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早わかり中国特許
~中国特許の基礎と中国特許最新情報~
第14回 中国特許の記載要件(2) (第2回)
河野特許事務所 2012年8月22日 執筆者:弁理士 河野 英仁
(月刊ザ・ローヤーズ 2012年6月号掲載)
4.実施可能要件
専利法第26条第3項は以下のとおり規定している。
「明細書には、発明または実用新型について、その技術分野に属する技術者が実施することができる程度に、明瞭かつ完全な説明を記載しなければならない。」
すなわち当業者が当該発明または実用新型を実施できる程度まで、発明または実用新型の技術方案及び実施形態を明確、詳細に記載し、発明または実用新型の理解と実現に欠かせない技術的内容を完全に開示しなければならない。
(1)実施可能要件違反の例
以下の場合は実施可能要件を満たさないとして拒絶される。
(i)明細書においては単に、任務及び/または発想をのみを記載しているか、若しくはある願望及び/または結果を開示しているにすぎず、当業者が実施できる技術的手段を一切記載していない場合
(ii)明細書には技術的手段を記載しているものの、当業者にとってはその手段が曖昧であって、明細書の記載内容に基づき具体的に実施することができない場合
(iii)明細書には技術的手段が記載されているものの、当業者が当該手段を利用しても、発明または実用新型で解決しようとする技術的問題を解決できない場合
(iv)出願の主題が複数の技術的手段からなる技術方案であり、その中の1つの技術的手段について、当業者が明細書の記載内容に基づいて実現できない場合
(v)明細書に具体的な技術方案を記載しており、実験上の証拠の記載がないにも拘わらず、当該方案が実験の結果により裏付けられてはじめて成立する場合。例えば、既知の化合物の新規用途の発明については、用途と効果を裏付ける実験上の証拠を明細書に記載しなければならない。
(2)ベストモード
ベストモードとは米国特許法で要求されている特許要件の一つであり、複数の実施形態のうち、発明者が考える最良の形態を明細書に記載しなければならないことをいう(米国特許法第112条(a))。
中国では審査指南に最良の形態を記載すべきと記載されているが(審査指南第2部分第2章2.2.6)、ベストモード要件は拒絶理由及び無効理由とはなっていない。
5.外観設計特許出願の記載要件
(1)提出書類
外観設計特許を出願する場合、願書、図面または写真、及び、外観設計に関する簡単な説明等の書類を提出しなければならない(専利法第27条)。なお、日本と異なり見本による出願はできない。
(2)願書の記載要件
願書には、創作者、出願人等の書誌的情報に加え、外観設計に使用する製品の名称を記載しなければならない(審査指南第1部分第3章4.1.1)。製品の名称は図面または写真に示された外観設計に合致し、正確かつ簡明に表明しなければならない。一般的に、製品の名称は国際意匠分類表の小区分に列挙された名称に合致させる。
(3)簡単な説明の記載要件
簡単な説明には実施細則第28条の規定に基づき以下のとおり記載する。
(i)外観設計に係る製品の名称
簡単な説明における製品の名称は、願書に記載した製品の名称と同一の物を記載すればよい。
(ii)製品の用途
製品の区分確定につながるような用途を記載する。用途が複数種存在する場合、対象製品の各用途を記載する。
(iii)設計要点
設計要点とは現有外観設計と区別される製品の形状・図案およびその組合せ、或いは色彩と形状、図案の組合せ、または部位を指す。すなわち、現有外観設計とは相違するデザインのポイントを簡潔に記載する。
(iv)代表図面の指定
設計要点が最も明瞭に示されている一枚の図面または写真を指定する。指定された図面または写真は、公報の発行に利用される。
(v)色彩
色彩について登録を受けようとする出願は、簡単な説明にこれを記述する。
(vi)図面の省略
例えばデザインが左右対称の場合、図面の一部を省略することができる。この場合、対称のため、または、同一のためにこれを省略する等、図面省略の具体的な理由を明記する。明記することが困難な場合、ある図面の省略だけを明記してもよい。例えば、大型装置に底面図がない場合、「底面図省略」と記述してもよい。
(vii)類似外観設計出願時の本外観設計の指定
専利法第31条第2項の規定に基づき、類似外観設計出願を行う場合、簡単な説明において、そのうちの1項を基本外観設計として指定しなければならない。
(viii)連続するデザイン
花布(はなぎれ)または壁紙等の平面製品は、必要に応じて図案が二方向に連続するまたは四方向に連続する等、限定する境界がない状況を記述する。
(ix)長尺物
細長いものは、必要に応じて細長い製品の長さについて省略の画法を採用した旨を明記する。
(x)製品の外観設計が、透明材料または特殊な視覚的効果を有する新たな材料からなる場合、必要に応じて簡単な説明にこれを明記する。
(xi)外観設計に係る製品がセット製品に属する場合は、必要に応じて各セット部品が対応する製品の名称を明記する。
なお、簡単な説明には、商業的な宣伝文句を用いてはならず、また製品の性能及び内部構造の説明に用いてはならない。
(4)権利範囲との関係
専利法第59条第2項は以下のとおり規定している。
外観設計特許権の権利範囲は、図面または写真に示されたその製品の外観設計を基準とし、簡単な説明は図面または写真に示された製品の外観設計の解釈に用いることができる。
すなわち、外観設計の権利範囲は図面または写真を原則としつつも、簡単な説明の記載が参酌される。従って簡単な説明の記載は権利範囲に影響を与えることに注意して記載すべきである。
以上
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