藤森 哲也
フジモリ テツヤグループ
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不動産売買 トラブル相談例⑥【私道に面した不動産】
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先日、以下のようなご相談がありましたので、参考に紹介させていただきます。
『中古住宅の購入を検討しています。とある仲介業者から紹介されたのですが、1点気になる点があって、面している道路が私道で個人の方が所有されているとの説明でした。私道については以前住まわれていた方は何の問題もなかったとの説明を受けましたが、検討している場所がこの私道の突き当たりにあり、この私道以外には接していないため、ここを通るしかないのですが、この私道に面した家は他にも4軒あり、これまでトラブルはないようです。(他の4軒は昔から住んでいる方々で私は他県からの新参者です。)このまま仲介業者の言葉を信じて契約してしまっても大丈夫でしょうか?漠然とした質問ですみません。』
私道についてご心配されているようですが、
>『大丈夫でしょうか?』
というご質問に対して『分かりません』と言うのがお答えになるかと思います。
ただし、私道を継続して利用するにあたり『トラブルになる可能性はある』ということは申し上げておかなくてはいけません。
そのトラブルとしてよくあるのは
・私道の通行にあたり通行料を請求される
・オートバイや自動車の通行を制限される
・ライフラインの工事をするのに、私道を掘削する承諾を得られないetc
が挙げられます。
私道に面した不動産の売買において、注意しなくてはいけないのは、一般的に公道(国道・都道府県道・市区町村道など行政団体が所有している、または管理している道)とは違い、私道は道路といえども民間人(個人・企業を問わず)が所有している私有地になります。そして、その私有地は原則として所有者が自由に使っていいことになっています。また、私道を通行するには所有者の承諾を得ることが原則となります。しかし、所有者の承諾が無ければ私道を通行できないというのは現実的ではありません。
まず、民法第210条では『他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。』や、同法第211条により『他人の土地を通行するときは、損害が最も少ないものを選ばなければならない。』と規定されています。
これらのことから、私道の突き当たりにあると言う質問者様が公道に出るために、この私道を通行することは最も合理的な通行場所として法律により担保されると思います。
ただし、私道の通行自体の担保はされても、他人の土地であることは変わらないわけですので、そこを自由にしかも無料にて通行してよいわけではなく、その通行している土地の所有者に対していくらかの償金を支払う必要があります。
これが通行料と呼ばれるものです。
また、オートバイや自動車の通行制限やライフラインを敷設するための掘削の制限は可能であることも忘れてはいけません。
現状では、問題ないとのお話しのようですが、たとえ現私道所有者から口頭で了解を取り付けたとしても、気が変わって承諾してくれなくなる場合もあります。また、その所有者が変わった場合にも次の所有者が同様に承諾してくれるとはかぎりません。
また、現在は必要が無いかもしれませんが、ライフライン(ガス・上下水道)の工事が必要となった場合にも、工事業者は私道所有者の承諾が無ければ、工事をしてくれません。(緊急性がある場合を除いて)
私道部分について将来の安心材料を得たいとのことであれば、私道の通行や掘削についての私道所有者が承諾をすることを記した『承諾書』などの取得を前提で契約されるべきと思います。
ちなみに、
一般的な私道承諾書の内容としては、
1. 私道通行の承諾(※必要であればオートバイや自動車を含めたものにした方が良いでしょう。)
2. 私道掘削の承諾(※ライフラインの引き直しなどのためです。)
3. 通行・掘削は無償(※承諾にあたっての金銭負担がないこと)
4. それぞれの所有者が変わったとしても承諾内容が引き継がれる旨の記載(第三者継承)
これらを条件とする承諾書が取得できれば概ね良いのではないでしょうか?
(※その他の個々の条件については、当事者同士でお決めください。)
その他、ローンを利用される場合にも、金融機関によっては融資の条件として承諾書が必要になることがあります。これは、私道のみに面した不動産は、その私道部分に自分名義の持分を持っていないと担保価値に影響が出ることがあり、持分のある不動産に比べて査定額が低く設定されてしまうことがあるからで、必要額の融資を受けられなかったり、融資そのものが受けられないことがあります。
また、将来において不動産を売却する場合にも、この承諾書が生きてきます。
今考えるのは早計ですが、承諾書が無いことにより、なかなか売れない場合や値引きを求められることもあります。
これらのことを踏まえまして、将来のトラブル防止のため、承諾書の取得をお勧めします。
承諾書の取得ができなければ契約は無かったことにしてもらう(白紙解約)を条件として契約されてはいかがでしょうか?
以上、ご参考まで。
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