実は時間がない!IFRS導入とIT対応のリードタイム - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

原 幹
株式会社クレタ・アソシエイツ 
東京都
公認会計士

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対象:会計・経理

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実は時間がない!IFRS導入とIT対応のリードタイム

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国際会計基準・国際財務報告基準(IFRS) IFRSの要請と会計システム

IFRSでは3年分の決算書が必要って本当?→「本当です」



国際財務報告基準(以下IFRSと記述)の導入をめぐり、国内でも議論が活発になってまいりました。
「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」*1でも語られているとおり、日本では2012年頃に強制適用の判断が行われ、2015〜2016年頃に強制適用(いわゆるアドプション)が実施されるものと予想されています。

IFRS導入初年度は、実質的に3期分の決算情報が必要になります。*2たとえば、2016年3月期からIFRS導入をするならば

2013年3月期
IFRS準拠の損益データ(開始貸借対照表の作成に必要)
2014年3月期
開始貸借対照表+IFRS準拠の損益データ
2015年3月期
財政状態計算書
包括利益計算書
持分変動計算書
キャッシュフロー計算書
2016年3月期:財政状態計算書
包括利益計算書
持分変動計算書
キャッシュフロー計算書

と、これだけのデータや帳票を各年度ごとにそろえなければなりません(また、経過期間中は日本基準の決算情報もあわせて必要です)。準備期間を考えると、導入年度の4〜5年前から準備を始める必要があるわけです。

一方で、筆者の周辺で聞こえてくるユーザー企業さんからの声は
「結局のところ、システム対応はいつから始めればよいのか?」
といった疑問、または問いかけです。

筆者は、IFRS導入については現状このようなスタンスでお答えしています。
「IFRS任意適用*3する場合は今すぐにでも始めないと間に合わない」
「強制適用まで待つ場合は、今すぐ始めるか、世の中の動向を見ながらぎりぎりまで待ちましょう」

前者についてはいうまでもありません。
国際的な資金調達やグローバルオペレーションを行っている会社であればIFRSで開示するニーズがすでにあるわけで、そのような会社さんはすでに準備に着手していることでしょう。

後者については考え方が分かれます。
IFRSはたんに会計基準が大きく変わるというレベルにとどまらず、
「言語圏や文化を根本から変えるパラダイムシフトである」と筆者は理解しています。極論すれば、
「明日から仕事では日本語を忘れて英語で経理業務をこなしてください」
というぐらいのインパクトです。

仮にそうであるならば、とるべき道はふたつ。
「異文化に早い段階から慣れていき、いざその時になっても慌てない」
これは今の世界的なIFRS導入の流れに早めに追従するアプローチです。FASBとIASBが同調の動きをとる中、世界的にIFRS導入の流れは加速する一方です。国際市場での開示要請に応えるために早めにIFRS導入を進めることで、得られるメリットは非常に大きいでしょう。

「実務上の要請が喫緊の課題となるまで様子見」
これはより現実的なアプローチです。
現状ではまだ中間報告しか出ていないので、具体的な適用時期についてはまだ流動的です。大きな資金を投じて導入推進するのはリスキーといえます。他社の動向や各国の動きを見てから初めても遅くはありません。

このどちらかをとるかによって、
「今すぐ始める」
「世の中の動向を見ながらぎりぎりまで待つ」
のいずれかの方針に落ち着きます。

ITの対応が本当に必要になるのはいつから?



最初のユーザー企業さんの問いかけに戻ります。
「結局のところ、システム対応はいつから始めればよいのか?」

現実的な対応として強制適用の時期に合わせてスケジューリングしてみましょう。
先の例でいえば、
2013年3月期にIFRS準拠の損益データを作るためには2011年〜2012年にシステム化の対応を終えておく必要があります。

実は「ぎりぎりまで待つ」派で進めるとしても、実質的に2010年頃から情報収集と準備を進めておかないと間に合わないことがわかります。

一方で、2011年頃にはIFRSそのものの大改正が控えており、あまり早く着手してもその後の基準変更に追随するのが大変です。IFRS導入に向けたITの対応は通常のITプロジェクトと同様、

業務要件の定義

システム化要件の定義

基本・詳細設計

開発・テスト

といった工程をたどります。最初のステップである業務要件の定義は会計基準変更の影響を大きく受けます。ある程度作業が進んでから業務要件が変化すると、手戻りが起きて無駄なコストが発生してしまいます。

業務要件の定義に着手するためには、基準が確定してあまり今後大きな変更が行われないであろう、という見極めが必要になるでしょう。

また現在、「収益認識」や「財務諸表の表示」などのトピックについては重要な基準の改正を踏まえた議論が進んでいます。今後公開草案などが作られる過程をフォローしつつ、基準が確定するタイミングを見極めることが求められそうです。

IFRSの導入スケジュールはまだ流動的ですが、日々の情報収集を通じて「遅れをとらず、早すぎず」の対応をとれるようにしていきたいものです。
*1金融庁企画調整部会が6月16日に発表した日本でのIFRS導入に関する指針文書。現在、国内では唯一の根拠情報として広く参照されている。中間報告*2IFRS導入初年度においては、二期比較の財政状態計算書のほか、開始貸借対照表(opening balance sheet)の作成が必要となる。*3「中間報告」によれば、2010年3月期の年度の財務諸表からIFRSの任意適用を認めることが適当とされている。