特定商取引法の改正についての検討(平成27年時点) - 契約トラブル・クーリングオフ - 専門家プロファイル

遠山 桂
遠山行政書士事務所 
岐阜県
行政書士

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対象:消費者被害

村田 英幸
(弁護士)

閲覧数順 2016年12月04日更新

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特定商取引法の改正についての検討(平成27年時点)

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消費者契約

特定商取引法の改正履歴

行政規制と民事ルールの制定によって消費者保護を図る特定商取引法は、移り変わる消費者取引の実態に対応して改正を繰り返しています。

最近では平成24年改正(平成25年2月施行)で、訪問購入が新たに指定役務として追加されました。
平成20年の改正時に同法の付則では、 「特定商取引法改正法の施行後5年を経過した場合において、改正後の特商法の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」 との規定が置かれました。

これに基づいて平成27年1月に消費者委員会に対し、特定商取引法の見直しに関する諮問が行われました。

特定商取引法の改正履歴については以下のとおりです。

昭和51年
訪問販売、通信販売、連鎖販売取引に一定のルールを設けることにより、販売業者と消費者との間に生じるトラブルを未然に防止することを目的として「訪問販売法」が制定。

昭和59年改正
クーリングオフ期間が(4日間から7日間に)延長。

昭和63年改正
役務取引を規制対象とする改正。 クーリングオフ機関が8日間に延長。

平成8年改正
電話勧誘販売を規制対象とする等の改正。 連鎖販売取引のクーリングオフ期間が14日間から20日間に延長。

平成11年改正
エステティックサロン、外国語会話教室等の4業種について特定継続的役務提供として訪問販売法の規制対象として追加。 (その後、平成15年7月よりパソコン教室、結婚相手紹介サービスが追加され、特定継続的役務提供の規制対象は6業種に。) ※同時期に割賦販売法改正

平成12年改正
業務提供誘引販売取引(内職商法)を規制対象とし、連鎖販売取引と通信販売の広告規制を強化する改正。 「訪問販売法」から「特定商取引法」に名称変更。(平成13年6月1日より) ※平成13年4月に消費者契約法が施行。

平成14 年改正
電子メールによる一方的な商業広告の送りつけ(いわゆる迷惑メール)に関する新たな表示義務についての改正。 オプトアウト規制(広告の送付は原則として自由であるが、送信を拒否した者に対して広告を送信することを禁止した。)

平成16年改正
勧誘目的の明示義務(違反は刑事罰の対象に)、不実告知による勧誘の取消、連鎖販売取引の中途解約規定などの改正。

平成20年改正
指定商品制が撤廃され原則として全ての商品・役務が対象化(権利販売については指定制を維持)。訪問販売の過量販売解除権、電子メール広告におけるオプトイン規制(事前承諾のない顧客に対する電子メール広告の送信禁止)への転換、通信販売に法定返品権の導入などの改正。

平成24年改正
訪問購入を規制対象に追加。 近年はおよそ5年間隔で改正がされています。 平成24年改正については、いわゆる貴金属等の“押し買い”トラブルが多発したことをうけ、即応的に訪問購入の規制が導入された経緯があります。 この流れで見ると、本年1月の消費者委員会への諮問結果によっては次の改正では変更点が多くなる可能性があります。

消費者庁・経済産業省の報告書に見る次回の特定商取引法改正論点

消費者委員会への諮問に先立って、平成26年8月に消費者庁・経済産業省は「特商法関連被害の実態把握等に係る検討会報告書」を公表しています。
消費者委員会の諮問報告とその後の特定商取引法改正は、近年の消費者被害実態を分析したこの報告書の論点に基づいて検討されることになるかと思います。

この報告書で論点として採り上げられたものを以下に抜粋してまとめます。

 

「特商法関連被害の実態把握等に係る検討会報告書」で提示された検討課題
(1)訪問販売・電話勧誘販売 ・アポイントメントセールスの勧誘方法、電話勧誘販売の電話をかけさせる方法の定義を見直すべきか否か。 ・消費者に対し、金銭の借入れを強要する行為や、消費者を金融機関に連れて行き預貯金を引き出させる行為を指示対象行為とすべきか否か。 追記 訪問販売や電話勧誘販売の規制の検討については、ブログに「訪問販売が禁止に?特定商取引法の改正」という記事を追加しました。
(2)通信販売 ・通信販売に関する規定を販売業者等に遵守させる上で「取引の場の提供者」も一定の役割を負うべきか否か。 ・返品期間が限定されている場合、通販で瑕疵ある商品を購入した消費者を保護するためのルールを設けるべきか否か。 ・電子メールやSNS上のメッセージやチャット等により「勧誘」が行われたことにより、消費者がインターネット等を用いて契約を締結した場合について、電話勧誘販売と同様の規制を設けることは妥当か。 ・SNSやスマートフォンのアプリを用いた広告のメッセージを、オプト・イン規制の対象にすべきか否か。 ・通信販売において、虚偽・誇大広告により消費者が誤認をして契約を締結した場合、当該契約の承諾の意思表示を消費者が取り消すことができる規定を設けるべきか否か。 ・通信販売における未成年保護を講じるべきか否か。
(3)連鎖販売取引 ・いわゆる「後出しマルチ」について、どのような解決方法が望ましいか。 ※「後出しマルチ」とは、商品の購入(特定負担)に係る勧誘時点では、別の人に商品を紹介して購入させる(又は連鎖販売組織に加入させる)ことで儲けられること(特定利益)を告げず、商品購入後にその旨を告げる場合などを指す。
(4)特定継続的役務提供 ・役務提供期間が長期にわたるなどの理由により、消費者トラブルを生じている他の役務について、追加指定を行うべきか否か。 ・特商法第49条第2項の上限額の妥当性を再検討すべきか。また、「損害賠償の予定又は違約金の定め」のない場合の同項の適用について明確化すべきか否か。
(5)業務提供誘引販売取引 ・(アフィリエイトやドロップ・シッピング等のネット取引を視野に入れて)業務提供誘引販売の定義を明確化するべきか。 ※訪問購入は平成25年2月に規制追加されたばかりであり、現段階で改正法の効果を検証することは困難なため、議論の対象から外れています。
※その他、行政庁の執行、適格消費者団体に関する議論は省略しました。

高度情報化と少子高齢化が進むわが国では、5年間で消費者被害の様相は大きく変化しており、それに対応するには特定商取引法の改正点も多くなるのは必然のようです。

通信販売と特定継続的役務提供の改正論点に注目

特商法関連被害の実態把握等に係る検討会報告書」で公表された資料は興味深いものが多く、全分野についてコメントをすると本記事の量が膨大になってしまいます。 そこで、通信販売と特定継続的役務提供に絞って採り上げます。

“通信販売に関する規定を販売業者等に遵守させる上で「取引の場の提供者」も一定の役割を負うべきか否か” “通信販売において、虚偽・誇大広告により消費者が誤認をして契約を締結した場合、当該契約の承諾の意思表示を消費者が取り消すことができる規定を設けるべきか否か”

古くはヤフオクなどのネットオークションのトラブル、最近ではフェイスブック広告などのSNSでのトラブルがこれらに該当します。 詐欺的な販売者がこれらの取引の場を悪用し、同時多発的に粗悪品を販売するトラブルが後を絶ちません。 オークション事業者やSNS運営事業者は、取引の安全性を完全には保証できないという立場なので、詐欺的販売者が所在不明になれば消費者は泣き寝入りするしかありません。 (ヤフオクでは、こうした経緯があって取引補償制度を導入して一定の成果は上がっています。) 取引の場を提供するオークション事業者やSNS運営事業者が詐欺的販売者を放置しないよう、消費者被害が拡大することを予防するための措置が必要との判断がされる可能性もありそうです。 現状ではオークション事業者やSNS運営事業者への規制は少ないため、割賦販売法のクレジット会社への販売店管理義務(調査義務)のような責任規定を設けることも考えられます。 ただ、報告書では「取引の場の提供者の責任を明確に定める法律上の制度は、デパートやスーパーマーケット等の店舗についてもインターネット上のモール事業者についても存在しない中で、後者に対してのみ責任を課すのであれば、両者を区別する根拠も必要になるのではないか」との懸念もされています。 また、この報告書の論点では触れられておりませんが、アフィリエイト広告でも虚偽・誇大広告が問題になります。 アフィリエイターに対する広告規制も視野に入れるべきかもしれません。(景品表示法の対象になるのかもしれません。) アフィリエイターの無知を起因とする虚偽・過大広告やアフィリエイト・ビジネスに関する粗悪な情報商材の氾濫なども規制が必要と感じます。 (ASPの自主努力によるアフィリエイター教育などの成果は認められますが、それでもトラブルが続く実態があります。)

“役務提供期間が長期にわたるなどの理由により、消費者トラブルを生じている他の役務について、追加指定を行うべきか否か”

特定継続的役務提供は、平成27年現在では6業種が指定されています。 この指定業種を増やすという検討がされているようです。 この報告書では、トラブル件数などの具体的資料を示した上で、「美容医療」「精神修養講座(自己啓発セミナー等)」「ビジネス教室(就活セミナー等)」「スポーツ・健康教室」「育毛、増毛、発毛サービス」について指定追加の可能性を検討しています。 特に「美容医療」と「スポーツ・健康教室」については、平成15年に指定追加された「パソコン教室」「結婚相手紹介サービス」の当時の件数よりも上回っていることが報告されています。 (「スポーツ・健康教室」については事業者側の問題では無い点も多く慎重に検討することも付言されています。) そもそも特定継続的役務提供の規制の趣旨は、効果・効能が必ずしも保証されない継続的なサービスについて、トラブルが多い業種を指定して行政規制と民事ルールを設けるものです。 「美容医療」の分野は、厳格な法令で規制される医師によるサービスなので、本来は問題が起きないはずという性善説で運用されていました。 しかし、フェイスリフトやレーシック手術などでの医療事故多発、高額な料金と強引な勧誘によるトラブル、ホームページで加熱する不当表示問題などが重なり、聖域として放置はしておけないという判断のようです。 こうした流れから、次の法改正では特定継続的役務提供の指定業種が拡大する可能性もありそうです。 消費者委員会の答申から特定商取引法の改正、施行まで多少の時間を要するでしょうが、通信販売や特定継続的役務提供の分野での規制強化や民事効力の追加など、新しいルールの動向に注意したいですね。

また、現行の通信販売や特定継続的役務提供のルールについては、筆者の運営ブログの下記リンク先ページにて解説しておりますのでご参照下さい。

主に通信販売の規制に関して(電子商取引の準則まとめ)

 

特定継続的役務提供とは

通信販売や特定継続的役務提供について、事業者様のための特定商取引法の規制をクリアする契約書雛形販売やコンサルティングを実施しております。 詳細は上記リンク先のページを閲覧下さい。

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