リンカーン、チャーチルと「メンタルヘルス」 - 企業メンタルヘルス全般 - 専門家プロファイル

加藤 貴之
株式会社メンティグループ 代表取締役
東京都
メンタルヘルスコンサルタント

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リンカーン、チャーチルと「メンタルヘルス」

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職場のメンタルヘルス 連載より

(こんにちは。加藤貴之です。2011年3月号まで 『プラントエンジニア』誌 に連載させていただいている「職場のメンタルヘルス」記事に少し加筆したものです。今回は、2010年4月号掲載の記事です。よろしければ、お読み下さい。)

 

リンカーン、チャーチル、ガンジーに共通することは?

 

 リンカーン、チャーチル、ガンジー。この3人に共通することは何でしょうか。

 

 3人はそれぞれ、アメリカのため、イギリスのため、インドのために重要な仕事をし、国家に大きな貢献をしました。それぞれの国で、偉大な人物として、多くの国民から尊敬されていることは、3人の最大の共通点と言っていいでしょう。

 

  と同時に、この3人は、「うつ病」の経験を持っていたことでも共通しています。当時はまだ診断基準は確立していませんが、現代の診断基準で言うと「うつ病」に該当するとされています。また、3人の時代には、効果的な治療薬・治療法もありませんでしたから、3人は、生涯にわたって「うつ病が治らなかった」という点でも共通しています。

 

 この3人がうつ病で苦しんでいたという話は、欧米のメンタルヘルス教育ではよく取り上げられます。

 なぜ、よく取り上げられるのでしょうか。

 そこには、メンタルヘルス不調になった方、サポートする方、そして一般の方に対して、伝えたい3つの大切なメッセージがあるからです。

 

メンタルヘルスのための3つの大切なメッセージ

 

 1つ目のメッセージは、「心の病気になることを、恥ずかしいことだと考えないようにして下さい」というものです。

 心の不調を抱える人の中には、「世間体が悪いし、人には知られたくない」とか「自分が弱いからこんな状態になってしまったんだ」というような、恥ずかしさに似た思いを抱く人がいます。

 こうした気持ちを抱いていると、苦しくても人に言えなかったり、人に知られるのが不安で医療機関の受診を躊躇してしまったりすることが起こります。

 3人のエピソードが取り上げられるのは「心の病気は、リンカーン、チャーチル、ガンジーのような人でもなるもの。弱いからなるというものではありませんよ。恥ずかしいことではないですから、人に話して助けを求めて下さい」というメッセージを伝えるためです。

 

 2つ目のメッセージは、「心の病気になってしまったとしても、何か『できること』はあるはずですよ」というメッセージです。

 リンカーン、チャーチル、ガンジーは、うつ病に苦しめられていましたが、それでも自分の「できること」を精一杯にやって、偉大な業績を残しました。

 心の病気に限ったことではありませんが、何らかの病気になると、以前にできていたことができなくなったりして、「できないこと」ばかりに意識が行きがちです。

 この3人の偉人の話は「苦しいときでも、自分の『できること』に目を向けてみると、少し違った視界が広がってくる場合がありますよ」というメッセージを伝えるためのものです。

 

 3つ目は、「メンタルヘルスにあまりこだわりすぎないほうがいいですよ」というメッセージです。

 心の面でも、体の面でも、健康状態を保つことはとても重要なことですが、仮に健康状態が低下しているとしても、「充実した、満足度の高い、幸せな人生」を目指すこともできるはずです。実際、慢性病を抱えた方や、障害を持った方の中にも、満足度の高い充実した人生を歩んでいる方はいらっしゃいます。このような状態は、「ウェルビーイング」と呼ばれています。

 3番目のメッセージは、「不調を抱えたままでも、リンカーンやチャーチルのように、充実した、意義のある人生を目指してはどうでしょうか」という提案です。

 

すべての人の能力を活用するために

 

 ところで、もし当時の人たちが 「リンカーンは心の病気だから・・・」 「チャーチルは精神的な病気だから・・・」 という理由で彼らを差別し、社会から排除してしまっていたとしたら、どうなっていたでしょうか。

 おそらく、国家にとっても、国民にとっても大きな損失につながっていたのではないでしょうか。

 

 心の病気を抱えた人の中には、100%の力は出せないけれども、サポートがあれば40%、50%の仕事はできるという人もいます。本人が持っている潜在能力からすれば、レベルは大きく低下していることになりますが、しかし、40%、50%の仕事でも、他の人から見れば、十分にレベルの高い仕事である可能性もあります。

 もしかすると、現在の日本にもリンカーン、チャーチル、ガンジーのように「心の病気を抱えていても、偉大なことができる人」がいるかもしれません。その人たちの力を社会の中に取り込んで、不調者も含めて、みんなにそれぞれの「できること」をしてもらえば、社会にとって大きな力となるはずです。

 職場でも同じことが言えます。職場の管理職の方は、「この人は、不調になったから、働けない」と決めつけるのではなく、その人の「できること」に目を向ければ、労働力の有効活用につながる可能性も出てきます。本人や医師とよく相談することが前提ですが、症状の軽い人や回復が進んだ人で「働きたい」と希望している人は、うまくサポートして、職場の中で何らかの形で力を生かしてもらう。それは、本人の満足感・充実感の向上につながるだけでなく、職場にとっても「労働力を眠らせておかない」という点でメリットがあるはずです。

 

 「すべての人の能力を余すところなく活用する。そのために必要な支援をする」 ―― これが、職場のメンタルヘルス対策の大きなフレームワークであり、同時に、人事戦略やマネジメントにも共通するフレームワークではないかと私は考えています。

 職場のメンタルヘルス対策を進めるときには、すべての人の能力(タレント)を最大限に活用する 「タレント・マネジメント」 の視点を取り入れつつ、全体のフレームワークを作っていってはいかがでしょうか。

 

(『プラントエンジニア』 日本プラントメンテナンス協会発行 2010年4月号 職場のメンタルヘルス 第1回 加藤貴之著 より)

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