- 塚本 有紀
- フランス料理・製菓教室「アトリエ・イグレック」 主宰
- 大阪府
- 料理講師
対象:料理・クッキング
- 黄 惠子
- (料理講師)
お菓子の授業で、ちょっとしたおまけで、ショートブレッドを作りました。
ショートブレッドといえば、赤いパッケージのウォーカーズブランドが有名。昔、会社員だった頃、いつも机の引き出しに入れてたなあ。そんなことを懐かしく思いだしながら、作ってみました。
ショートブレッドshortbreadのショートとは、「短い」という意味ではなくて、「さくさくした」という意味です。もともとはスコットランドがオリジナルのお菓子ですが(ウォーカーズもスコットランドの会社)、英国でももちろん非常にメジャーです。形は伝統的に3つ。フィンガーfingers、個人用のラウンドround、そして円形のペチコート・テイルズpettitcoat tailsです。これはあらかじめ8等分のラインを入れておき、焼き上がりすぐに包丁で切ります。茶色くなるまで焼いてはならず、焼き上がりは白に近いか、あるいは軽いゴールデンブラウンまでとか。
さくさくした食感をだすために、高い比率でバターが配合されます。小麦粉、バター、砂糖、塩だけで作り、つなぎとなる卵や水は使いません。自分で作るとほんとにもろもろ、さくさく、バターの風味もよく、塩味が小気味よい、おいしいおやつです。厚みがないとそれっぽくないので、苦労して分厚い棒状に成形しましたが、イギリスでは陶器の型があるのだそう。フードプロセッサーで一気に作り、ぽんと型に入れて形を取り、オーヴンで焼いたらできあがり。ショートがじつは「短い」を意味するのではないかと思うくらいに、短時間でぱぱっとできてしまう簡単さです。
ショートブレッドを作りながら、そういえば思い出したことがあります。それはフランスのブルターニュの地方菓子のガレット・ブルトンヌ。分厚くバターの風味豊かな分厚いクッキーです。ブルターニュBretagneはグレートブリテン島(フランス語ではGrande-Bretagne)から渡ってきたケルト人が作った国であり、ガレット・ブルトンヌはケルトの流れをくむ人々が好む配合だと解説されます。ケルト人とはアイルランド、スコットランド、ウェールズ、コーンウォル、コーンウォルから移住してきたブルターニュ人からなる民族のこと(wikipediaより)。そう、つまりこのケルト民族の好む配合の意味するところこそが、ショートブレッドなのではないかと思います。こんなところでフランス菓子とスコットランドのお菓子がつながっていたとは、本当におもしろいものです。
ショートという言葉の意味する「さくさく、もろもろした」食感は、バターの高い比率での配合によるものです。つなぎとなる卵や水を使わないため、小麦粉からグルテンが生成されることがあまりないことも大きな理由。バターの比率を高めれば、口に入れた瞬間にほろっと崩れ落ちるくらいにすることも可能です。とある生徒さんが教えてくれたところによると、昔スコットランドでは、花嫁の頭で円形のショートブレッドを割る風習があったのだそう。その時割れないと困ってしまうから、どんどんもろい配合になったのだとか! たぶん大方は花嫁の「頭上」で割るということでしょうが、想像するだけで笑えてしまいます。
ショートブレット
フィンガー10本分
強力粉75g+薄力粉25g
粉砂糖 27g
バター 75g
塩 0.7g
1. バターをポマード状にする。砂糖、塩を加えて混ぜる。
2. 篩った小麦粉を加えて混ぜる。
3. 7×20cm、厚さ1.5cmの長方形に伸ばす。
4. いったん冷蔵庫で冷やし固める。
5. 幅2cmに切り、フォークで軽く突く。
6. 天板に並べて170℃のオーヴンで15分ほど焼く。
チョコレートチップやオレンジピール、くるみなどを入れても。
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