- 平 仁
- ABC税理士法人 税理士
- 東京都
- 税理士
対象:会計・経理
全米自動車労組(UAW)が55%、伊フィアットが35%を保有する形で
決着するようだ。
これで、米政府から公的資金を得て、再建を図るようだ。
28日12時23分トムソンロイター記事はこう報じた。
ウォールストリート・ジャーナル紙(電子版)によると、米自動車大手
クライスラーと全米自動車労組(UAW)は、最終的にUAWが新生クライスラー
株の55%を保有することで合意した。
イタリアのフィアットは「最終的に」新生クライスラー株の35%を保有、
米政府と有担保債権者は同10%を保有する計画という。
27日午後に開かれた労組幹部の会合で、計画の概要書が配布された。
UAWは26日夜、クライスラーとの合意を発表。
UAW組合員による批准は29日までに終える必要がある。
クライスラーは、UAWが管理する退職者向け医療保険基金に対し、
45億8700万ドル相当の社債を割り当てる。
さらに2010年と11年に現金3億ドルを払い込む。
2019年─23年には払い込み額を最大8億2300万ドルに引き上げる。
同基金は「かなりの規模」のクライスラー株も受け取り、クライスラーの
取締役会に代表を派遣する。
将来的には、取得したクライスラー株の売却を認められる。
フィアットは、クライスラーの米国工場で少なくとも小型車1車種を
生産することに合意。
クライスラーは、フィアットの投資が80億ドルに相当し、UAW組合員
4000人の雇用を新規に創出できるとみている。
先日、アメリカ政府はGMに対する公的資本投入を決めたが、その際にも
クライスラーの問題に触れ、フィアット及びUAWとの交渉が成立しない
限り、支援をしない旨を明らかにしていた。
フィアット及びUAWとの合意が明らかになったことで、クライスラーも
公的資金の投入を受けられる準備ができたということになろう。
ただ、私は、これがいい方向に行くとは考えていない。
自動車ビッグスリーが環境対応車の開発に本気で着手するであれば、
将来展望も開けるであろうが、従来からのアメリカ的な大量消費社会を
前提とした将来展望を見直さない限り、彼らの未来は閉ざされつつあると
考えているからだ。
確かにクライスラーを破綻させることは、アメリカ経済への影響が大きく、
失業者問題に苦しむことになろうが、ここは毅然とした態度で、
経営計画の中身を吟味した上での公的資本投入を期待したいところですね。
この構図はわが国にも当てはまる。
リーマンショック以後の急速な景気低迷は、投機マネーに頼ったミニバブル
が弾けたのに過ぎないのであって、日本の実体経済はあまり傷つかなかった
ように思う。
しかし、バブル経済の傷跡から完全に回復していないわが国経済は、
内需拡大を果たせていないため、輸出産業の低迷はそのままわが国経済の
停滞を生んでしまう。
その点では、アメリカ経済の構造と明らかに異なる点であろう。
クライスラーの今後の展開は、わが国の経済運営にどう影響するのか。
注目されるところですね。