米国特許判例紹介:特許権侵害と差止請求権(第5回) - 特許 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許判例紹介:特許権侵害と差止請求権(第5回)

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米国特許判例紹介:特許権侵害と差止請求権
   〜230億円の損害賠償と永久差し止め〜(第5回) 
   
河野特許事務所 2010年7月16日 執筆者:弁理士  河野 英仁

               i4i Limited Partnership, et al.,
              Plaintiffs- Appellees,
                 v.
               Microsoft Corp.,

 

              Defendant- Appellant.

(3)第3要件 両当事者に生ずる不利益(困難)のバランス
 第3要件における当事者間のバランスは、当事者間の規模、製品及び財源を総合的に勘案して判断される。CAFCは、原告のビジネスはほぼ449特許に係る製品に依存していると判断し、その一方で、被告が実施しているカスタムXMLは、イ号ソフトウェア内の数千もある機能のうちの一つに過ぎないと判断した。

 イ号ソフトウェア内のカスタムXMLは、449特許に基づいていることから、原告のマーケットシェア、収入及びビジネス戦略は、イ号ソフトウェアに大きく結びつく。その一方で、カスタムXMLは被告の大きなビジネスのごくわずかなものに過ぎない。CAFCは、被告がXML市場を買い占め、侵害によって市場を食い物にしたことから、侵害行為を継続する権利はないとした。そして不利益のバランスは原告の方が大きいと結論づけた。

(4)第4要件 公共の利益
 第4要件は、特許権者の権利を保護することと、差し止めの逆作用によって公共が受ける不利益とのバランス、及び、差し止めの範囲を総合的に考慮して判断される。差し止めの範囲が限定的であれば、実質的に公衆に対する影響は低減され、差し止めが肯定される。

 差し止めの対象を差し止めの効力発生日以降とし、それ以前にイ号ソフトウェアを購入したユーザを排除することで、公衆への影響を低減することができる。CAFCは、差し止め効力発生前のイ号ソフトウェアの購入者・ライセンス者を含むユーザを対象外とすることで、マーケット及び公衆に対する混乱を低減できることから、第4要件をも満たすと判断した。
                                   (第6回へ続く)

 
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