政府税調が今年初めて開催されました - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士
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政府税調が今年初めて開催されました

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税制改正 平成22年度税制改正
昨日28日、今年に入ってはじめての政府税調(企画会合)が開催された。
提出された資料は14点にも上ったが、昨年末からここまでに決められた
閣議決定や経済財政諮問会議の内容ばかりで、税調独自の議論をする
気概のようなものはまったく感じられない内容であった。

29日13時の時点ではまだ議事録や記者会見録がアップされていないため、
詳しい内容まではわからないが、実にさびしいというか情けない内容である。
これでは、政府税調が独自の第三者機関である意味がなくなってしまうと
思うのだが、いかがなものだろうか。

唯一の救いが資料の14点目、
「税制抜本改革に向けた実務面の課題にかかる海外調査について(案)」
であるが、これは、5〜6月にかけて税調委員のメンバーで海外視察をする
というものでしかない。
主な調査内容として
・各国における最近及び今後の税制改正について
・「給付金つき税額控除」制度の実態について
・納税者番号制度(及びこれに類似する制度)について
・所得再分配状況及びその把握方法について
の4点が挙げられているが、ここで注目されるのは
「給付金つき税額控除」であろう。

森信茂樹中央大学教授が昨年中央経済社から同名タイトルで出版されており、
氏が主査を務める東京財団は2008年4月に
「日本型給付つき税額控除―給付付き児童税額控除の提言―」
を発表されております。

ご参考にして頂きたいところですが、昨年から急にクローズアップされてきた
論点で、わが国の税法学者にもいわゆる負の所得税については、専門家が
少ない分野なんですね。
我が師匠、西野敞雄国士舘大学教授は、10年近く前に国士舘法学で
イギリスにおける負の所得税の取組について、論文を発表されています。

でも、考えてみると、森信教授も西野教授も国税出身の研究者です。
わが国にはなかった制度への提言を純粋な研究者ではなく、国税出身の
研究者から出てくるというのも、実務家からすると若干の違和感を感じます。

それだけ優れたシンクタンクとしての機能を税務大学校が持っている
証拠でもあるんですけどね。

話が逸れましたが、他にはあまり見るべき中身がなかった1回目の会合で、
若干の失望感を感じておりますが、28日23時22分asahi.comの記事を
読むと、なるほどと思わなくもありません。
しかし、それでもやはり、独立の第三者機関としての役割を放棄している
ような気がしてなりません。
同記事は以下のように報じている。

首相の諮問機関である政府税制調査会の今年度初会合が28日開かれた。
今後の審議の進め方について議論したが、香西泰会長は海外視察の実施を
決めるにとどめ、テーマの設定などは見送った。
会合後の記者会見で香西会長は「内閣が代わるかどうかわからない。
何をというのは、もう少し展開を見てやりたい」と述べ、総選挙の結果
などを見極める姿勢を示した。
香西会長は「新しい問題を提起しておくとか、できればそうしたい」
としたうえで、「そういうことをやっても、内閣も違っていて誰も答申だ
といっても見てくれないかもしれない」と語った。



首相の諮問機関としての存在であることは確かではあるものの、少なくとも
現職の委員は、麻生首相から諮問を受けて税制改正論議を深めているはずです。
内閣が変わったら答申を出しても意味がないというのであれば、
現職の麻生首相からの諮問を放棄しているとしか考えられないのであって、
それこそ、職場放棄である。
これ以上の税金泥棒はない。
それも税のあり方を議論する政府税調である。

冗談では済まされない。
財政の専門家ではあっても税の専門家ではない香西会長では致し方ない
のかもしれないが、そうならば会長を変えなければならないのではないか?
それこそ任命責任も問われかねない事態であろう。

その程度の認識で税調が運営されるのであれば、税調を解散して、
経済財政諮問会議に一本化するほうが効率的だし、経費削減できる
のではないだろうか?

税調の役割というものは、その程度のものではないと信じたいものです。
高い見識を持って、諮問した首相の意向に反してでも、あるべき税制の
全体像を議論すべきではないのか。

それが国家100年の計につながるのではないか。

昨日の会議は非常に残念でならない。