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河野 英仁
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中国特許判例紹介:中国における実用新型特許の創造性判断(第1回)

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中国特許判例紹介:中国における実用新型特許の創造性判断(第1回)

~商業的成功を根拠に創造性を肯定した事例~

河野特許事務所 2013年5月29日 執筆者:弁理士 河野 英仁

 

胡穎

                                  上訴人(原審原告)

v.

国家知識産権局特許復審委員会

                                  被上訴人(原審被告)

 

1.概要

 中国における権利化実務で避けて通ることができないのが創造性の問題である。創造性の判断に当たっては以下の3ステップ法が用いられる。

 

(1)最も近い現有技術を確定する。

(2)発明の区別特徴及び発明が実際に解決する技術的課題を確定する。

(3)保護を請求する発明が当業者にとって自明的であるか否かを判断する。

 

 さらに創造性を判断するにあたり、商業的成功が二次的要素として考慮される。本事件では医療機器に係る実用新型特許の創造性が争点となった。北京市高級人民法院は、商業的成功を考慮して創造性を認める判決[1]をなした。

 

 

2.背景

(1)特許の内容

 胡穎(原告)は2004年8月11日女性計画出産手術Bモード超音波画像診断器”と称する200420012332.3号(以下、332特許という)実用新型特許出願を行った。332特許は2005年8月17日公告された。

 

 争点となった請求項1は以下のとおりである。

請求項1:女性計画出産手術Bモード超音波画像診断モニターにおいて,既存のBモード超音波器(1)を含み,該Bモード超音波器のプローブ(2)とスペキュラム(3)とスナップフィットで取り付けられていることを特徴とする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 超音波画像診断モニターはメインボディ4、吸液瓶5、負圧吸引器電機6、超音波プローブ2、スペキュラム3及びポンプ7を備える。またスペキュラム3は前リーフ31及び後リーフ32を有する。医師は診断状況に応じてスペキュラム3に前リーフ31の上側または下側からスナップフィットにより超音波プローブ2を嵌め込むことができる。同様に後リーフ32の上側または下側からスナップフィットにより超音波プローブ2を嵌め込むことができる。

 

(2)訴訟の経緯

 2008年5月16日,恩普公司は本特許権について復審委員会に無効宣告請求を提出した。無効宣告請求の主な理由は以下の2つの現有技術により創造性を欠くというものである。

 

現有技術1:US 5251613 拡張器具及び光学測定部品を用いたスペキュラムを開示

現有技術2:CN1377245 超音波内スペクトルユニットを開示

 

 2008年12月19日、復審委員会は現有技術1及び2に基づき創造性を欠くとして、本特許権を全部無効とする決定をなした。

 

 復審委員会は、現有技術1を主引例とし、以下の相違点を認定した。請求項1に係る発明が超音波プローブを用いている点で、光学測定部品を用いる現有技術1とは相違する。また、請求項1に係る発明はスナップフィット方式により超音波プローブをスペキュラムに取り付けるが、現有技術1及び2にはその旨が記載されていない。

 

 まとめると、

1)測定部品のタイプが相違する;

2)固定連接の具体的な方式が相違する。

 

 復審委員会は相違点1に関し、以下のとおり判断した。

 光学測定部品及び超音波測定部品は共に、外科手術中に体内状況を観察するのに常用される器具であり、当業者が手術の需要に基づき行う通常の選択である。それゆえ現有技術1が拡張器具及びスペキュラムを結合した方案を開示している基礎上において,当業者は需要に基づき容易に、その中の具体的に使用されている光学内スペクトルユニットを例えば現有技術2で使用されている超音波内スペクトルユニットに代えることができ,この主の交換は予期できない効果をもたらすものではない。従って、当該相違点は請求項1に実質的な特徴及び進歩をもたらすものではない。

 

 相違点2に関しては以下のとおり判断した。

 スナップフィットは機械分野、さらには日常生活において常用される部品の固定連接方式である。それゆえスナップフィットによる固定連接方式を選択するということは、当業者にとって見れば容易に想到し、実現しうるものであり,上述した相違点は請求項1に係る技術方案の実質性的な特徴と進歩をもたらすものではない。

 

 以上の理由から復審委員会は、現有技術1及び2の組合せにより創造性を有さないと判断した。原告はこれを不服として北京市第一中級人民法院へ提訴したが、北京市第一中級人民法院は同様の理由により創造性を有さないとの判決をなした[2]。

 



[1]北京市高級人民法院判決 (2009)高行終字第1441 号

[2]北京市第一中級人民法院判決 (2009)一中行初字第911 号行政判決

 

(第2回へ続く)

 

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