建売住宅の中で、建てる前に買主を見つけ間取りを自由に設計出来る方法で販売している「売り建て住宅」をよく見かけます。その際間取り図面を書くのは、販売担当の営業マンであることが多いです。
しかし住宅のプランニングと云うのは、本来は設計事務所の専売業務です。作成した間取りを最高の状態にする為に構造や使用材料を選定していかなければなりません。
本来、自由設計を謳うのであれば、間取りだけでなく仕様や建築主のライフスタイルまで踏み込んで、建築主に特化した家を目指さなければ、自由設計とは云えないと思います。
それを間取りだけ建築主の希望に合わせるイージーオーダーの様な事をしていては、快適な生活なんて全く保証されません。例えば、吹き抜けのあるリビングは天井が高くて気持ちよく、一階と二階を有機的に結合してくれますので、一階二階共有効に利用出来ます。また高いところに窓がつけられますので、家の奥まで陽射しが届き明るい家になるでしょう。
しかし、これを実現させようと思えば、断熱に対する知識・換気に関する知識・耐震性能に関する知識がなければなりません。
建築の知識のない、素人が間取りソフトを使って吹き抜けのある家を造れば、夏暑くて、冬寒い、サンマの臭いが家中に広がり、地震が来れば命の危険さえある家となるでしょう。
「売り建て住宅」は正式には建築条件付の分譲と云います。土地を購入出来る代わりに建物の契約も一緒にしてしまう契約形態です。この形態で契約すると設計施工が基本的な条件となってしまいますので、建築主が独自に設計事務所に依頼することが出来なくなってしまいます。
最近は不況で、余程条件の良い土地で無い限り、数区画の土地分譲では1~2区画売れ残ってしまうのが多い様です。そう云った土地を見つけて、建築条件を外して土地だけ売ってくれる様交渉してみましょう。
そう云った土地を建築主から直接の依頼で、設計・監理をお引き受けした事が何度もあります。一度建築条件を外してもらえるかどうか、交渉されると良いでしょう。
このコラムの執筆専門家
- 福味 健治
- (大阪府 / 建築家)
- 岡田一級建築士事務所
木造住宅が得意な建築家。
建築基準法だけでは、家の健全性は担保されません。木造住宅は伝統的に勘や経験で建てらていますが、昨今の地震被害は構造計算を無視している事が大きく影響しています。弊社は木造住宅も構造計算を行って設計しています。免震住宅も手掛けています。
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