早わかり中国特許:第20回 分割出願 (第1回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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対象:特許・商標・著作権

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早わかり中国特許:第20回 分割出願 (第1回)

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早わかり中国特許

~中国特許の基礎と中国特許最新情報~

第20回 分割出願 (第1回)

河野特許事務所 2013年2月7日 執筆者:弁理士 河野 英仁

(月刊ザ・ローヤーズ 2012年12月号掲載)

 

1.概要

 特許出願の審査段階において発明の単一性を満たさない場合、または、請求の範囲には記載していないが当初明細書に記載した範囲内で別途権利化する必要がある場合、分割出願を行う必要がある。

 分割出願の基本的枠組みは日本と同様であるが、分割の時期的要件において大きく相違するほか、補正と同様に分割することができる範囲については厳しく制限される。以下詳細を説明する。

 

2.分割出願に関する規定

 実施細則第42条の規定に基づき分割出願をすることができる。

 

第42 条

一件の特許出願に二つ以上の発明、実用新型または外観設計が含まれる場合、出願人は本細則第54条第1項に規定した期間の満了前に、国務院特許行政部門に分割出願をすることができる。ただし、特許出願がすでに拒絶され、取り下げられ又は取り下げたとみなされた場合は、分割出願をすることはできない。

 

3.主体的要件

 分割出願の出願人は原出願の出願人と同一でなければならない。同一でない場合は、出願人変更の証明材料を提出しなければならない。分割出願の発明者は原出願の発明者或いはその中の一部の発明者でなければならない。本要件を満たさない場合、補正命令がなされる。期間内に補正がなされない場合、出願は取り下げられたものとみなされる。

 

4.客体的要件

(1)記載事項と提出書類

 分割出願を行う場合、明細書の最初の部分、すなわち発明が属する技術分野の前において、本願がどの出願の分割出願であるかを記載しなければならない。具体的には、原出願の出願日、出願番号、発明の名称を記載しなければならない。

 その他、分割出願時には、原出願書類の副本を提出しなければならない。また優先権を主張している場合、原出願の優先権書類の副本も提出しなければならない(実施細則第43条第3項)。

 

(2)分割することができる範囲

 分割出願の内容は原出願の記載範囲においてしなければならない(実施細則第43条第1項)。出願当初の記載範囲を越えて分割出願を行った場合、専利法第43条第1項または専利法第33条の規定に反するとして拒絶される。

 分割出願の内容が出願当初の記載範囲内であるか否かは、第18回及び第19回で述べたとおり厳しく判断される。特に、他社製品をカバーするよう戦略的に分割出願を行うことがしばしば行われる。例えば、原出願では構成要件A、B及びCを有する装置にて権利を取得したが、イ号製品が構成要件A及びBを有する装置であったとする。この場合、分割出願にて構成要件A及びBを有する装置にて権利化を狙うこととなる。この場合、明細書には構成要件Cを除いた構成要件A及びBによっても発明の課題を解決することのできる装置が明示的に記載されていることが必要とされる。例えば、実施例中に、「本実施形態ではA,B及びCを用いた例を説明したが、A及びBを用いた装置であっても良い」等の記載が必要となる。

 筆者の経験では比較的自由に分割出願を行うことができる米国及び日本と比較して、中国における分割出願の要件は極めて厳しいと実感している。補正と同様に原明細書の記載内容に基づき、慎重に分割出願を行うことが必要とされる。

 

(3)分割出願の明細書

 分割後の原出願と分割出願の特許請求の範囲は、それぞれ異なる発明の保護を求めなければならない。ただし、原出願明細書と分割後の明細書とは同一内容でも良いし、異なる内容でも良い。例えば、分割前の原出願にA、Bの2つの発明があり、分割後、原出願の特許請求の範囲においてAの保護を請求する場合に、その明細書は依然としてAとBであっても良いし、Bを削除してAだけを残しても良い。

 また分割出願の特許請求の範囲においてBの保護を請求する場合には、その明細書は依然としてAとBであっても良いし、Aを削除してBだけとしても良い。

 

(4)分割出願時の種類変更

 分割出願は原出願の種類を変更してはならない(実施細則第42条第3項)。すなわち、中国専利法では出願変更制度が存在せず、分割出願時にも、発明特許出願から、実用新型特許出願または外観設計特許出願に変更することができない。

 

(5)分割出願の分割出願

 中国でも日本と同じく、一次分割出願(子出願)に対する二次分割出願(孫出願)を行うことができる。なお、後述するように孫出願は原出願(親出願)が知識産権局に継続している間及び原出願の特許付与通知後2ヵ月内しかできない点に注意すべきである。例えば親出願について既に拒絶査定が確定している場合、たとえ分割出願(子出願)が知識産権局に継続しているとしてももはや分割出願(孫出願)を行うことはできない。

 分割出願を提出する場合、願書に原出願の出願番号と出願日を記載しなければならず、また出願人がすでに分割出願をした出願について更に分割出願を提出する場合、原出願の出願番号の後の括弧の中に当該分割出願の出願番号を記載しなければならない。

 

(第2回へ続く)

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