米国特許法改正規則ガイド 第3回 (第3回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許法改正規則ガイド 第3回 (第3回)

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米国特許法改正規則ガイド (第3回)

 第3回

河野特許事務所 2012年6月18日 執筆者:弁理士  河野 英仁

 

4.由来手続(AIAセクション3)

(1)概要

 由来手続とは、冒認出願があった場合に真の発明者を決定する手続をいう。

 先発明主義のもと存在していた先発明者を決定する手続、インターフェアランス手続は廃止された。先願主義への移行に伴い、由来手続(Derivation proceedings冒認出願手続)が導入された(135条)。つまり、発明が誰から生じたのかの由来を決定する手続がUSPTOにて行われる。なお由来手続は特許成立後においても裁判所にて行うことができる(291条)。由来手続は先願主義への移行と同じタイミング、すなわち、2013年3月16日に施行される。

 

(2)申立人及び時期的要件

 特許出願人は、USPTOに対し、後願のクレームの最初の公開日から1年以内に、由来手続を申し立てる事ができる(135条(a))。

 

(3)提出書面

 申し立ては、先の出願に記載された発明者が、申し立て人の出願(後願)に記載された発明者からのクレーム発明を由来としており、かつ、許可なく当該発明を主張する先の出願が申請されたと判断する根拠を詳細に説明しなければならない。(135条(a))

 

 具体的には以下の書面が必要となる(規則42.405)。

 (a)規則42.402(由来手続を申し立てることができる者)及び42.403(申し立ての時期)に従っていることを明示しなければならない。

 (b)申立人が以下の少なくとも一つのクレームを有していることを示さなければならない。

  (i)応答者のクレーム発明と同一または実質的に同一であるクレーム。

  (ii)応答者に対して開示された発明と特許性に関して区別できないクレーム。

 (c)申立人が由来手続を求める出願または特許を特定すべく、申し立ては十分な情報を提供しなければならない。

  (d)申立人は、発明が申立人の出願に記載された発明者から由来しており、かつ、当該発明をクレームする先の出願が許可なく申請されたことを示さなければならない。

 (e)由来発明に対する各申し立て人のクレームに関し、

  (i)申立人は、クレーム発明が、応答者に開示された発明と、特許性に関して区別できない理由を示さなければならない。

  (ii)申立人は、クレームがどのように解釈されるかを特定しなければならない。解釈されるクレームが米国特許法第112条第6パラグラフに基づき許可されるミーンズプラスファンクションまたはステッププラスファンクション限定を含む場合、クレームの解釈は、各クレームされた機能に対応する構造、材料または作用(acts)を記載した明細書の具体的部分を特定しなければならない。

 

(4)由来手続の審理

 長官が手続を開始する旨の決定をなした場合、PTAB(Patent Trial and Appeal Board)が発明の由来を決定する。具体的には申立人と応答者との間のトライアルが行われる(規則42.400)。審判官(APJ: administrative patent judge)は長官を代理して由来手続を開始する(規則42.408)。

 PTABは必要に応じて、出願または登録時の特許における発明者氏名を修正する(135条(b))。

 

(5)不服申し立て

 不服申し立ては、CAFCまたはバージニア東部地区連邦地裁に対して行う(146条,AIAセクション9)。なお、以前はコロンビア地区米国連邦地方裁判所U.S. District Court for the district of Columbiaに不服申し立て可能であったが、改正法により、バージニア東部地区連邦地裁に変更された。

 

(6)調停

 由来手続の手続当事者は、正しい発明者に関する当事者の契約を反映する書面説明書を提出する事により、調停を通じた事件の解決を図ることができる(135条(e))。

 

(7)仲裁

  手続当事者は米国法典第9条に基づき仲裁による事件の解決を図ることもできる(135条(f))。USPTOは仲裁当事者ではないが、仲裁のための期間を設定する(規則42.410)。当事者は仲裁人の選択及び仲裁人の行為に関し単独で責任を負う。

 

(i)仲裁の条件

 仲裁を行うためには以下の条件に従うことが必要とされる。

 (i)仲裁が米国法典第9巻に従って実行されること

 (ii)当事者が審判部に仲裁の意思を書面で通知すること

 (iii)仲裁における当事者間の契約は、

  (a)書面であること;

  (b)仲裁される争点を特定すること;

  (c)仲裁人の氏名を記載すること;

  (d)仲裁人の裁定が当事者を拘束し、かつその判断は審判部により登録されるという規定を設けること

  (e)契約の写しが履行日から20日以内に提出されるという規定を設けること

  (f)仲裁は審判部が決定した時間内に完了するという規定を設けること

 

(ii)仲裁の効果

 仲裁により裁定が下された場合、裁定当事者は裁定に矛盾する行為をとることができない(規則42.410(f))。裁定により当事者間の紛争が解決した場合、審判部は当該当事者に関する審決を正式に登録することができる。

 

(8)手数料

 手数料として400ドルを支払う必要がある(規則42.15(c))。支払が完了するまで、当該申し立てには申し立て日が認められない(規則42.404)。

 

(9)特許後の由来手続

 特許権者は、同一発明をクレームし、かつ、早い有効出願日を有する他の特許の権利者に対し、民事訴訟による救済を受けることができる(291条(a))。特許後はUSPTOにおける手続ではなく、民事訴訟を提起し当事者間での解決を図る必要がある。民事訴訟は最初の特許(冒認特許)の発行後1年の期間にだけ提起することができる(291条(b))(参考図4参照)。

 

 参考図4

 

(10)改正規則

改正規則

副部E 由来手続

一般

規則  42.400  手続;係属

 (a)由来手続は、本部の副部Aにおいて規定された手続の対象となるトライアルである。

 (b)審判部は、正当な理由により、由来手続の過程で生じた特許性に関する問題に対処する許可または指示を当事者に与えることができる。

規則  42.401  定義

規則42.2における定義に加えて、以下の追加定義が本副部における手続に適用される。:

 米国特許法第135条(e)における契約(agreement)または合意(understanding)は規則42.74における調停をいう。

 出願人は再発行出願人を含む。

 出願は元の出願及び再発行特許に係る出願の双方を含む。

 申立人とは、先の出願に記載された他の当事者が、申立人の出願に記載された発明者からのクレーム発明を由来としており、かつ、許可なく先の出願が申請したとする決定を申し立てる特許出願人をいう。

 応答者とは、申立人以外の当事者をいう。

規則  42.402  由来手続を申し立てることができる者

 特許出願人は由来手続を開始する申し立てをUSPTOに提出することができる。

規則  42.403  申し立ての時期

 由来手続の申し立ては、由来されたとする発明に対する先願のクレーム発明と同一または実質的に同一であるクレーム発明(後願)の最初の公開日から1年以内に提出しなければならない。

規則  42.404  由来手続の費用

(a)規則42.15(c)に規定する由来手続費用を申し立てに添付しなければならない。

(b)支払が完了するまで、当該申し立てには申し立て日が認められない。

規則  42.405  申し立ての内容

 (a)申し立ての理由。申し立ては以下に従わなければならない。:

 (1)規則42.402及び42.403に従っていることを明示しなければならない。

 (2)申立人が以下の少なくとも一つのクレームを有していることを示さなければならない。

  (i)応答者のクレーム発明と同一または実質的に同一であるクレーム。

  (ii)応答者に対して開示された発明と特許性に関して区別できないクレーム。

 (b)規則42.8及び42,22の要件に加えて、申し立ては以下に従わなければならない。

 (1)申立人が由来手続を求める出願または特許を特定すべく、申し立ては十分な情報を提供しなければならない。

  (2)申立人は、発明が申立人の出願に記載された発明者から由来しており、かつ、当該発明をクレームする先の出願が許可なく申請されたことを示さなければならない。

 (3)由来発明に対する各申し立て人のクレームに関し、

  (i)申立人は、クレーム発明が、応答者に開示された発明と、特許性に関して区別できない理由を示さなければならない。

  (ii)申立人は、クレームがどのように解釈されるかを特定しなければならない。解釈されるクレームが米国特許法第112条第6パラグラフに基づき許可されるミーンズプラスファンクションまたはステッププラスファンクション限定を含む場合、クレームの解釈は、各クレームされた機能に対応する構造、材料または作用(acts)を記載した明細書の具体的部分を特定しなければならない。

 (c)提示事項の十分性。由来の提示は、反駁されなければ、由来の決定をサポートする由来発明のやりとり、及び、無許可であることに言及する少なくとも一つの宣誓供述書を含む実質的証拠によりサポートされていない限り、十分でない。やりとりの提示は裏付けられていなければならない。

規則  42.406  申し立ての送達

規則42.6の要件に加えて、申立人は、以下に従い、申し立て書および申し立て書中で依拠する申し立て書及び添付書類を提供しなければならない。

 (a)申し立て書及びサポートする証拠は、先の出願の記録上の住所宛に送達されねばならない。申立人はさらに、送達可能と思われる他の住所が分かれば、その住所宛に応答者に対する申し立て書及びサポートする証拠を送達してもよい。

 (b)申立人が、対象特許または出願の記録上の住所に申し立て書及びサポートする証拠を送達できない場合、申立人は直ちに他の送達方法について検討すべく審判部に連絡しなければならない。

規則  42.407  提出日

 (a)完全な申し立て。由来手続を開始するための申し立ては、当該申し立てが以下の全ての要件を満たさない限り、提出日を得られない。

 (1)規則42.405に従うこと。;

 (2) 規則42.206において規定されたとおり、記録上の連絡先住所に申し立て書を送達すること;及び、

 (3)規則42.15(c)における開始費を伴っていること。

 (b)完全でない請求。申立人が完全でない請求を提出した場合、提出日は得られず、USPTOは、請求における欠陥が、完全でない請求に係る通知から1月、または、由来手続の申し立てを提出する法定期限の終了の日のいずれか早いほうまでに修正されない場合、当該請求を却下する。

由来手続の開始

規則  42.408   由来手続の開始

 (a)審判官(APJ: administrative patent judge)は長官を代理して由来手続を開始し、また必要に応じて由来手続を再開することができる。

 (b)追加の由来手続。申立人は当該由来手続について、特許または出願の追加を提案することができる。当該提案は、本部規則42.405に基づき要求される提示をせねばならず、かつ、当該提案が原申し立てでなされなかった理由を説明しなければならない。

由来手続の開始後

規則  42.409  調停契約

米国特許法第135条(e)に基づく調停または合意は規則42.74の目的に合致する調停である。

規則  42.410  仲裁

 (a)当事者はあらゆる事柄を決定するために拘束力ある仲裁を用いることができる。USPTOは仲裁の当事者ではない。審判部は特許性の問題に何ら拘束されることなく独立して特許性の問題を判断することができる。

 (b)審判部は、以下の場合を除き仲裁のための期間を設定しない、または、その他仲裁手続を変更しない。

 (1)仲裁が米国法典第9巻に従って実行される場合。

 (2)当事者が審判部に仲裁の意思を書面で通知した場合。

 (3)仲裁の契約は:

  (i)書面であること;

  (ii)仲裁される争点を特定すること;

  (iii)仲裁人の氏名を記載すること、または、仲裁人選択契約実行後30日を超えない日を提供すること。;

  (iv)仲裁人の裁定が当事者を拘束し、かつその判断は審判部により登録されるという規定を設けること。

  (v)契約の写しが履行日から20日以内に提出されるという規定を設けること。

  (vi)仲裁は審判部が決定した時間内に完了することを規定すること。

 (c)当事者は仲裁人の選択及び仲裁人の行為に関し単独で責任を負う。

 (d)審判部は仲裁が解決しない問題に決定を下すことができる。

 (e)審判部は以下の場合を除き仲裁裁定書を考慮しない:

 (1)当事者を拘束する場合;

 (2)書面による場合;

 (3)明確かつ的確な方法で仲裁される各争点及び各争点の処理に言及している場合;かつ

 (4)裁定日から20日以内に提出されている場合。

 (f)裁定が提出されれば、裁定当事者は裁定に矛盾する行為をとることができない。裁定により当事者の係争主題が解決する場合、審判部は当該当事者に関する審決を正式登録できる。

規則  42.411  発明の共通利益

審判部は、共同所有されている出願と特許または他の出願との間の由来手続における審決の開始を拒否することができ、または、既に開始している場合には、審決を発行することができる。

規則  42.412  審判部の記録に対する公衆の利用可能性

 (a)発行―

 (1)概要。審判部の決定は、本章1.11に従い公衆に公開されるファイル、または、本章規則1.211から1.221までに従い発行された出願に対するものである場合、当事者の許可なく一般閲覧が可能である。USPTOは、一般閲覧が可能な審判部の決定を自主的に公表することができる。

 (2)特別な場合の決定。本セクションのパラグラフ(a)(1)に基づき公表できない審判部の決定は、長官が特別な状況により確実に公表できると考えており、かつ、当事者が決定を公衆に供する決定の通知後2月以内に申し立て(当該申し立ては、当該決定が異議当事者の商業秘密または秘密情報を開示している理由を記載した書面にて異議を申し立てており、かつ、当該情報がその他一般閲覧されていない特異性に言及していること)を行わない場合、公表できる、または、一般閲覧が可能とされる。

 (b)手続の記録

 審判部手続の記録は、公衆に利用可能でない特許出願に関わる場合を除き、一般閲覧可能である。

  (2)本セクションパラグラフ(b)(1)に関わらず、審判手続における最終審判部決定または審決の後、審判部手続の記録は、関連するファイルが規則1.11に基づき公衆に利用可能である場合もしくは利用可能となった場合、または、関連する出願が本章規則1.211から1.221に基づき公表されている場合もしくは公表されるようになった場合、一般閲覧可能となる。

 

                                                              以上

 

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