米国特許判例紹介: ターミナルディスクレーマーと再発行(第2回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許判例紹介: ターミナルディスクレーマーと再発行(第2回)

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 米国特許判例紹介: ターミナルディスクレーマーと再発行(第2回)

~ターミナルディスクレーマーは再発行特許では解消できない~

河野特許事務所 2013年3月7日 執筆者:弁理士  河野 英仁

 

In re Yamazaki

 

3.CAFCでの争点

争点:再発行特許出願により、ターミナルディスクレーマーを取り下げることができるか否か

 本事件ではターミナルディスクレーマーによりいったん成立した特許について、再発行特許出願を行うことにより、ターミナルディスクレーマーを取り下げることができるか否かが争点となった。

 

 

4.CAFCの判断

結論:特許登録後はターミナルディスクレーマーを再発行特許によって取り下げることはできない

 CAFCは、ターミナルディスクレーマーについて規定する米国特許法第253条を最初に分析した。米国特許法第253条の規定[1]は以下のとおりである。

 

第253条 権利の部分放棄

詐欺的意図なしに,特許に係る1のクレームが無効である場合は,残余のクレームがそれによって無効にされることはない。特許権者は,その権利が特許の全部に係るか,一部に係るかを問わず,法律によって要求される手数料を納付した上で,その特許における自らの権利の範囲を記載し,何れかの完全なクレームに関する権利の部分放棄をすることができる。当該権利の部分放棄は書面をもって行い,特許商標庁において記録されるものとし,また,その後,当該放棄は,権利放棄者及び当該人に基づいて権利主張をする者が所有する権利の範囲について原特許の一部であるとみなされる

同様の方法で,特許権者又は出願人は,付与された又は付与されるべき特許に係る存続期間の全部又は一部を放棄し又は公衆に提供することができる。

 

 米国特許法第253条はターミナルディスクレーマーと主題ディスクレーマーとの双方を規定している。米国特許法第253条では、第1に主題ディスクレーマーを明記し、その後、ターミナルディスクレーマーについても同様に適用される旨、規定している。ここで、米国特許法第253条は、主題のディスクレーマーにより、原特許(Original Patent)の一部分とみなされる旨、明確に規定している。

 

 従って、特許存続期間についてのターミナルディスクレーマーの効果も同様に、原特許の一部分となる。

 

 また、米国特許法第251条の規定[2]は以下のとおり規定している。

 

第251条 瑕疵のある特許の再発行

詐欺的意図のない錯誤があったために,明細書若しくは図面の瑕疵を理由として,又は特許権者が特許においてクレームする権利を有していたものより多く又は少なくクレームしていることを理由として,特許がその全部若しくは一部において効力を生じない若しくは無効とみなされた場合においては,長官は,当該特許が放棄され,かつ,法律によって要求される手数料が納付されたときは,原特許に開示されている発明について,補正された新たな出願に従い,原特許存続期間の残存部分を対象として特許を再発行しなければならない。

 

 米国特許法第251条に規定からも明らかなように、「原特許存続期間の残存部分」に対し適用されなければならない、ということが明確に規定されている。

 

 原告はターミナルディスクレーマーにより、2003年12月22日以降の原991特許の存続期間を排除した。そして、991特許が適切なターミナルディスクレーマーを伴って、一度発行された場合、当該ターミナルディスクレーマーはその結果として原特許の一部となる。USPTOが後に特許を再発行したとしても、原特許存続期間の残存部分が対象となり、本事件では、2003年12月22日以降の存続期間は排除されることとなる。

 

 このようにCAFCは、一度ターミナルディスクレーマーを行い登録された以上、再発行によって当該ディスクレーマーを取り除くことはできないと判示した。

 

 

5.結論

 CAFCは、ターミナルディスクレーマーを取り下げるために行った再発行特許出願を拒絶したUSPTO審判部の判断を維持する判決をなした。

 

 

6.コメント

 USPTOは、原告が取下嘆願書を提出しても、すぐに処理せず、約2年後に処理を行った。その間に原告は登録料を支払い、991特許を発行させてしまった。CAFCは、本事件は不可解で、原告は疑いようもなく不運であるが、原告には991特許を発行させないようにする義務が課せられていると述べた。

 

 CAFCは、最後に、再発行について規定する米国特許法第251条は、出願人または代理人によりなされる全てのミスを治癒するための万能薬ではなく、本事件は本規定が治癒できないミスを例示していると述べた。

 

 本事件では2018年までの存続期間が、2003年まで短縮されてしまった。実務上はターミナルディスクレーマーを行うことも多く、参考となる事件である。

 

判決 2012年12月6日

以上

【関連事項】

判決の全文は連邦巡回控訴裁判所のホームページから閲覧することができる[PDFファイル]。http://www.cafc.uscourts.gov/images/stories/opinions-orders/12-1086.pdf

 

 



[1] 35 U.S.C. 253 Disclaimer.

Whenever, without any deceptive intention, a claim of a patent is invalid the remaining claims shall not thereby be rendered invalid. A patentee, whether of the whole or any sectional interest therein, may, on payment of the fee required by law, make disclaimer of any complete claim, stating therein the extent of his interest in such patent. Such disclaimer shall be in writing and recorded in the Patent and Trademark Office, and it shall thereafter be considered as part of the original patent to the extent of the interest possessed by the disclaimant and by those claiming under him.

In like manner any patentee or applicant may disclaim or dedicate to the public the entire term, or any terminal part of the term, of the patent granted or to be granted.

[2] 35 U.S.C. 251 Reissue of defective patents.

Whenever any patent is, through error without any deceptive intention, deemed wholly or partly inoperative or invalid, by reason of a defective specification or drawing, or by reason of the patentee claiming more or less than he had a right to claim in the patent, the Director shall, on the surrender of such patent and the payment of the fee required by law, reissue the patent for the invention disclosed in the original patent, and in accordance with a new and amended application, for the unexpired part of the term of the original patent.

 

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