- 牛田 雅志
- ブレインリンク・コンサルティング株式会社
- 税理士
対象:会計・経理
「商売繁盛」マーケティング
現在の事業を加速度的に進化させていくためマーケティング発想を加えませんか。お客様に喜ばれるものを提供するという品格経営理念の上にたてば、マーケティングの思考、ノウハウ及びテクニックは非常に効果的に活用できます。
私個人の経験ですが笑わないでちょっと聞いてください。
汚い申請書
某月某日 法務局へ不動産の抵当権抹消登記に出かけました。
今の法務局はとても親切になり登記相談ブースが置かれています(昔の法務局は無愛想だったす)。その一つに腰掛け抵当権抹消資料を見せて登記の仕方を教わりました。
担当者がヒマだったのか「ここにこの部分を書き写しなさい」などと丁寧に教えてくれます。ただ、委任状や申請書はわら半紙のような薄茶色の紙で、印刷の字も何回もコピーしたのかひん曲がっています。その用紙に、私のきたない字で書きなぐったものですから提出書類は幼稚園児が作ったような汚くて不恰好なものになりました(恥ずかしくて人様に見せられるものではないです)。
でも、その書類の束を受付に提出し一件落着。30分もかからずに終了しました。
「へえ〜。あんなブサイクな書類でも受け付けてくれるんだあ。」と自分でニヤニヤと悦に入っていたときハッと気づきました。
「美しくなくても登記抹消登記はできるんだ!」
まてよ。「登記という成果が得られれば美しくても汚くても関係ないということ?」
え、「でも、なんか綺麗な方が格好がよくていいんじゃない?」
「でも、でも、汚くても全く問題なく登記できたぞ。」
当たり前のことなんだけど、自問していたら頭が回らなくなってきました。
私は毎月お客様の決算書や税務申告書を作成します。そして出来るだけ体裁を整え綺麗に仕上げようとします(汚くても良いなんて考えもしません)。たとえば、勘定科目の設定にこだわったり、科目内訳を詳しく記入したり、また、製本仕上がりを気にしたり、自分の「好み」で作成します。それは会計のプロとして当たり前と思っていたからです。
お客様から「エクセルなんかでちょちょっと適当に決算書つくってくれたらいいよ」と言われても
「そんなかっちょ悪い決算書なんかつくれないよ。会計ソフトにいれて体裁を・・・。」なんて思わず職人としての血が騒ぎます。
この私の発想には、 「私がどう決算書・申告書を作成するか」という視点だけで、
「お客様がどう決算書と申告書を利用するのか」の視点はありません。
お客様が何を求めているかが最も優先されることで、私の思い込みによる論理の押し付けではお客様からの信頼を得ることはできないのです(ただし法令違反は優先しませんよ)。
「こんな良いものが出来たよ!これは絶対売れるはずだ!」と新製品についてお客様からおうかがいします。でもほとんどの確率で売れません(毒舌でスミマセン)。
「良いもの」というのが曲者で、自分たちにとって品質の高い優れた良いものであるという思い込みが、お客様にとっての「良いもの」は何かという視点を曇らせます。
自分たちの「良いもの」=お客様にとっても「良いもの」
と勘違いしてしまうことが往々にしてあるということです。
マーケティング発想では、
「自分の今持っている商品は誰に売れるのかなあ」 という順序ではなく、
「このお客様にはどんな商品が売れるのかなあ」 という順序で考えます。
今お付き合いしているお客様の求めている商品は何か、
自社が提供している商品はその求めにあっているのか、
そこにギャップは生じていませんか。一緒に考えましょう。