米国特許:KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(9)(1回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許:KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(9)(1回)

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米国特許判例紹介:KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(9)(第1回)

~類似技術の範囲とは~

                   Innovention Toys, LLC,

                                         Plaintiff Appellee,

                                    v.

                 MGA Entertainment, Inc., et al.,

                                          Defendants- Appellants.

河野特許事務所 2011年6月15日 執筆者:弁理士 河野 英仁

1.概要

 KSR最高裁判決[1]においては、TSMテスト[2]を前提とする厳格ルールから、フレキシブルアプローチへと自明性の判断が変更された。つまり、常識(Common Sense)を含め技術分野において公知の事項及び先行特許で言及されたあらゆる必要性または問題もが、組み合わせが容易か否かの根拠となる。

 

 KSR最高裁判決後、数多くの事件において自明か否かの判断事例が示された。米国特許商標庁(以下、USPTOという)は、CAFCにて判示された代表的な事例を厳選し、新たなガイドライン(以下、2010KSRガイドライン)を、2010年9月1日付で発表[3]した。

 

 2010KSRガイドラインにおいては、「先行技術は当該発明の傾注分野(Field of Endeavor)に限られず、発明の目的に関し有用なものとして当業者により認識されている類似技術(Analogous Art)まで広く含まれる」事例[4]を紹介している。

 

 今回紹介する本事件ではレーザチェスボードゲームに関する発明の非自明性が争われた。地裁は先行技術として挙げられた仮想空間上での電子レーザゲームは非類似技術に該当するため非自明と判断した[5]。これに対し、CAFCは発明者が直面する課題を考慮すれば当該先行技術は類似技術に該当し、非類似技術と判断した地裁の判決を無効とした。

 

 

2.背景

(1)特許発明の内容

 Innovention Toys, LLC (以下、原告)はU.S. Patent No. 7,264,242(以下、242特許という)を所有している。242特許は、チェス風の光反射ボードゲーム及び該ボードゲームの遊技方法を権利化している。図1は242特許の代表図である。

 

図 1 242特許の代表図

 

 ゲームは、チェス形式のプレー面と、発射ボタンの操作によりプレー面上でビームを発射するために配置されるレーザ源と、レーザビームを導くために使用される鏡面及び非鏡面プレー用コマと、チェスにおけるキングに等しい非鏡面重要プレー用コマとを含む。

 

 ゲームをプレーする場合、プレーヤは交互に、プレー用コマを占領されていない隣接マス目に移動させるか、または、コマの1つをマス内で回転させる。コマを移動または回転させた後、プレーヤはレーザを発射し、レーザビームがプレー用コマの非鏡面に当たった場合、そのコマをゲーム盤から取り除くことができる。

 

 ゲームに勝つためには、プレーヤはレーザビームを敵の非鏡面重要プレー用コマに当てる、即ち照射する必要があり、これによりゲームは終了する。

 

(2)訴訟の提起

 原告はMGA(以下、被告)が販売する”Laser Battle”と称するボードゲームが242特許を侵害するとしてルイジアナ州連邦地方裁判所に提訴した。図2に被告製品を示す[6]。

 

図 2 被告製品

 

 原告はクレーム31-33, 39-41, 43-44, 48-50, 53-54の特許権侵害を主張した。代表的なクレーム31[7]は以下のとおりである。

 

31. 2人の対抗するプレーヤまたはプレーヤのチーム用のボードゲームであって、

 ゲームボードと、少なくとも一つの鏡面を有する移動可能なプレー用コマと、鏡面のない移動可能な重要プレー用コマと、レーザ源とを備え、

 自己の番では、レーザビームを避けることを目的とし、また敵の重要プレー用コマを照射するためにプレー用コマが動かされる。

 

 被告は、242特許は2つの先行技術により自明であると主張した。地裁は一の先行技術は非類似技術(non-analogous art)にすぎず、242特許は非自明であると判断した。被告はこれを不服としてCAFCへ控訴した。

 


[1] KSR Int’l Co. v. Teleflex, Inc., 127 S. Ct. 1727, 1742 (2007)、550 U.S. 398, 82 USPQ2d 1385 (2007)、詳細は以下を参照。
http://www.knpt.com/contents/cafc/2007.05/2007.05.htm

[2] TSMテスト:教示(Teaching)-示唆(Suggestion)-動機(Motivation)テストの略である。先行技術の記載に重きを置き、ここに当業者がこれらを組み合わせるための教示、示唆または動機が存在する場合に、自明であると判断する手法である。Al-Site Corp. v. VSI Int’l, Inc., 174 F. 3d 1308, 1323 (CA Fed. 1999)。なお、TSMテスト自体は依然として有効である。

[3] 2010KSR GuidelineはUSPTOのHPからダウンロードできる。

http://edocket.access.gpo.gov/2010/pdf/2010-21646.pdf

概要は、http://www.knpt.com/contents/cafc/2010.1101/2010.1101.pdf

を参照されたい。

[4] Wyers v. Master Lock Co., No. 2009–1412, —F.3d—, 2010 WL 2901839 (Fed. Cir. July

22, 2010)、Agrizap, Inc. v. Woodstream Corp., 520 F.3d 1337 (Fed. Cir. 2008)

[5] Innovention Toys, LLC v. MGA Entm’t, Inc., 665 F. Supp. 2d 636 (E.D. La. 2009)

[6] Amazon.comHPより2011年5月1日(http://www.amazon.com/Entertainment-Laser-Battle-Only-Target/dp/B002LJ21C8)

[7] 242特許のクレーム31

A board game for two opposing players or teams of players comprising:

a game board, movable playing pieces having at least one mirrored surface, movable key playing pieces having no mirrored surfaces, and a laser source,

wherein alternate turns are taken to move playing pieces for the purpose of deflecting laser beams, so as to illuminate the key playing piece of the opponent.

 (第2回へ続く)

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