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給付付き税額控除制度、導入に向け具体的検討始まる

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税制改正 平成22年度税制改正
わが国にもいわゆる負の所得税が導入されることになりそうだ。
今日19日18時から経済財政諮問会議が約1ヶ月ぶりに開催されるが、
安心できる社会の構築に向けた集中審議が行われているところであり、
その動向が注目されている。
19日4時30分時事通信社記事はこう報じた。

政府は18日、減税と低所得層への給付金を組み合わせた「給付付き
税額控除」制度の導入を検討する方針を固めた。
子育て世帯やワーキングプア(働く貧困層)にターゲットを絞った
負担軽減策と位置付ける。
社会保障番号と納税者番号の機能を併せた「安心保障番号」創設も検討し、
6月に決定する「経済財政改革の基本方針(骨太の方針)2009」に反映させる。
給付付き税額控除は、納税額が少なく、減税の恩恵が少ない低所得層や
子育て世帯に減税の代わりに給付金を支給する制度。
生活支援に加え、低所得者ほど税負担が重くなる消費税の「逆進性」を
緩和する役目も果たす。
給付の対象は年収約250万円以下の低所得層となる見通しだ。



ここでも何度か書いてきたが、いよいよ給付付き税額控除制度の導入が
具体的検討の段階に入ってきた。
森信茂樹中央大学教授が編集した「給付付き税額控除」(中央経済社2008)
によると、平成20年度の税制改正において、「低所得者支援、子育て支援、
就労支援、消費税逆進性対策」を目的に、議論することの意義が示されている。
(10ページ)

その原点は、英米で実施されたいわゆる負の所得税にあるわけですが、
この利点について、森信教授は、
「第1に、歳出行為である給付(社会保障支出)と税額控除を組み合わせる
ことにより、税制と社会保障との一体運営が可能となり、政策が効率的・
効果的に行われることになる。」
「第2の利点は、労働による稼得行為(労働所得)と控除額をリンクさせる
ことにより、労働インセンティブを高め、就業率の拡大につなげる効果をもつ。
他方で、働かなくても給付が受けられるというモラルハザードを減少させ、
「勤労を通じて所得を得る」というワークフェア思想のもとで、勤労する
低所得者層への支援策を確立することができる。
さらに、子どもの数に応じた経済支援が可能となり、これまで高齢者に
かたよっていた財政支援を現役世代に再分配する機能をもたせることができる。」
と指摘したうえで、OECDの2008年版対日審査報告書が以下のように
給付付き税額控除制度の導入を推奨していると指摘している。
「勤労税額控除制度は管理が難しく、不正行為を生む可能性があるものの、
低所得世帯を支援しつつ、勤労意欲の強化を促す制度である。
所得分配の裾野が比較的広い点、勤労所得に対する低い税率、ならびに
非雇用者に対する低い社会保障給付水準といった日本の特徴にかんがみれば、
こうしたアプローチは効果的であろう。」(43〜45ページ)

ただし、導入するためのハードルは高く、森信教授は以下の6点を指摘する。
「第1に、何を政策目標に掲げ、誰をターゲットにするのか、明確にする
必要がある。
当面、若年層を中心としたワーキングプアと呼ばれる人たちや、母子家庭に
対する就労を通じた貧困対策を念頭において検討していくことが必要と
思われる。」
「第2に、政策効果を十分につめ、ばらまき型の政策にならない工夫が必要である。
就労インセンティブの拡大策は、所得アプローチであり、財源の使い方として
効率的・有効的であるか十分検証する必要がある。
低所得就労者の給与に連動して給付することがかえって低所得への依存を
招かないか、企業側がその分の賃金引下げを行うことはないか等々つめるべき
点がある。」
「第3に、不正給付をどのように防止するかという点である。
この制度を導入している米国では、20%を超える不正給付が問題となり、
IRS(内国歳入庁)によるさまざまな改善が行われた。
20%という過小報告割合については、個人事業者の過少申告割合と比べると、
決して多いとはいえないことや、フードスタンプ制度よりは執行コストが
小さく効率的であるとの評価も行われている。
いずれにしても、制度の複雑性が過大申告・給付の最大原因とされ、制度の
簡素化が提案されている。」
「第4に、本制度は、税務当局が給付を行うことになるので、その体制作りが
必要となる。
税当局は、課税最低限以下の人についての所得情報を持っておらず、
社会保険事務所や地方自治体から情報提供を受ける必要がある。
また、本制度の趣旨からして、家族全体の所得をベースに設計しており、
その限りにおいて、世帯単位の所得を前提とした仕組みにする必要がある。
個人単位のもとで厳格な定義が行われている配偶者、扶養家族と、社会保障
制度との整合性を保つ必要性もある。
また、金融所得が一定以上ある者には、制度の適用を制限する必要もあるので、
分離課税となっている金融所得をどう補足するかという問題もある。
おりしも、社会保険庁と国税庁の間での年金未納者についての協力が検討
されており、さらなる協力を進める必要があるが、最終的には、現在の
霞ヶ関の縦割り行政を見直すことが必要となる。」
「第5に、児童手当、児童扶養手当、生活保護等の現行社会保障給付、
配偶者控除をはじめとする各種所得控除、最低賃金制度のあり方を根本的・
総合的に見直すことにより制度設計することが必要である。
ちなみに米国では、「最低賃金でフルタイムで働いた者がEITCを受ければ、
社会保障税引き後所得が貧困ラインを超えること」が目標とされた。」
「最後に、現在行われている「歳出・歳入一体改革」と整合性をとる形で、
つまり所得控除の削減等による財源を確保しつつ、税収中立、さらには歳出面
も含めた「財政中立」という考え方のもとで制度設計をする必要がある。」
(44〜47ページ)


こうやってみると、導入に向けたハードルがかなり高い。
しかし、やってみる価値は高い。
ただ、根本的な問題があわせて議論されなければならない。
税額控除制度の抜本的見直しというだけではなく、抱き合わせの形で
納税者番号制度を導入する方向でもあるのだ。

社会保険番号と統合すべきという見解は、我が師匠西野敞雄教授が
10年以上前から主張していた見解であるが、私は納税者番号制度を
入れるのであれば、このやり方しかあり得ないだろうと思います。
もっと言えば、住基カード番号とも統合して、システムの統合を図るべき
であると思います。

納税者番号制度導入論議はプライバシー権の問題とリンクしてきますので、
非常に難しい課題です。
ただ、税務行政の効率化のためには、必要不可欠の問題であり、統一された
番号管理を行うことができれば、課税逃れの防止に寄与することは間違いない。
国民背番号制によりお金の流れを全て確認できるようになれば、不正な
マネーロンダリングの全貌が明らかにされるとともに、借名口座の効果も
薄れていく。

ただし、すべてを国家が確認できるようになる分、プライバシー権の保護が
必要不可欠になる。
だからこそ、納税者番号制度が国民背番号制の恐怖と同じ文脈で語られる。

この問題を乗り越えることができなければ、絵空事になるのだろうが、
やってみる価値はありそうである。

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