- 中野 博
- 株式会社エコライフ研究所 代表取締役
- 埼玉県
- 経営コンサルタント
対象:ビジネススキル
100人いても1対1の関係**
「あなたは上司に重要な報告をする時でもお酒を飲みながら話をする時でも
言葉つかいは変えないと思いますか?」
「はい」と答えても、おそらく姿勢は若干違うのではなかろうか。
あるいは視線やジェスチャーなども微妙に違っているのかもしれない。
これは、やはりそれぞれ場面が違うからに他ならない。
言葉づかいは上司に対しては同じであっても、話す目的が違えばあなたは
知らず知らずのうちに緊張をしていたり、姿勢や目線、ジェスチャーが違っているのである。
これらは、すべて心理学的にも解明されている。
それでは、「10人の前と、100人を前にした時ではあなたは誰を見て話しますか?」
人数が通常の会話と違い、10人を超えるくらいになると、人によっては目線が定まらず、
きょろきょろと忙しく見渡しすぎたり、同じ人ばかり見る傾向にある人も多い。
10人をひとつの塊のように錯覚して話をすることは、聞き手の心を開くことはできず、
あなたの話を受け入れてくれないことさえあるのだ。
たとえ、10人程度の会議であろうと、100人を超える大集会であろうと、聞き手が
話し手に求めるのは、気楽なおしゃべりをする時の話し方なのである。
つまり、聴衆の中のひとりを相手に話すのと同じような普通の話し方こそが、
聞き手の心をつかまえるのである。
もちろん、ひとりと話す時と同じような話し方とは言っても、力の入れ方は同じではない。
もし同じようにしようとすれば、聴衆にはほとんど聞き取れないであろう。
やはり10人に話す時は1対1で話すよりもはるかに多くのエネルギーを使うし、
それなりのテクニックも必要なのだ。
例えば、聴衆の中から、後方の一番飲み込みの悪そうなだれかをひとり選び出し、
その人に向かって話す。他の人がいることはすっかり忘れ、その人と「対話」をするのだ。
その人があなたに質問し、あなたはそれに答えているのだと思いましょう。
もしもその人が立ち上がってあなたに話しかけ、あなたもそれに応じるとしたら、
あなたはすぐさまもっと会話口調で、もっと自然に、もっと率直に話さないわけにはいかない。
だから、その通りのことが現実に起こっているのだと想像して話すこともひとつの技である。