住宅の設計という仕事がら、よく『家相』について問われます。
『家相』は、家の間取りのありようを分別する、言い伝えです。
私はよく、このように考え、お答えするようにしています。
たとえば
家相では 正方形・長方形のような正直な形の間取をよしとし、
凸凹 があるプランニングを『かける』とか『はる』といって
忌み嫌います。
凸凹の部分は 対風圧・対地震への応力が集中し、正直な形の
建物より、構造的に不利になりやすいです。
きっと昔から 台風や地震といった大災害のたび、凸凹の部分
が、大きな被害をこうむってきたのでしょう。
その経験が、言い伝えとして伝承されてきた、と考えられます。
構造力学の考え方が確立された現在でも、理にかなってますね。
裏鬼門の方角(南西)に 火 があることも 忌み嫌われます。
火 とはつまり 台所 です。
昔は台所にある生鮮品に西日が当たり、よく腐ったのでしょう。
合理的です。ただ、冷蔵庫が普及した現在ではどうでしょう‥。
といったように
単に伝承といえども、突詰めると、そこに合理性が見えてきます。
そこが 『家相』 の ひとつの本質でしょう。
ただ しかし、合理性がうかがえない事柄も家相にはあります。
単なる言い伝えとしかいえないこと。これも、否定できません。
われわれ 日本人は、
みんな、お正月になれば 初詣に出かけ神様に手を合わせます。
建物を建てるときには、地鎮祭で土地の神様に ご挨拶します。
信仰の儀式が習慣がとなり、すでに生活の一部となっています。
合理性だけでは、わりきれません。
合理性があること。必ずしも 合理性がある とは思えないこと。
どちらもある、ということを意識してみると、間取を考える上で
優先順位を付けたり整理整頓するさい、ひとつの基点とできます。
『家相』 と そのように向き合ってみては どうでしょうか。
このコラムの執筆専門家
- 岩間 隆司
- (東京都 / 建築家)
- 株式会社ソキウス 代表取締役
スマートに シンプルに 住う。 都市型住宅・集合住宅
都市の厳しい条件のもとでも、住宅や集合住宅を実現させてきました。住宅計画における制約は、生活空間に個性が生まれる、ひとつの契機として、ポジティブにとらえております。
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