名目的取締役の責任 - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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閲覧数順 2024年04月18日更新

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名目的取締役の責任

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【コラム】名目的取締役の責任

 名目的取締役とは,株主総会において選任され,れっきとした取締役であるものの,当該取締役と会社との間で取締役としての職務を果たさなくてもよい旨の合意がなされているなど,実際には取締役としての職務を果たしていない取締役のことをいいます。

 「取締役会を構成する取締役は,会社に対し,取締役会に上程された事項についてだけ監視するにとどまらず,代表取締役の業務執行一般につき,これを監視し,必要があれば,取締役会を自ら招集し,あるいは招集することを求め,取締役会を通じて業務執行が適正に行われるようにする職務を有する」(最判昭和48・5・22民集27巻5号655頁)とされ,この義務は非常勤の社外重役として名目的に取締役に就任した者であっても同様です(最判昭和55・3・18判タ420号87頁)。

ただし,その後の下級審裁判例には,重過失による任務懈怠がない,あるいは,任務懈怠と損害との間に相当因果関係がないなどの理由で名目的取締役の対第三者責任(会社法429条1項,当時は旧商法266条ノ3)を否定するものが少なくありませんでした(例えば,東京地判平成6・7・25判時1509号31頁,東京地判平成8・6・19判タ942号227頁など)。これらの下級審裁判例の背景には,旧商法下では,株式会社の取締役の員数が最低3名とされていたために,経営者が名目的取締役になるように親族,友人,従業員に依頼することが多く,やむなく取締役となった者にも取締役としての重い責任を課すことは酷であるとの事情がありました。

しかし,会社法の下では,取締役会を設置しない会社であれば,取締役は1人で足りるものとされました。

 そこで,株式会社の機関構成の自由度が増大した会社法の下では,再び名目的取締役の責任を肯定する判断がなされる可能性が指摘されています(江頭憲治郎『株式会社法第3版』468頁)。

 なお,名目的取締役の対会社責任(会社法423条)については,あまりこれまで問題とされておらず,職責免除合意(取締役としての職責を果たさなくてよいから名目的取締役に就任するという合意)の会社に対する効力を正面から肯定した裁判例として,東京高判平成15・9・30判時1843号150頁があります。この裁判例も「会社の債権者その他の第三者に対する関係や責任についてはともかく,会社に対する関係においては,善管注意義務や監視監督義務の責任を負わないものと解するのが相当である。」としています。

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