戻るのは非現実的。
UBCからAcceptをもらい、それを辞退した悔しさは未だに忘れられません。
(その敵討ち!と今は、Law Schoolに行くために新たに猛勉強中です。やっつけたいエージェントと学区が多すぎですから。)
それからも、紆余曲折どころか、色々な勢力に足を引っ張られながらも、Robertと一緒に前を向いて走り続けました。
誰にも媚を売らず、日本の生徒を育て、守るために。
JR四国と妙に仲良くなり、駅に教室を構え、いっぱい楽しいことも経験しました。
「悠々列車」という自作の曲をひっさげて、トロッコ列車でコンサートをしたことも素敵な思い出です。
カナダにもたくさんの生徒を連れて行きました。
そんな今治教室が最後の日を迎えました。
2016年8月20日に書いたコラムです。
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今治教室最後の日になりました。
カナダ移住を発表して以来、生徒たちやお母さん、お父さんたちからの心のこもった言葉に大感激しています。
ここまで前向きに受け止めていただけるとは、実は予想していませんでした。
ロバートと私の心の中は温かいものでいっぱいです。
「世界中どこにいてもつながる仕組みで激変しているので、今治にいる子どもたちにとっては新しい刺激、素敵なことだと思います。」
「劇的に変動している、この時に先生に出逢えたことに感謝しています。 自然いっぱいのカナダでの益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます。」
「英語の素晴らしさ、楽しさを教えていただいたこと、感謝しております。 SWCで過ごした時間が、これからの子供を成長させてくれることでしょう。」
「先生方の新たなスタートをお祝い申し上げます。ご活躍をお祈りします。」
「悠々列車がカナダに移る事を最初はものすごくショックでしたがチャンスだと思えるようになりました。こんなチャンスなかなかないと思っています。」
「この今治で、到底受けられないであろう教育を先生方にいただき、わが子はとても幸運だと思いながらも、先生たちの理想や目的を達成するには、いつかこの日は来るんだろうな、となんとなく感じていました。」
「今まで子供の世界を大きく広げてくださった眞知子先生、Robert先生には大変感謝しています。」
「駅の小さな一画は、進歩的で、刺激的で、たくさんの広い世界を見せてくれるすばらしい場所でした。どうぞお元気で、新たな挑戦がんばってください!」
などなどなどなどなどなど。。。。
本当にありがとうございます。
オンラインのカナダクラブにも予想をはるかに超える希望を受け、みなさんからの大きな愛を受け止めています。Thank you!
(実は「僕達を放って行かないで!という悲痛な声に応え、カナダからもオンラインで「カナダクラブ」と名付けた教育を続行することにしました。1年くらい続けて、まだカナダに来たい生徒がいればもう一回だけホームステイをやって終わりにしよう。それくらいは恩返しでやらなきゃ!」と考えていました。)
考えてみました。
私とロバートがここでやってことは何だったんだろうと。
そして、ある素晴らしい本に出会いました。
実はこうだったのかもと、説明している本に出会いました。
著名な発達心理学者 Alison Gopnikの著書 “The Gardener and the Carpenter” です。
子供の能力の伸ばし方をGardner(庭師) と Carpenter(大工) に例えています。
日本の教育モデル、またそのモデルに子供を適用させようと頑張りすぎる親たちが「大工」かな。
使う材料を注意深く選び、注意深く選び過ぎるがために、結局何が目標なのかを見失う。
選んだ材料を形にし、最初の青写真通りの製品に仕上げることが仕事。
完成作品が自分のした仕事の評価になる。
ドアの質は? 椅子はしっかりしているか?
ちょっとがたついていたり、それぞれの椅子の形が違っていたりなど、とんでもない。
正確にコントロールし、寸分違わない同じ作品を作ることが至上命題。
「庭師」とは。
庭を作る時は、植物がせいいっぱい育つための、守られた養分たっぷりの場所を創ります。
一応プランは立てますが、プラン通りになど進みません。
薄桃色のポピーを咲かせようと思ったら橙色のポピーが満開。
塀を這わせようと思ったバラが、頑固に地面に広がる。
黒い斑点、赤茶色の斑点、虫食いはもちろん防げません。
でも、「庭師」の最上の喜びは、庭が予想外の色に満ち満ちる時。
濃いイチイの木の前に広がる明るい色の雑草、忘れていたたんぽぽが庭のずっと向こうで花を咲かせる、蒼い忘れな草の中で完璧な色合いを見せて、ぶどうのつるが木登りを始め、真紅の彩りを添える。
プラン、コントロールの効かない世界、それが「庭師」の至福の喜びです。
正確に作られた椅子とは異なり、良い庭は、天候や季節の移ろいに適合し続け、変化を止めることはありません。
夏が過ぎ、秋が来て、冬から春に、また夏がめぐり、多様で、柔軟で、複雑、踊るように動的な庭は、豊かで、成長を止めることのない、美しい存在になっていきます。
私とロバートのいる「悠々列車SWC教室」は、今治の子供たちにそんな「庭」を用意したんだなと。
悠々列車SWCの空間に来るだけで、子供たちは、プラン、コントールのない世界に入り、変化し続け、美しい存在へと向かっていると、直感していたのかもと思います。
「庭師」Machiko & Robert は、今度はカナダの広い広い庭でみんなを待っています。
栄養たっぷりの場所で。
本物の庭に立つまでは、カナダクラブの画面から栄養を送り続けますから。
生徒たちが 豊かで、成長を止めることのない、美しい存在になれますように。
Machiko & Robert はずっと応援しています。
See you again!
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2016年8月20日にこのコラムを生徒のために書いて、9月1日カナダに向けて飛び立ちました。
あれから9年。
カナダクラブは未だに「子供が豊かで自由な成長を止めることのない居場所である『庭』」を提供し続けています。
生徒たちや親のみなさんの応援を得てここまで続いています。
6ヶ月で終えるつもりが、なんと!9年間です。
Thank you, Students and Parents!
from 「庭師」Machiko & Robert
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