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村田 英幸
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閲覧数順 2024年04月18日更新

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株主代表訴訟の対象となる取締役の責任の範囲

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【コラム】 株主代表訴訟の対象となる取締役の責任の範囲

 株主代表訴訟の対象となる「責任」(会社法847条1項)の範囲について,学説上対立があり,下級審裁判例も分かれていましたが,近時,最高裁が初めての判断を示しました(最判平成21・3・10民集63巻3号361頁)。

 最高裁は,旧商法267条1項にいう「取締役ノ責任」には,取締役の地位に基づく責任のほか,取締役の会社に対する取引債務についての責任も含まれるとしました。最高裁は,取締役の会社に対して負担する一切の債務に及ぶとする全債務説や免除の困難な責任または免除の不可能な責任についてのみ代表訴訟を認める限定責任説にも立たないことを明らかにしました。最高裁の判旨で示された論拠は,①株主代表訴訟の制度は,取締役が会社に対して責任を負う場合,役員相互間の特殊な関係から会社による取締役の責任追及が行われないおそれがあるので,会社や株主の利益を保護するため,会社が取締役の責任追及の訴えを提起しないときは,株主が訴えを提起することができることとしたものであるから取締役の地位に基づく責任が追及される場合に限られないこと,②取締役が会社を代表して他の取締役に金銭を貸し付け,その弁済がされないとき,株主代表訴訟の対象が取締役の地位に基づく責任に限られるとすると,会社を代表した取締役の責任は株主代表訴訟の対象となるのに,貸付けを受けた取締役の取引上の債務は株主代表訴訟の対象とならないことになり,均衡を欠くこと,であり,いずれも全債務説が主張するところではあります。最高裁がなぜ取引債務についての責任に限定するのか明らかではありません。いずれにしろ,この立場によれば,会社との取引によって負担することになった債務がその対象に含まれますから,取引を解除した場合の原状回復義務,取引が無効であった場合の不当利得返還義務,取引によって生じた債務不履行による損害賠償義務は含まれると解されます。しかし,取引と無関係な会社の所有権に基づく請求,取締役としての地位に基づかない不法行為に基づく損害賠償請求については認められないと解されます。

 

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