鎖骨のない動物
私たちの胸には「鎖骨」がついています。きれいな鎖骨の女性は、ネックレスをしてもより上品にみえます。その鎖骨にはどんな役割があるのでしょうか。
鎖骨は、肩甲骨を体につなげる役割を持っていますが、実は鎖骨のない動物も結構いるのです。鎖骨がない動物は、腕は歩行にのみ使っています(もちろん例外もありますが)。それに対して鎖骨を持っている動物は、腕を器用に使って生活しています。例えばリスやネズミなどの齧歯類も、手でエサを持ち運んだりしますし、猿にいたっては手で枝にぶら下がったり、子供を抱きかかえたりします。そこで鎖骨の役割は、腕、とくに肩の三次元的な動きを得るためだと考えられます。
猿と人の鎖骨の違い
猿と人間では、鎖骨のがかなり違います。猿は前に向かってついているのに対し、人間は外向きについています。このことで人間は、猿よりも体の横で腕を動かせる範囲が格段に広くなっています。
また、人では腕を大きく動かしたときに血管や神経が圧迫されないように、鎖骨の下を血管と神経を通すことで保護しています。しかし、時に鎖骨が下がりすぎてしまうと逆に鎖骨が圧迫の原因となり、腕の痺れや痛みを起こすことがあります(肋鎖症候群=胸郭出口症候群のひとつ)。
また鎖骨は、転倒して肩から地面に打ち付けたときなど、簡単に骨折してしまうことがあり、人体で骨折しやすい骨の一つにあげられています。
骨折しやすい骨
よく骨折する場所がいくつかあります。鎖骨もそのひとつ。これまで自転車が好きな患者さんが二人ほど、肩から落車して鎖骨を折っています。また、スキーで転倒して鎖骨を折った方も。
鎖骨はおもしろい
カイロプラクターは、ある意味「骨オタク」です。鎖骨がどうしてそこに存在するのか、いろいろ考えています。鎖骨は、発生学では手足の他の骨と違って体の表面に発生する「皮骨」に分類されます。脳頭蓋と同じです。
大学で発生と骨学を教えてくれた先生は、解剖学者の三木成夫先生のお弟子さんだった方で、骨の発生にまつわるおもしろい話をいろいろと聞かせてくださいました。鎖骨は、とても敏感でセクシャルな骨なんだそうです。それは、発生学的に考えたら当たり前なことで、皮膚から発生してくるからなんですね。
さらに、鎖骨を外層から被う皮筋である広頚筋は、顔の表情筋と同じ顔面神経支配です。鎖骨は、感情の変化を写し出しているともいえるかもしれません。
鎖骨がない人
生まれつき、鎖骨を持たないで生まれてくる人がいます。これは、鎖骨を作る遺伝子を持たないとそうなるのだそうで、「鎖骨頭蓋異形成症」といいます。その人は、鎖骨がないので両肩がくっつくほど肩を極端にすぼめることができるため、簡単に縄抜けできるそうです。ちなみに、頭蓋骨も骨化しないので、大人になっても大泉門(赤ちゃんの頭のてっぺんでペコペコするところ)が閉じないで残ります。
時にKeyとなる鎖骨の治療
頚部や肩の症状に対して、鎖骨を治療することで急激に改善することがあります。鎖骨は、上半身の治療における「シークレットボーン」です。
吉川祐介 Wecareカイロプラクティック&ナチュラルケア