躯体が建上がると、内部の仕上工事が入るまで、常駐の職人さん達はねぐらとして使えます。そんな職人さん達が、昼間あまりにコキつかわれている私を見かねてか、その夜の酒盛に、よく招待してくれました。
私も飲みますが、彼等もあおるように飲みました。
現場ではタイル下地をおこす仕事をする左官屋のひとりが、彼の若い頃の仕事の自慢をはじめます。競技用プールの底の勾配を見事につけ、四方にある排水口から、排水時に全く同時に水がはけるように施工ができた、と。
目をキラキラと少年のように語る、彼の仕事に対する自信とプライドに、職人気質とはこういうことか、と感じます。
しかし、現場の厳しい工程は、彼等の心意気とは全く別の次元ですすんでいきます。
供給戸数のみが社会貢献と考える不動産業界の企業理論。
豊かさの基準が、個人の価値観によるものではなく、供給する企業の側から一方的におしつけられていた時代…
こころにつのるわだかまりから、いつしか建築家を目指しはじめていった、私のせつない修行時代でありました。
2000.12.19
このコラムの執筆専門家
- 岩間 隆司
- (東京都 / 建築家)
- 株式会社ソキウス 代表取締役
スマートに シンプルに 住う。 都市型住宅・集合住宅
都市の厳しい条件のもとでも、住宅や集合住宅を実現させてきました。住宅計画における制約は、生活空間に個性が生まれる、ひとつの契機として、ポジティブにとらえております。
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