米国特許:KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(9)(3回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許:KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(9)(3回)

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米国特許判例紹介:KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(9)(第3回)

~類似技術の範囲とは~

                   Innovention Toys, LLC,

                                         Plaintiff Appellee,

                                    v.

                 MGA Entertainment, Inc., et al.,

                                          Defendants- Appellants.

河野特許事務所 2011年6月21日 執筆者:弁理士 河野 英仁

4.CAFCの判断

争点:傾注分野に属さない場合でも発明者が直面する特別な課題に関連する場合、類似技術に該当する

 CAFCは、先行技術1は同一傾注分野に属さないものの、依然として発明者が直面する特別な課題に関連するため、類似技術に該当すると判断した。

 

 非自明性に関する米国特許法103 条(a)[1]は、以下のとおり規定している。

 

「発明が第102 条に述べたように全く同一のものとして開示又は記載されていないとき,特許を得ようとする発明の主題が全体としてそれに関する技術分野において通常の技術を有する者にその発明のなされた時点において自明であったであろう場合は特許を受けることができない。」

 

 自明か否かの判断においては、Graham 最高裁判決[2]において判示された下記事項を

まず検討する。

(a)「先行技術の範囲及び内容を決定する」

(b)「先行技術とクレーム発明との相違点を確定する」

(c)「当業者レベルを決定する」

(d)「二次的考察を評価する」(例:商業的成功、長期間未解決であった必要性、他人の

失敗、他人の模倣等)

 

 特許は米国特許法第282条[3]の規定に基づき有効と推定されるが、当該推定は、明確かつ説得力ある証拠により覆すことができる[4]

 

 CAFCは類似技術の範囲を判断する基準として以下の2つを判示した[5]

(i)当該技術が、明細書に言及された課題に関わらず、同一傾注分野ものであるか否か

(ii)当該技術が、発明者の傾注分野に属さない場合、当該技術が依然合理的に、発明者が関わった特別な課題に関連するか否か。

 

 CAFCは、(ii)の判断基準に従い、先行技術1が類似技術の範囲に属するか否かを判断した。

 

 242特許及び先行技術1は同一目的、すなわち、チェス風のレーザベースの戦略ゲームを含む特別なゲーム要素を対象としている。242特許は以下を開示している。

(i)ゲームボード及び様々なタイプのプレーヤコマを含むゲームの部品

(ii)プレーヤの番にどのようにコマがゲームボード上を動くかを含むゲームの特別なルール

(iii)ビームを用いて敵の重要プレーヤコマを照射するというゲームの究極目的

 

 一方、先行技術1も同様に、チェス風のレーザベースの戦略ゲームを創造するための特別な遊技コマ、規則及び目的を開示している。先行技術1は例えば、(1)それぞれが固有の能力を持つ様々なゲームコマを開示しており、(2)プレーヤの各番におけるルールを開示しており、(3)敵の王コマを排除する究極目的を開示している。

 

 よってCAFCは、同一傾注分野に属さないものの、242特許及び先行技術1は同一課題、すなわち、勝利できまた楽しむことのできる戦略ゲームを設計することという発明者が直面する課題を共通にしている。

 

 以上のことからCAFCは、先行技術1は類似技術の範囲内に属すると判断した。

 

 

5.結論

 CAFCは、先行技術1が非類似技術であると判断した地裁の判断を無効とし、先行技術1および先行技術2の組み合わせ、並びに、二次的考察を考慮して自明か否かを判断するよう命じた。

 

 

6.コメント

 傾注分野の異なる先行技術が、類似技術に該当するか否かの判断基準が明確化された。CAFCは先行技術の課題と、発明者が直面している課題との共通性を重視し、類似技術の範囲を特定している。

 

 本事件は地裁に差し戻され、先行技術1および2により自明といえるか否かが再度審理される。原告は二次的考察を主張しており、当該二次的考察をも考慮して総合的に非自明性が判断される。

 

 原告が主張した二次的考察は以下のとおりである。

(i)原告によるゲーム14万台の販売、原告が最小のマーケティング能力しかもたない小企業であること、ファンが世界中でクラブ及びトーナメントを開始した証拠に基づく商業的成功

(ii) ゲームの突然の成功及びメディア賞に基づく長期間未解決であった必要性

(iii)Outstanding Technology of the Year by the International Academy of Scienceによる産業賞、及び、Toy Industry Association’s 2007 Game of the Year awardに関する5傑に選ばれたこと

 

判決 2011年3月21日

以上

【関連事項】

判決の全文は連邦巡回控訴裁判所のホームページから閲覧することができる[PDFファイル]。

http://www.cafc.uscourts.gov/images/stories/opinions-orders/10-1290.pdf


[1] 米国特許法第103条(a)

A patent may not be obtained though the invention is not identically disclosed or described as set forth in section 102 of this title, if the differences between the subject matter sought to be patented and the prior art are such that the subject matter as a whole would have been obvious at the time the invention was made to a person having ordinary skill in the art to which said subject matter pertains.

[2] Graham v. John Deere Co., 383 U.S. 1, 17-18 (1966)

[3] 米国特許法第282条 特許は,有効であると推定される。特許の各クレーム(独立,従属又は多項従属形式の何れであるかを問わない)は,他のクレームの有効性とは無関係に有効であると推定される。従属又は多項従属クレームは,無効なクレームに従属している場合であっても有効であると推定される。

[4] Bristol-Myers Squibb Co. v. Ben Venue Labs., Inc., 246 F.3d 1368, 1374 (Fed. Cir. 2001)

[5] In re Bigio, 381 F.3d 1320, 1325 (Fed. Cir. 2004)

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