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対象:特許・商標・著作権
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米国特許判例紹介 (第3回)
方法クレームを複数当事者が分割実施した場合に侵害が成立するか
~寄与侵害に関する大法廷判決~
河野特許事務所 2012年11月26日 執筆者:弁理士 河野 英仁
Akamai, Inc., et al.,
Plaintiff-Appellant,
v.
Limelight, Inc., et al.,
Defendant Cross-Appellant.
(3)他の判例
大法廷は他の判例においても、誘発者は侵害の責任を負う旨判示している点を挙げた。
(i) Solva事件[1]
Solva事件において、被告は方法クレームの2ステップの内、第1ステップを実行し、当該方法の第2のステップを実行するよう顧客に頼んだ。裁判所は、被告が故意に方法の使用を引き起こす目的を持っていたことから、寄与侵害が成立すると判断した。
(ii) Peerless 事件[2]
Preeless事件においては、被告は方法クレームの内、最後のステップを除いて全てのステップを実行した。商品の購入者は、最後のステップを実行する。裁判所は、被告は、購入者が最後のステップを実施するということを知っていたことから、間接侵害の責任を負うと判断した。
(iii) Fromson事件[3]
Fromson事件では、Peerless事件と同じく、被告は、方法の最後のステップを除く全てを実行した。最後のステップは、被告の顧客により実行された。全ステップを実行した単一当事者は存在しないので、裁判所は、被告は直接侵害の責任を負わないものの、間接侵害の責任を負うと判断した。
Fromson事件では、以下の2点を判示している。
(a)複数の実行者が、個人的にまたは身代わりで、全ての構成要件(方法クレームのステップを含む)を実行することが直接侵害成立の要件である。
(b)誘発侵害は、たとえ直接侵害の責任を追う単一当事者が存在しない場合でも成立する。
(4)本事件への適用
大法廷は、特許法の規定、立法過程、連邦刑法及び過去の判例に基づき、単一当事者が方法クレームの全てを実施していない場合でも、誘発侵害の責任を負う旨判示すると共に、Mckesson事件、及び、Akamai事件においては以下のとおり判断するよう地裁に命じた。
(i)Mckesson事件
Mckesson事件において、以下の条件を満たす場合、Epicは、誘発侵害者となる。
(a)EpicがMckessonの特許を知っており、
(b)Epicが特許に係る方法クレームのステップの実行を誘発しており、かつ、
(c)これらのステップが実行されていること。
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(ii)Akamai事件 Akamai事件において、以下の条件を満たす場合、Limelightは誘発侵害者となる。 (a)LimelightがAkamaiの特許を知っており、 (b)Limelightが特許の方法クレームの一つのステップ以外の全てを実行しており、 (c)Limelightがコンテンツプロバイダに、クレーム方法の最後のステップを実行するよう誘発しており、かつ、 (d)コンテンツプロバイダが実際に、最後のステップを実行したこと。 |
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5.結論
大法廷は、侵害が成立しないとした地裁の判断を無効とし、地裁にさらなる審理を行うよう命じる判決をなした。
6.コメント
本事件により、方法クレームの威力が強まったといえる。コンピュータ関連発明ではネットワークを介して複数人が関与することによって発明の実施が完成することが多い。このような場合でも方法の各ステップの実行を誘発した者は、米国特許法第271条(b)に基づく誘発侵害の責任を負うこととなる。
クレーム作成に際しては、装置及び記録媒体クレームの作成はもちろんのこと、本判例に基づき方法クレームの作成も忘れてはならない。
判決 2012年8月31日
以上
【関連事項】
判決の全文は連邦巡回控訴裁判所のホームページから閲覧することができる[PDFファイル]。
http://www.cafc.uscourts.gov/images/stories/opinions-orders/09-1372-1380-1416-141710-1291.pdf
[1] Solva Waterproof Glue Co. v. Perkins Glue Co., 251 F. 64 (7th Cir. 1918)
[2] Peerless Equipment Co. v. W.H. Miner, Inc., 93 F.2d 98 (7th Cir. 1937)
[3] Fromson v. Ad-vance Offset Plate, Inc., 720 F.2d 1565 (Fed. Cir. 1983)
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