特定商取引法における業種ごとのクーリングオフ制度と交付書面の比較 - 契約トラブル・クーリングオフ - 専門家プロファイル

遠山 桂
遠山行政書士事務所 
岐阜県
行政書士

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対象:消費者被害

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特定商取引法における業種ごとのクーリングオフ制度と交付書面の比較

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消費者契約

 


 

特定商取引法は消費者保護を目的とする法律であり、7つの取引類型について行政規制やクーリングオフなどの民事ルールが定められています。その対象となる取引は、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務、業務提供誘引販売取引、訪問購入の7つです。

BtoC型の消費者取引を行う事業者については、特定商取引法の規制を受けるケースが多く、その内容を把握しておかなくてはなりません。特にクーリングオフ制度や契約内容等の記載をする交付書面(契約書など)については、業種や取引によって異なることもあり、正しく理解する必要があります。

そこで、特定商取引法における取引ごとのクーリングオフ制度と交付書面の違いについて以下に解説します。

 

クーリングオフ制度の違い

訪問販売については、8日間のクーリングオフ期間があります。

このクーリングオフ期間の起算日は、消費者が契約書面を受領した日となります。

クーリングオフの効力は消費者が通知書を投函した日に発生する発信主義です。

返品送料などの原状回復に要する費用は事業者負担です。

消費者が商品を使用した場合でも、事業者は商品の価値減耗分を消費者に請求することはできません。(損失分は事業者負担)。

 

通信販売については、クーリングオフ制度はありません。

ただし、8日間の法定返品権があります。

この法定返品権の起算日は、消費者が商品を受領した日となります。

法定返品権の効力は消費者が投函した通知書が事業者に到着した日に発生する到達主義です。

返品送料などの原状回復に要する費用は消費者負担です。

消費者が商品を使用した場合には、事業者は商品の価値減耗分を消費者に請求することができます。(損失分は消費者負担)。

また、事業者が返品に関する特約を事前に表示した場合は、法定返品権の内容よりもその返品特約が優先適用されます。(返品特約に「返品には応じない」旨が記載されていれば、事業者は返品を拒絶することが可能になります)。

 

電話勧誘販売については、8日間のクーリングオフ期間があります。

このクーリングオフ期間の起算日は、消費者が契約書面を受領した日となります。

クーリングオフの効力は消費者が通知書を投函した日に発生する発信主義です。

返品送料などの原状回復に要する費用は事業者負担です。

消費者が商品を使用した場合でも、事業者は商品の価値減耗分を消費者に請求することはできません。(損失分は事業者負担)。

 

連鎖販売取引については、20日間のクーリングオフ期間があります。

このクーリングオフ期間の起算日は、消費者が契約書面を受領した日もしくは商品を受領した日のうち遅い方の日付となります。

クーリングオフの効力は消費者が通知書を投函した日に発生する発信主義です。

返品送料などの原状回復に要する費用は事業者負担です。

消費者が商品を使用した場合には、事業者は商品の価値減耗分を消費者に請求することができます。(損失分は消費者負担)。

 

特定継続的役務提供については、8日間のクーリングオフ期間があります。

(特定継続的役務提供には、学習塾、語学教室、家庭教師、エステティック・サービス、結婚相手紹介サービス、パソコン教室の6業種が指定されています。)

このクーリングオフ期間の起算日は、消費者が契約書面を受領した日となります。

クーリングオフの効力は消費者が通知書を投函した日に発生する発信主義です。

返品送料などの原状回復に要する費用は事業者負担です。

消費者がサービスの利用をした場合には、事業者はサービスの受益分を消費者に請求することができます。(受益分は消費者負担)。

 

業務提供誘引販売については、20日間のクーリングオフ期間があります。

このクーリングオフ期間の起算日は、消費者が契約書面を受領した日となります。

クーリングオフの効力は消費者が通知書を投函した日に発生する発信主義です。

返品送料などの原状回復に要する費用は事業者負担です。

消費者が商品・サービスを使用した場合には、事業者はその価値減耗分を消費者に請求することができます。(損失分は消費者負担)。

 

訪問購入については、8日間のクーリングオフ期間があります。

このクーリングオフ期間の起算日は、消費者が契約書面を受領した日となります。

クーリングオフの効力は消費者が通知書を投函した日に発生する発信主義です。

返品送料などの原状回復に要する費用は事業者負担です。

クーリングオフ期間内に事業者が購入した物品を第三者に転売した場合には、消費者の求めに応じて事業者は物品を買い戻すなどの原状回復の責任を負います。

 

交付書面の違い

訪問販売については、事業者が消費者に対して、勧誘時には申込書面を交付し、契約時には契約書面を交付することが義務化されています。

ただし、申込みと同時に契約を締結する場合には申込書面の交付を省略することができます。

交付書面にはクーリングオフの告知文を記載する義務もあります。

訪問販売では、中途解約についての定めはありません。

 

通信販売については、消費者が主体的に情報検索をして契約をするものですから、不意打ち性は無く、事業者に書面交付の義務はありません。

ただし、消費者が前払いをして申込みをした場合で、事業者が商品の即納が出来ないときは、納期などを記載した契約承諾の書面(メール等)を交付しなくてはなりません。

また、通信販売にはクーリングオフ制度はありませんが消費者には法定返品権が認められています。(事業者が返品特約を事前に掲示する場合は、その返品特約の内容が優先適用されます)。

通信販売では、中途解約についての定めはありません。

 

電話勧誘販売については、事業者が消費者に対して、勧誘時には申込書面を交付し、契約時には契約書面を交付することが義務化されています。

ただし、申込みと同時に契約を締結する場合には申込書面の交付を省略することができます。

交付書面にはクーリングオフの告知文を記載する義務もあります。

電話勧誘販売では、中途解約についての定めはありません。

 

連鎖販売取引については、事業者が消費者に対して、勧誘時には概要書面を交付し、契約時には契約書面を交付することが義務化されています。

概要書面と契約書面は両方とも交付することが義務化されており、交付の省略をすることはできません。

交付書面にはクーリングオフと中途解約についての告知文を記載する義務もあります。

 

特定継続的役務提供については、事業者が消費者に対して、勧誘時には概要書面を交付し、契約時には契約書面を交付することが義務化されています。

概要書面と契約書面は両方とも交付することが義務化されており、交付の省略をすることはできません。

交付書面にはクーリングオフと中途解約についての告知文を記載する義務もあります。

 

業務提供誘引販売については、事業者が消費者に対して、勧誘時には概要書面を交付し、契約時には契約書面を交付することが義務化されています。

概要書面と契約書面は両方とも交付することが義務化されており、交付の省略をすることはできません。

交付書面にはクーリングオフの告知文を記載する義務もあります。

業務提供誘引販売では、中途解約についての定めはありません。

 

訪問購入については、事業者が消費者に対して、勧誘時には申込書面を交付し、契約時には契約書面を交付することが義務化されています。

ただし、申込みと同時に契約を締結する場合には申込書面の交付を省略することができます。

交付書面にはクーリングオフの告知文を記載する義務もあります。

訪問購入では、中途解約についての定めはありません。

 

特定商取引法における取引ごとのクーリングオフ制度と交付書面の違いについての解説は以上です。

訪問販売、訪問購入、学習塾、語学教室、家庭教師、エステティック・サービス、結婚相手紹介サービス、パソコン教室についての契約書面については、当事務所運営の下記リンク先のサイトにて解説しております。

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