しなやかさで幸せを撒くヒト

彼女は、人並み以上にしなやかだった。

昨日、彼女は青年海外協力隊の一員として中南米のホンジュラスに旅立った。

二十歳の時、青年海外協力隊と出会った、参加すると決めた。

協力隊に行くため音楽教師の道を選んだ。

協力隊にいつでも行けるよう正教員の道は選ばなかった。

3年目に選ばれた。

国を背負い皇太子殿下に拝謁した。

出発直前でトラブル・・・行けなかった。

諦めようと思った・・・

諦めることが出来なかった。

応募出来るまでチャンスを待った。

応募した・・・落ちた。

応募した・・・落ちた。

応募した・・・落ちた。

30になった。

もう最後かなと思った。

天は見捨てなかった。

赴任地は首都からバスで１０時間。

水は週に二回しか出ない。

隣は世界で一番治安の悪い地域。

そんなことは平気だと言う。

何とかなるという。

それよりも、コンタクトの洗浄液と基礎化粧品2年分が重く、

荷重制限で荷物が持って行けないことを悩む。

彼女は明るい、そして可笑しい。

BBQで焼いて食べようと、うまい棒を100本買ってくるやつ。

壮行会で仲間が彼女のために曲を作った、合唱して贈った。

「これ、日本で一番流行ったる曲やでえと村で広めるわ」と本気で言うやつ。

普通だと意志を通した「強い人」と言えるだろう。

彼女を見ていると「強い人」というコトバがしっくりこない。

「しなやか」というコトバが浮かんだ。

動じるところと動じ無いこところのバランス。

ヒトとは違うそのバランスが絶妙だ。

きっと

彼女は、その「しなやかさ」で

ホンジュラスに幸せの種を撒いてきてくれるだろう。

行っといでえ。