早わかり中国特許 第40回:刑事的救済と権利の乱用 - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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対象:特許・商標・著作権

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早わかり中国特許 第40回:刑事的救済と権利の乱用

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早わかり中国特許

~中国特許の基礎と中国特許最新情報~

2014年9月16日

執筆者 河野特許事務所

弁理士 河野英仁

(月刊ザ・ローヤーズ 9月号掲載)


 第40回 刑事的救済と権利の乱用

 

1.概要

 第40回は中国特許における刑事的救済と、権利の乱用について解説する。

 

2. 刑事的救済

(1)特許権侵害に対する刑事的救済はない

 日本においては特許権侵害に対する刑事的救済が認められているが[1]、中国においては特許権侵害に対する刑事的救済は存在しない(刑法第216条参照)。

 

(2)刑事的救済が認められるケース

 特許を詐称した場合(専利法第63条、刑法第216条)、国家秘密を漏洩した場合(専利法第71条)、国家機関職員に不正行為があった場合(専利法第74条)に刑事責任を負う。

 ここで、特許を詐称する行為とは以下のとおり規定されている(実施細則第84条)

 

実施細則第84条

以下の行為は特許法第63 条に規定された特許詐称行為に属する。

(1)特許権が付与されなかった製品・包装に特許表示を付す行為、特許権が無効とされた後または満了後も製品・包装に引き続き特許表示を付す行為、または、許諾を得ずに製品・製品の包装に他人の特許番号を表記する行為

(2)第1項に記載した製品を販売する行為

(3)製品明細書等の資料において、特許権が付与されなかった技術・創作を特許技術・特許創造と偽る行為、特許出願を特許と偽る行為、または、許諾を得ることなく、他人の特許番号を使用して関連する技術・創造を特許技術・特許創造と公衆に誤認させる行為

(4)特許証書、特許書類または特許出願書類を偽造・変造する行為

(5)その他、公衆に混同を与え、特許権が付与されなかった技術・創造を特許技術・特許創造と誤認させる行為。

 なお、特許権が満了する前に、特許方法により直接に作られた製品・包装に特許表示を表記し、特許権が消滅した後に当該製品の販売の申し出を行う行為・販売する行為は、特許詐称行為に属さない。・・・(略)・・・

 

3.一事不再理の原則

 中国においては、民事訴訟法及び司法解釈のいずれにおいても、一事不再理について明確な規定を設けていない。ただし、民事訴訟法第124条(五)の規定が一事不再理の原則を示すものであると解されている。民事訴訟法第124条(五)は以下のとおり規定している。

 

民事訴訟法第124条(五)

人民法院は次の各号に掲げる訴えの提起については、それぞれ状況に応じて処理する。

・・・

判決、裁定、調解書が既に法的効力が生じている事件について、当事者が再度訴えを提起した場合、再審を申し立てるよう原告に告知する。但し、人民法院が訴えの取下げを許可した裁定を除く。

 

 本規定に基づき、再審をも含め既に確定した判決に対しては同一の理由により特許訴訟を提起することができないと考える。

 

4. 権利の濫用

 利用が低迷している日本の実用新案登録出願と異なり中国では実用新型特許が年間多数出願されている。中国の実用新型特許は無審査で登録される上、実用新型特許権に基づく、民事訴訟も多い。

 

 日本においても実用新案は無審査で登録されるが(日本国実用新案法第14条第2項)、実用新案権に基づく権利行使の際に、実用新案技術評価書の提出が必要とされる(日本国実用新案法第29条の2)。さらに実用新案技術評価書を提示して権利行使したとしても、当該実用新案権が無効となった場合は、被告に与えた損害を逆に実用新案権者が負うことになる(日本国実用新案法第29条の3)。

 

 しかしながら中国では特許性の有無を判断するために用いる特許権評価報告の提出が義務づけられていないことに加え、実用新案権者側の損害賠償について規定する日本国実用新案法第29条の3に相当する規定も設けられていない。以上の理由により、中国において実用新型特許権者は躊躇することなく権利行使することができる。

 

 消防用ボールバルブ事件[2]では、明らかに新規性を具備しない実用新型特許権に基づき、権利行使を行った権利者に対し、悪意があったとして損害賠償を命じる判決がなされた。

 

(1)背景

(i)特許の内容

 袁利中は “消防用ボールバルブ”と称する実用新型特許出願を2001年2月8日国家知識産権局に提出した。2001年12月12日国家知識産権局は公告を認めた。特許番号はZL01204954.9号(以下、954特許という)である。

 

 争点となった954特許の請求項1は以下のとおりである。

 

 ボールバルブにおいて、バルブ体(1)、バルブ体(1)内に設けられる球体(3)、球体(3)とバルブ体(1)間に設置されるバルブ座(2)、球体(3)に連接されるバルブシャフト(6)を含み,球体(3)を密封し、ねじ山(16)を有しかつ中間に孔(15)が開通したバルブ座蓋(12)を用いてバルブ体(1)上でねじった構造を有することを特徴とするボールバルブ。

 

 参考図1はボールバルブの断面図である。

 

 

参考図1 ボールバルブの断面図

 

 従来の消防用ボールバルブは体積が比較的大きく,重量が重くなり,消防業に適さないという問題があった。そこで、請求項1の構成を採用することにより、体積が小さく、軽量で、消防車上での使用に適したボールバルブを提供せんとするものである。

続きは、月刊ザ・ローヤーズ2014年9月号をご覧ください。



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[1] 日本国特許法第196条

 特許権又は専用実施権を侵害した者(第101条の規定により特許権又は専用実施権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

なお、日本国実用新案法第56条、日本国意匠法第69条参照

[2]江蘇省南京市中級人民法院2006年8月24日判決 (2003)寧民三初字第188号

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