- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
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対象:事業再生と承継・M&A
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第2 名義株
平成2年商法改正前においては,株式会社の設立のために最低7人の発起人が必
要であり,さらに発起人は最低1株を引き受けなければなりませんでした。そのた
め,現在でも実際の出資者でない者の名義になっている株式(名義株)が存在して
いることが少なくありません。
平成17年改正前商法の下では,承諾なく他人名義を用いた場合には,実際に出捐
をした名義借用者が株主になると解されていました(神作裕之『会社法判例百選』
21頁)。
これに対して,他人の承諾を得て,その他人名義を用いた場合については争いが
ありました。判例(最判昭和42・11・17民集21巻9号2448頁)は,名義によって
形式的に判断するのではなく,真に契約の当事者として申込みをした者が株主にな
るとして,実質的に判断します。その実質的株主の判断にあたっては,経済的出捐
の有無,名義貸与者と名義借用者との関係及びその間の合意の内容,株式取得の目
的,取得後の利益配当金や新株等の帰属状況,名義貸与者及び名義借用者と会社と
の関係,名義借りの理由の合理性,株主総会における議決権の行使の状況などを総
合的に判断します(東京地判昭和57・3・30判タ471号220頁)。
そこで,名義株の存在を放置していたような場合には,名義株主が実質的株主とされてしまう場合があります。そして,名義株主から株式買取請求がなされると会社の資金関係に大きな影響を及ぼすことになります。すなわち,事業承継が問題となる会社では,長年の経営努力の結果,株式の経済的な時価が発行価額の何倍もの評価になっていることがあり,株式買取資金が多額になる場合があるためです。このような事態を避けるためには,名義株主の特定と真の株主との不一致を解消しておく必要があります。具体的には,名義株主と実質的株主との間で,実質的株主が本当の株主であることを確認する念書を作成し,また株主名簿の書き換えをしておく必要があります。なお,株券発行会社では,株券の引き渡しも必要となります。
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